「血液型と性格の無関連性」についての心理学的な解説まとめ(前半) -第一種の過誤と第二種の過誤-

みんなにもっと心理学に馴染んでもらえるように,話題になっている「性格と血液型の無関係性」について考えながら,心理学の方法論について連続ツイートしたものをまとめたよ。前半では主に,統計学における第一種の過誤と第二種の過誤について説明したよ。 グレーで書かれている部分 は脱線や補足なので読み飛ばしても大丈夫だよ! 後半:http://togetter.com/li/695536
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きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

さて,「血液型と性格の無関連性」を読み終わった訳だけど,これをテキスト代わりに,心理学の方法論の話 (主に,統計学の考え方と過誤の話,それから妥当性について) を即興で連続ツイートしようと思っているんだけど,興味持ってくれる人はいるのかな…?

2014-07-19 22:29:12
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

…それでは,「血液型と性格の無関連性」について,心理学の方法論に関する補足をしながら,説明するよ。元の縄田先生の論文「血液型と性格の無関連性――日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠――」は,先ほどのRTからpdfで読めるよ。twitter.com/jssp_pr/status…

2014-07-19 22:34:59
日本社会心理学会広報委員会 @jssp_pr

【研究紹介新聞記事】先ほどの「血液型と性格は無関係」論文(縄田, 2014)はこちらからPDFをダウンロードしていただけます→jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/…

2014-07-19 15:56:29
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

僕自身は血液型と性格の関連性をめぐる議論について元々それほど詳しかった訳ではないので,先行研究に関してはこの論文に書かれていることを信用するつもりだよ。つまり孫引きのような形になってしまうけど,ご了承ください!途中,Rを使って統計検定の例を示そうとも思ってるよ!

2014-07-19 22:38:08
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

血液型にはいろいろな分け方があるけれど,A型・B型・O型・AB型という分け方は特に馴染みがあるね。A型の人は几帳面である,とか,O型の人は大雑把である,とか,そういったイメージを持っている人は結構多い。…とはいえ,これは日本…と最近では韓国,に限って言われていることなんだ。

2014-07-19 22:46:57
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

少し脱線するけど,日本で血液型占いが流行ったころ,アメリカではエリック・バーンの交流分析 (transactional analysis) が若者たちの間で流行っていた…らしい。聞くところによると。交流分析,というかエゴグラム,一時期日本のフェイスブックでも流行っていたなあ。

2014-07-19 22:48:39
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

血液型と性格に関係があるということが日本社会で広まったのは,1970年代・・・らしい。主にはそういったことを主張した出版物の影響だ。最近でもB型自分の説明書のような本が出版されているね。マスメディアの影響に関しては社会心理学 (@socialp_tan) のほうが詳しいかな?

2014-07-19 22:53:20
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(実は僕も「○型自分の説明書」シリーズはちょっとだけ読む機会があったんだけど,これらの本はそれほどステレオタイプ的ではない印象を受けた。ただ,元々血液型と性格に関係があることを信じていた人が読めば,その気持ちがより強くなるということはあるかも…?)

2014-07-19 22:55:52
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

そろそろ本題に入ろうか。ここでの問題は,当然ながら,「果たして本当に性格と血液型との間に関係はあるのか」ということだね。そして,どうやってそれを確かめるのか?結論を言ってしまえば,「関係性がない」ことをはっきりと示すのは,少なくとも現状では不可能と言っていいかもしれない。

2014-07-19 22:57:28
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(途中でも,質問などありましたらお気軽にどうぞ!)

2014-07-19 22:59:37
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

なぜ不可能なのか… それは,心理学の研究でよく使われる有意性検定と呼ばれる統計的手法が持つ限界に由来するんだ。話を簡単にするために,「男性と女性の平均身長に違いはあるか」という話で考えよう。

2014-07-19 23:05:55
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

…あ,もう少し限定して,「20~24歳の日本人では,男性の平均身長と女性の平均身長との間には差があるか」という話にしよう。…あんまり深い意味はないんだけど,一応ね。

2014-07-19 23:07:16
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

いま仮に,ここに20~24歳の日本人男女が二人ずついて,身長を測ったとするよ。その結果,男性は172cm,164cmで,女性は順に159cmと165cmだった。それぞれの平均値は168cm,162cmだ。さて,この男女の間で平均身長の差はあるといえるか?

