「病気のリスク」「医療行為のリスク」に上乗せされる第三のリスク
先ほどお医者さんが「造影剤を注射して腹部のレントゲン撮影したい。アレルギーはありますか?」と言って来たので、「造影剤を必ず使う必要ありますか?」「使わなくても撮影できますが、使った方がより鮮明に撮れます」「では断固としてお断りします!」と、断固として造影剤はお断りしました。
2014-05-16 13:53:568年前に脳梗塞になった時、医者に勧められてカテーテルで造影剤を注入して脳の血管写真を撮影したのですが、それで脳梗塞が悪化して小脳の半分が壊死したことがあるのです。それから私は造影剤はもとより承諾書を書かされる検査は基本的にお断りしようと思ってます。
2014-05-16 14:25:39腹部CTの造影剤ですね。リスクの話としてはいい事例なので、ちょっと話題として竹熊先生からお借りします。最初に、医師の推奨と違った選択をするのは患者の権利なので、竹熊先生を批判する意図は全く無いことを書いておきます。正しく説明を受けて、ご自信の価値基準で正しく断ったはず。
2014-05-16 16:41:05CTの造影剤というのは「放射線を通しにくく、血液に混ぜても大きな問題になりにくい液体」で、一時的に血液が白く写るようにする薬です。血液が豊富に流れ込む組織も白っぽくします。CTは身体組織の放射線透過性を白黒の濃淡で画像化する検査ですが、
2014-05-16 16:41:23血液(血管)・筋肉・その他の軟組織は、一般的に放射線透過性が近いので、近接してるとなかなか区別がつきません。特に、軟組織の内部に腫瘍性の病変がある場合、その腫瘍と軟組織の放射線透過性が最初からかなり違わないと非常に見えにくい。小さい病変ならなおさら。
2014-05-16 16:41:34そこで使われるのが造影剤です。これで血管を真っ白く、軟組織などを血流の程度に応じて白っぽく見せることで、のっぺりした画像に白黒の濃淡をつけて、より病変を見つけやすく、性質を判定しやすくするわけです。「見つけやすく」と書きましたが、「使わないと判定不能」というものも少なくないです。
2014-05-16 16:41:47さてここからリスクのお話。そんなお役立ち薬剤であるCTの造影剤にも、副作用の問題があります。一番大きいのはアレルギーで、使った後にショック状態になることがごく稀にあります(ごくごくごく稀には死亡例も)。使った直後に気分が悪くなったり吐いたり程度はそう珍しくない(数%)。
2014-05-16 16:42:01この副作用というのは「使うことで初めて発生するリスク」です。当然、造影剤を使わなければ完全に回避可能。ただ、患者として造影剤を使った検査を推奨されるのは、既に病気のリスクがある場合のみなんですね。造影剤は病気を正しく診断することで病気のリスクを下げる薬でもあるので、
2014-05-16 16:42:15小さい副作用のリスクを飲むことで、より大きい病気のリスクを下げることができ、総合的にはよりリスクの小さい状態に持っていけることになります。逆に言うと、そうやって造影剤を使うことでよりリスクが小さくなる状況と判断されて、初めて「造影剤を使うCT」を医師から推奨される、ということ。
2014-05-16 16:42:35もちろん、これはその推奨してきた医師による医学的判断においての話。患者側には患者側の価値判断などもありますので、説明を受けた上で拒否するのは当然の権利です。ただ、必要性にも度合いがありますので、ここでさらに強く推奨された場合は、「俺の病気ヤバいのかも」くらい思った方がいいかも。
2014-05-16 16:42:49【余談】ここで患者の意向をどこまで汲むかは難しいんですよね。医学的判断を押し付けるのはよくないとされますが、患者意向を汲んだことで病気を見逃して、後から「もっと検査の重要性を説いて説得すべきだった」ってやられた事例もあって、完全に板挟み。個別に舵取りするしかないです。【余談終了】
2014-05-16 16:43:01で、この選択の決定打になる患者側の価値判断なんですが、本当に本人の主義としてされるならいいんです。極端な話、主義のためなら喜んで死ぬ人もいますし、病気のリスクを下げられなくなる程度の問題なら造影剤は嫌だ、という本人の考えに土足で踏み入る権利は医師にはありません。
2014-05-16 16:43:46なので、もし医師の推奨する検査・治療の内容が患者の価値観に反する場合は、基本的に患者の価値観が優先されますし、それはどんどん主張していただいて構いません。意固地にならない程度に主張して、医師と話しあって、よく考えて決めて下さい。今はそういう時代です。
2014-05-16 16:43:59ただ、もしここで「CT造影剤は死を呼ぶ悪魔の薬である」みたいな本をどこかのバカが書いて、それが珍しい主張だから話題になって、それを鵜呑みにして「造影剤は使いたくない」と患者さんが言い出した場合、一気に問題が深刻化します。他人の主義に躍らされてリスクを背負いたい人はいませんから。
2014-05-16 16:44:28幸いにして、CT造影剤でそういうトンデモ主張がされたとは聞いていないので、我々がそういう問題に気をもむことはありませんが、これによく似た状況は抗癌剤や予防接種では実際に起こっており、まー大変な実害を振り撒いてるわけですよ。特に抗癌剤のは私も実例を幾つも耳に挟んでおります。
2014-05-16 16:44:48既に受け入れられた何かを声高に否定する行為には、おそらくある種の快感が伴うんでしょうね。自分の言葉で世間に激震を起こすことすらできるんですから。本の売り上げや講演料などでお金も入ってくる。しかも根拠要らんから楽。禁断の果実とかフォースのダークサイドとか、そういう類のものですわ。
2014-05-16 16:45:12でもそんな脳内麻薬ジャンキーみたいな連中は、彼らの振り撒いた妄言を鵜呑みにしたあなたがもし実害を被ったとしても、一切助けてはくれませんよ。せいぜいあなたが手遅れの状態ですがり付いたまともな医師があなたを助けられないのを、「それ見たことか」と標準医療への攻撃に利用するのが関の山。
2014-05-16 16:45:29残念ながら、彼らが妄言を発するのは「表現の自由」で守られているため、我々には止めることは出来ません。医学的に正しいカウンター情報は発しますが、そういう話には目を引く要素が乏しいので目立ちませんし、テレビや雑誌が広めたがる素材でもありません(倫理はどこにいった、と問いたいですが)。
2014-05-16 16:45:47なので、情報の取捨選択には慎重になって下さい。ハッキリと言ってしまうと、トンデモを振り撒いて喜んでる連中は、患者にとっては「病気のリスク」「医療行為のリスク」に上乗せしてされる第三のリスク因子です。幸い、引っかからなければゼロにできるリスクですので、皆さん是非ともご注意を。
2014-05-16 16:45:59