ニトロプラスのガイドライン改訂を経済学的に分析する

ニトロプラスの同人ガイドライン改訂をめぐって「クリエイターばかりか印刷所・ショップまで損害を被るぞ!」という主張に松下響氏(@hibiki2s)が疑問を呈したことに対し、紅蓮の猫氏(@lotusredcat)がミクロ経済学の初歩を使って解説するまとめ。
65
紅蓮の猫 @lotusredcat

つまり、価格を高くしちゃったら、新規参入が促されます(古典派経済学) したがって、そもそも独占を維持するというのは相当特殊な要因がなければいけません。

2014-07-11 21:25:25
紅蓮の猫 @lotusredcat

特殊な要因とは、例えば技術的な障壁が高い、あるいは費用逓減産業(遊園地など)で初期投資がべらぼうに高いということです。いずれも印刷業には当てはまりませんので、この業界で独占(あるいは寡占)を維持するには、新規参入が難しいほど価格を下げるしかない。

2014-07-11 21:26:33
紅蓮の猫 @lotusredcat

つまり、根本的には価格を下落させる圧力が働いているということです。もし価格を高騰させるような状況になったら、すぐに新規参入企業が出現して価格が下がるでしょう。相手企業のシェアを奪えるわけですから、そんなことをしない企業はほとんどの場合無いです。(まあこれはわかりますよね)

2014-07-11 21:27:47
紅蓮の猫 @lotusredcat

で、じゃあ価格が上がるってのはどんなときだよということですが、それはコストが増えたときと、需要が増えたときしかありません

2014-07-11 21:29:46
紅蓮の猫 @lotusredcat

図にするとこう。需要増というのは受注件数が増えるということですからこの場合は考慮しなくていいです。コスト増というのは流通のどこかの部分で新しいコストが発生しなければなりませんからこの場合は考慮しなくていいです。 pic.twitter.com/wgz23wDqdt

2014-07-11 21:32:23
拡大
紅蓮の猫 @lotusredcat

よって価格が増加するというのは独占価格になる必要がありますが、その独占は無理なので、価格は下がることはあっても上がることはありません。

2014-07-11 21:33:01
紅蓮の猫 @lotusredcat

え~~でも企業倒産して生き残った企業が1つしかなかったら独占になっちゃうじゃん~~という意見があるかもしれませんので、企業倒産について解説します

2014-07-11 21:33:48
紅蓮の猫 @lotusredcat

そもそも、倒産とはどういう時に起きるかです。実は赤字になっても企業はすぐには倒産しません。なぜなら、固定費用の存在があるからです。赤字が固定費用を上回っている限りは、企業は生産活動を継続した方が利得が高いということになりますから、すぐには倒産させるより創業を継続する選択をとります

2014-07-11 21:35:36
紅蓮の猫 @lotusredcat

企業の生産が赤字になるかどうかの分岐点を損益分岐点、倒産するかどうかを操業停止点と良い、これを図にすると以下になります。 pic.twitter.com/bXPca8ehlQ

2014-07-11 21:41:13
拡大
紅蓮の猫 @lotusredcat

MCは1単位生産を増やすと増える費用(限界費用)VCは1個あたり費用(平均費用)AVCはVCから固定費用を差し引いた費用です。

2014-07-11 21:41:17
紅蓮の猫 @lotusredcat

詳細は割愛しますが、MCは=価格になります。(それが最適生産だからです) もし企業が倒産するときには、この操業停止点を割る必要があるので、要するに需要が下がっている状態です。 これを需給曲線に反映させると、

2014-07-11 21:42:55
紅蓮の猫 @lotusredcat

こうなります。赤線が供給曲線。要するに、そこで生産活動しても家賃すら払えないので退出するということですね。もし、生き残り企業がほとんど0に近くなるほど需要が下がったら、その市場は消えます。 pic.twitter.com/JnbuakxpFr

2014-07-11 21:45:56
拡大
松下 響 @hibiki2s

.@lotusredcat ぐれにゃんこさん、の図を初めて見る人には分かりづらいと思うので軽く軸や略語の説明をお願いできますでしょうか。

2014-07-11 21:44:51
紅蓮の猫 @lotusredcat

@hibiki2s Dはディマンド、需要の略で、この場合印刷屋さんの受注量です。Sはサプライ、供給の略で、この場合、実際に印刷屋さんがどれくらい仕事を請け負うかを示します。

2014-07-11 21:48:45
紅蓮の猫 @lotusredcat

@hibiki2s 受注量と言うと語弊があるかもしれないので、依頼される量といったほうがいいかもしれません

2014-07-11 21:49:34
松下 響 @hibiki2s

.@lotusredcat 解説ありがとうございます。

2014-07-11 21:53:48
紅蓮の猫 @lotusredcat

じゃ、最後に、たまたま生き残り企業が1~3になったという極めて稀有な場合を考えます。この企業は寡占、または独占を形成しており、価格は独占価格となっているとします。

2014-07-11 21:46:59
紅蓮の猫 @lotusredcat

独占価格の決定はこうです。MCは限界費用、MRは限界収入、Dは需要です。 限界費用は生産を1単位増加させると増える費用、限界収入は生産を1単位増加させると増える収入です。 pic.twitter.com/FdvT3rXqow

2014-07-11 21:54:46
拡大
紅蓮の猫 @lotusredcat

独占状態では競合他社が存在しないので、価格はMRとMCの差が最も大きくなる点で決定され、需給均衡Eよりも高いE'で価格が決定されることになります。(故に価格が上がる)

2014-07-11 21:55:45
紅蓮の猫 @lotusredcat

とはいっても暴騰するわけではありませんが。 そこで、この場合、価格競争が無くなって、価格が下がらなくなるかどうかを検討したいと思います。今、この企業がMR-MCを増やすにはどうしたらよいでしょうか。

2014-07-11 21:57:02
紅蓮の猫 @lotusredcat

答えは簡単で、それは需要を増やすかコストを下げるしかありません。

2014-07-11 21:58:39
紅蓮の猫 @lotusredcat

今回の場合、需要は増えませんから、コストを下げるしかありません。もし企業が、利潤をより大きくしようと思ったら、MCを下げるしかないですからね だから、独占の場合でも、価格には下降圧力がかかっています。 pic.twitter.com/d6sOX6YDZc

2014-07-11 22:01:13
拡大
紅蓮の猫 @lotusredcat

もちろん、完全競争に比べたら、もしかしたらインセンティブが下がってて、こんなことしないよということも言えるかもしれません。(そもそも今回の場合そんな独占状態になること自体稀ですからね)

2014-07-11 22:02:19
紅蓮の猫 @lotusredcat

ですが、前提的に市場規模が縮小したということを考えるなら、ほとんどの企業はその市場規模の縮小に対してなんらかの策を講じることになるでしょう。誰だって自分が死ぬのは嫌ですからね

2014-07-11 22:03:29
紅蓮の猫 @lotusredcat

したがって、独占状態になるにせよ、市場が消滅することになるにせよ、どの場合でも強力な価格下降圧力がかかると思って差し支えないと思います。(そもそも需要自体が大幅に減少するわけですから、元の価格より大幅に値上げされるということは考えづらい

2014-07-11 22:04:54