接触とインデックス

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YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

某論文審査のために、長年「積ん読」状態だったレヴィ=ストロース『構造人類学』を読んでいるのだが、そこに含まれる、アジアとアフリカの芸術に見られる分割的図像表現を論じた章は、難解だが興味深い。著者自身言うように芸術心理学にかなり接近している。

2014-06-09 23:46:06
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

レヴィ=ストロース(および彼が依拠する人類学者)によると分割図法(「魚の開き」みたいな図法)は、立体物を二次元上に落とすときに必然的に生じる図法なのだが、それはある意味で(西洋的な)遠近法よりも正確な立体物の再現となっている。例えば隈無く彫られたイレズミを再現するような場合にだ。

2014-06-09 23:52:14
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

ただし、そうした分割を「人格=ペルソナの社会的分割」とまで解釈してしまうのはさすがに「やりすぎ」感が否めない。そこがレヴィ=ストロースの(私には分からない)魅力かも知れないけど。数年後に読み直したいテキストではある。

2014-06-09 23:55:18
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

ここからは私の思索だけど、プリミティヴ・アートにしばしば見られるこうした分割図法は、不思議なことに子どもの絵画にはあまり出てこない。なぜか。それは分割図法が実は「高度に知的な認識」を表現したものだからだろう。これは「知っていることを描く」というゴンブリッチ的絵画理解にもつながる。

2014-06-10 00:03:38
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

これは美術方面の人に聞いても分からないかも知れないけど、ある種の版画には単なる「正確な描写性」とは違う「真実性」「真正性」がありますよね。例えば魚拓とか。あと日本の印鑑とか。それを説明した理論ってありますか。

2014-06-10 00:23:49
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

つまりレヴィ=ストロースが論じた「分割図法」は、絵画的再現というよりも、「魚拓」のようなものと考えた方が理解しやすいのではないか、という着想が天から下りてきたわけです。

2014-06-10 00:27:51
Hiroshi Kumazawa @kmzwhrs

.@H_YOSHIDA_1973 具体的なテキストというか、佐藤道信先生(芸大)の諸研究や、同じく古田亮さん(芸大美)の由一研究とか、、、でも「魚拓」的な概念とセットにはならないかな… 

2014-06-10 00:30:02
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

「立体的な何かを正確に写し留める」手段としては、それを描くよりも、それに柔らかいものを押し当ててかたどる、という方が自然で素直な発想ですよね。うわー何だか、今度パネルディスカッションに参加する「接触論」にもつながってきそうな。

2014-06-10 00:32:51
Hiroshi Kumazawa @kmzwhrs

.@H_YOSHIDA_1973 直接の参考になるかはわかりませんが、今年1月に出た『美術の日本近現代史――制度・言説・造形』(東京美術)の「どこか」は参考になる、と思います(おおざっぱすぎますね、すみません)

2014-06-10 00:35:37
Hiroshi Kumazawa @kmzwhrs

吉田さんの関心はゴンブリッチ的だなあ。

2014-06-10 00:37:05
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

@kmzwhrs ありがとうございます。魚拓は通常の意味での美術には入らないでしょうが、芸術人類学的な考察対象としては絶対重要ですよね。画像を定着させる原理としては版画と似ていますが、発想としては似て非なるものですよね。墨の文化、書の文化と関連するのでしょうか。

2014-06-10 00:37:06
Hiroshi Kumazawa @kmzwhrs

@H_YOSHIDA_1973 それでしたら、魚拓というより「拓本」文化のほうがリアリティーがあるように感じられました。建築などの文様を記録したりするものですね。こんなものを思い出しました。bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.d… (でも、ちょっと違うかなあ)

2014-06-10 00:39:25
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

といいつつ、「デスマスク」という西洋的伝統の存在を思い出してしまった。あれは逆に日本(アジア)にはないですよね。

2014-06-10 00:40:17
Kajiya Kenji 加治屋健司『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』発売中 @kenji_kajiya

@H_YOSHIDA_1973 接触関係に基づく記号を論じた、いわゆるインデックス論ではダメですか。ただしクラウスのインデックス論はシフター概念が混入しているので注意が必要ですが。

2014-06-10 00:44:47
Kajiya Kenji 加治屋健司『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』発売中 @kenji_kajiya

@H_YOSHIDA_1973 というか、クラウスのインデックス論の説明をするときは、いつも印鑑の話から始めていました。

2014-06-10 00:48:27
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

つまり、魚拓にせよデスマスクにせよ、「大切な立体物の型を崩れないうちに写し取っておいて長く保存する」という発想は、かなり普遍的なものと言えるかもしれません。それは版画的描写性・再現性というより、むしろ彫刻性の側に属する。つまり複製性とは真逆の真正性(アウラ)を持つということです。

2014-06-10 00:48:56
Kajiya Kenji 加治屋健司『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』発売中 @kenji_kajiya

クラウスのインデックス論は amazon.com/dp/0262610469/ に入っているNotes on the Indexです。この論考ではインデックス性を70年代美術の特徴とするんだけど、50年代美術に見出した方がいいと私は思っています。 @H_YOSHIDA_1973

2014-06-10 00:56:39
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

それと、インデックスを「接触による記号」とするは誰の記号学説だろうか。どこかで聞いたことある気もするが。パースではなさそう。

2014-06-10 00:56:39
Kajiya Kenji 加治屋健司『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』発売中 @kenji_kajiya

ラウシェンバーグのタイヤ跡の作品とか、画面を木片で擦るジョーンズの作品とかですね。 @H_YOSHIDA_1973

2014-06-10 01:00:47
YOSHIDA Hiroshi 吉田寛『デジタルゲーム研究』発売中 @H_YOSHIDA_1973

@kenji_kajiya なるほど。確かに「接触した痕跡」をそのまま作品とする美術作品ってありますよね。それをクラウスはインデックス概念を用いて論じたわけですか。

2014-06-10 01:10:50
🍎す_______ー_______う🌏 @sourd

@H_YOSHIDA_1973 はじめまして、木下と申します。その学説はクラウスではないでしょうか。ディディ=ユベルマンも引き継いで論じています。日本にひきつけて考えるのでしたら<うつし>かなと思います。書の文化でしたら、大岡信『詩人・菅原道真』があげられると思います。

2014-06-10 01:12:33