赤城毅氏(akagitsuyoshi)による「『アカデミックに』史料を読むということ」についてのお話
旧軍や自衛隊の用語を使っていないから、ニセモノだという議論は、最近よく見かけますが、相手をみて一般的な言葉遣いをしている可能性もあるので、そういう議論は説得力を持たないと思います。(続)
2014-07-15 00:48:16(承前)それに関していうと、史料の読み方にも通底するところがあります。有名なナチのSDの民情報告を読むと、ドイツ国民は現状に不満ありまくりという印象を受けます。(続)
2014-07-15 00:49:38(承前)しかし、SDの各地域の担当者からすれば、みんな満足、問題ありませんと報告したら、じゃあ人員や予算を削るよという話になるので、問題を強調するに決まっています。(続)
2014-07-15 00:51:21(承前)史料を読むということは、そういう文脈に則していかなければ意味はないので、アジ研の文書をネットでみて、大発見だぁとかいうのは物笑いの種でしかないことが少なくないので、注意してもらいたいと思います。
2014-07-15 00:54:54はっきりいうと、研究史や文脈を無視して、実はこうだったんだぁっという議論は、歴史学の訓練を受けた人間には、嘲笑の対象でしかありません。
2014-07-15 00:56:36ナマの史料を読むというのは、先行研究でどういう解釈がされているかとか、翻刻されていないかとかをチェックしてからのことなんです。ドイツの史学科の院生は、断簡零墨に至るまで活字の史資料を押さえた上でなければ、文書館に行かせてもらえません。
2014-07-15 01:08:10率直にいうと、軍事、とくに戦術や兵器の運用は、日本ではアカデミズムの扱うところではありません。だからといって、歴史学の手順を無視して、一次史料をつまみぐいした奇矯な説をひけらかすのは、もういいかげんにしてもらいたいと思います。
2014-07-15 01:11:03いわゆる戦史・軍事ライターが、金銭的時間的にプロの歴史家のようにやれないのはわかります。しかし、きちんと文献を調べて研究史を押さえれば、これとこれを読めば、アウトラインがつかめるはずです。(続)
2014-07-15 01:24:03(承前)そういう大前提をすっ飛ばして、たまたま遭遇したアジ歴のネット史料なり、横文字の文献で、ドヤ顔して「真実」を語るひとは、とても信用できません。
2014-07-15 01:25:40一次史料に書いてあるから、すなわち真実というわけでありません。その史料に関係した連中の人間関係や思考様式を勘案し、批判的な眼でみて、初めて何かを引き出せるのです。
2014-07-15 01:30:13それから、最近、日本海軍を批判、というよりも、悪口を言うのが流行っているようです。私も批判したいところは多々あります。(続)
2014-07-15 01:37:14(承前)しかし、活字媒体であると、ネットであるとを問わず、そうした悪口が日本海軍特有の欠陥と称する問題は、実は世界諸国の官僚制に共通することだったりするので、前提からしておかしいことが多々あります。(続)
2014-07-15 01:37:52ウソだかホントだかわからない「知識」を抱え込んでいるからではなく、どれが信頼できる典拠なのか判断できるから、専門家なんですよ。
2014-07-15 01:45:41