「レイジ・アゲンスト・トーフ」 エピソード5 「エグジスト・イン・ジ・アイ・オブ・ビホルダー」
だがビホルダーは慌てる様子もなく、両手をサイバーサングラスのこめかみ部に当て、透過率を50%にセットした。その刹那! 「アイ、アイエエエエエー!」「アイエエエエー!」「アイエエエエー!」「アババババーッ!」 1体のクローンヤクザが突如絶命し、残る3体もカナシバリ状態に陥ったのだ!
2010-11-05 17:53:00「セキュリティルームに案内しろ」とビホルダーが言い放つと、クローンヤクザらは自我無きジョルリの如く命令に従った。コワイ! 彼は目を合わせた敵を催眠状態に陥れる、カナシバリ・ジツの使い手だったのである。暴徒らに姿を見られる前に、彼はバイオヤクザを伴って暗い廊下の奥へと消えていった。
2010-11-05 18:13:21カナシバリ・ジツは、正確にはフドウカナシバリ・ジツという。フドウとは動かないという意味だ。アイキドーにも似たような技があり、こちらは構えとシャウトで敵を麻痺させるものだが、ビホルダーが使ったそれは、目を合わせるだけで敵の精神を破壊するという、ニンジャならではの技なのであった…。
2010-11-05 18:29:33「コロセー! コロセー!」一足遅れて、暴徒たちが隔壁内部に雪崩れ込んでくる。左右には先の見えない長い廊下、正面にはトーフ・パッキングエリアへと続くドア。パッキングエリア、プレスエリア、着色エリアと三区画抜けると、心臓部であるヒョウタン状の巨大なジェネレーターが見えてくるはずだ。
2010-11-05 18:49:20「ビホルダー=サンはどこだ? 守らねば!」シガキは息せき切りながら、暴徒らとともに正面の工場区画に突入した。何百人もの深夜労働者たちが、作業を止めずに濁った目だけを向けた。 「イヤーッ!」スキンヘッドの労働監督がサスマタを持って監視台から飛び降り、侵入者を迎え撃つべく迫り来る!
2010-11-05 19:34:18「上長!」とシガキは心の中で驚きとともに叫びながら、しかしこの修羅場を生き延びるべく、右手のテッコで無慈悲なチョップをくり出した。 「イヤーッ!」「グワーッ!」 サスマタは武骨な旧世代戦闘義手によってへし折られ、そのまま労働監督の首の骨までもがへし折られた。タツジン!
2010-11-05 19:41:05死体を見下ろしながら、シガキは呆然と立ち尽くす。元上長を殺した悔悟の念によってではない。初めて使った戦闘義手の力に驚嘆したのだ。シガキ・サイゼンの中に眠っていたカラテが、極限状態と薬物とサイバネティック義手の力によってケミストリー反応を起こし、テクノカラテとして現出したのである!
2010-11-05 19:47:39第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「レイジ・アゲンスト・トーフ」 エピソード5「エグジスト・イン・ジ・アイ・オブ・ビホルダー」終わり エピソード6「ナラク・ウィズイン」に続く
2010-11-05 19:49:19