2014-07-19 23:17:33
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

二つの群の平均値の間に差があるかどうかを調べるとき,ふつうはt検定と呼ばれる方法を使うよ。中身はあまり知らなくてもいいんだけど,これも有意性検定の一種だと思ってくれたらいい。ここではRというフリーの統計ソフトで解析するよ。これぐらいなら手計算でもできるんだけどね。

2014-07-19 23:20:43
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

「中身はあまり知らなくてもいい」と書いたけど,あくまでも僕のこの説明を聞く上では,という意味であって,実際にt検定を使うときには,ちゃんとその仕組みを理解しておいてね!

2014-07-19 23:29:29
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

今手元にあるデータを使って,男女間の身長差を有意性検定にかけてみた。結果は「t = -1.2, df = 2, p-value = 0.353」と出力されたよ。どういう意味だろう?プログラムはこんな感じ。 pic.twitter.com/a4zDwN0ELb

2014-07-19 23:28:06
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きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(なお,分散の等質性は仮定できているものとします。いきなりWelchのt検定にかけるのもありですが,話を簡単にするために,何の迷いもなく普通のt検定にかけています。)

2014-07-19 23:23:49
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

今は,p-value = 0.353 に注目してほしい。これは,「p値は35.3%です」と読み取ってほしい。さて,p値とはなんだろうか?ここで,有意性検定において大切な帰無仮説 (null hypothesis) と対立仮説 (alternative) について説明するよ。

2014-07-19 23:32:31
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

今ここで確かめたいことは,「20歳~24歳の日本人で,男女間に身長差が『ある」というだ。だけど,有意性検定ではその逆の「男女間に身長差が『ない」ことを仮定したときに,それがあり得ないことかであるかどうか,を検討するんだ。

2014-07-19 23:36:06
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(思ったより時間がかかっているよ… 血液型の話になかなか戻れない…)

2014-07-19 23:36:35
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

長くなりそうなので,過誤についての話まで終わったら続きは明日に持ち越すことにするよ。今回は即興だからぐらぐだになっちゃったけど,事前に告知して行う連続ツイートでは前もってある程度ツイートや資料を準備しておくので安心してね。

2014-07-19 23:51:37
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

例えば「Aである」ことを主張したいときに,「Aでないと仮定すると矛盾する。だからAである」と考えることで,Aという結論を導き出す,いわゆる背理法があるね。有意性検定では,確率論的な背理法を使っていると考えて欲しい。

2014-07-19 23:38:00
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

つまり…「Aである」ことを主張したいときに,「Aでないと仮定すると,滅多に起こりえないようなことが起こる。めったに起こらないことなんだから,Aであると考えたほうが良い」といった感じ。…うーん,ちょっと難しいかな。

2014-07-19 23:39:53
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

じゃあ「滅多に起こりえない」ってなんだろう。それを確率として表現したものがp値だよ。つまり, p値が80%ぐらいだったら起こりやすそうだし,p値が0.00002%ぐらいだったら起こりにくそう。直観的にはそれでいいよ。

2014-07-19 23:41:59
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

@kisopsy_kun 念のためさらに補足。この場合のp値は,より正確には「帰無仮説のもとで,推定されたtの絶対値よりもtが大きな値をとる確率」を表している。ただし,ここでは簡単のために厳密なことは気にしないことにする。自分で検定を行うときには注意が必要。

2014-07-20 15:48:09
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

まとめると,「男女間に身長差が『ある』(これが対立仮説)」ことを主張するために,「男女間に身長差が『ない』(否定したい仮説すなわち帰無仮説)」が否定できるかどうかを検討する。p値というのは,帰無仮説を仮定することがどのくらい自然なことなのかを表す確率なんだ※あくまで比喩ですが

2014-07-19 23:44:55