rsbs日誌#7

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「そうじゃ。一応言っておくぞ？」何もかもが自分に合わせた我流の陣を引き終えた提督がぽつりと溢す。「もしわしが死んだら、鎮守府の皆で生きるのじゃ。わしの肉人形でも作ってのう？流石に武蔵の神との対話は初めてゆえ、な」

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#rsbs日誌 「バカ言ってんじゃないわよ」鼻から強く息を吐きながら叢雲が答える。「須佐之男命如きでアンタが死ぬもんですか。笛と太鼓が煩いからって白痴の神にヤクザキックぶちこんで平謝りさせたアンタが。精々さっさと終わらせなさい」

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#rsbs日誌 「くははははは！思えばそんな事もしたかのう？では、行って参る」信頼にも程近い叢雲の暴言を背に受け、提督は焔の様に赤い双眸から燃えるような燐光を放ちながら、神の領域へと己の意識を歩み出した。

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#rsbs日誌 …静寂…闇…爆発…業火…圧迫…豪雨…地震…芽吹き…捕食…進化…略奪…咎…地獄…世界のヴィジョンを眺めながら提督は歩いていた。やがて地面は水面となり、大荒れの大海と世界は変わる。吹き荒び、大粒の雨霰が降ろうとも提督はゆっくりと歩く。

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#rsbs日誌 雨霰には濡れず、風の一つ取っても髪を乱すことが出来ず、ただ歩く動きに裾や髪先がひらひらと揺れるだけだった。全くの不干渉。余りの不自然。穏やかな小路を歩くが如く、提督は歩を進めた。

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#rsbs日誌 嵐の海の果てに、世界が見えた。何もない、しかし暖かい白の静寂。遠く頭上…空の果ては淡く青く、一筋の雲が遠く遠くどこまでも続いていた。耳に音が届く。おさなごの、泣きじゃくる、切ない息遣い。

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#rsbs日誌 「っ…誰だ…？」酷く幼い、か弱い声が伝わる。白い静寂の中その物は膝を抱えながら泣きじゃくっていた。「やめろ…来るな…くるなぁ！」悲鳴にも近い叫び。虚空から巨大な主砲が現れ、轟音を轟かせた。

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#rsbs日誌 空気を震わせ、大気を引き裂いて、砲弾は提督を掠める。それでもなお、提督は涼しい顔で歩み寄った。「砲をお下げ。わしはお前さんに及びもしない、つむじ風に玩ばれる一枚の紙切れに過ぎんよ。破るだけで散る命じゃ」

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#rsbs日誌 歩み寄った提督は、しかし近付きすぎず、少女の前に座り込んだ。どっこらしょと、静かな水面の上に座り込んだ。「辛かろう。あれだけの嵐を身に纏う程じゃ。痛い思いをしたのじゃなあ？」煙管を燻らせながら提督は呟く。

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#rsbs日誌 「ほれ、どーんと愚痴を溢してみれ？神様だって辛いときは涙を流すものじゃよ。おなごのお主ならば、誰かに甘えるのが妥当と言うものじゃ。紙切れがひとつ、お前の涙を拭ってやろう」「お前なんかが…」

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#rsbs日誌 顔を上げた武蔵の前に、提督は座り込んでいなかった。不意に頬に柔らかな物が当たる。シルクの、淡い色のハンケチが涙を拐っていった。「生憎紙切れはハンケチしか持ち合わせて居らんがな？」「…嘘つきめ」「濡れたら破れてしまうからのう」

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#rsbs日誌 「…お前に何が判るんだ」「大体の事ならば判るぞよ」「お前の様な泥の固まりに判るなんて思えない」「泥であるが故に判るのじゃ」「…ほざけ」「法螺吹きとて、嘘を真実に変えれば見事なものじゃろう？」

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#rsbs日誌 「…法螺吹きごときが何を出来る」「笑わせたりかのう？食べるか？」不意に差し出されたのは、甘い香り。愛しい記憶。黄色と茶色。柔らかな生地と、焼かれたザラメ。かぶり付いた。カステラを

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#rsbs日誌 鼻腔を擽る甘い香り、舌を包む優しい味。幼い頃の思いで。一番美味しかったあの時のカステラ。ほろりほろりと、涙が流れる。暖かい気持ちが溢れ出す、そんな涙が。

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#rsbs日誌 「…これはなんだ…」「かすていらじゃよ」「違う…このカステラは、誰にも作れない。このカステラは、カステラの形をした何かだ。こんなカステラは、食べたことがない。お前はなんだ？」「しがない魔女じゃよ」

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#rsbs日誌 「泣いてるおなごを放っておけない、お節介でバカな魔女じゃよ」新たに差し出されるカステラと淡い色の煎茶。もう何年も口にしていない。もう味わえないと思っていた、思いで。

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#rsbs日誌 「ゆっくりお食べ。好きなだけ」一口一口、噛み締めるように食べた。舌を洗う煎茶は香ばしくて、カステラの甘さにとても良かった、煎茶からも浮かび上がる。あの時の思いで。あの時の煎茶の味が目の前にあった。

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#rsbs日誌 ……提督が術を始めて何れ程経つだろう。まだ５分しか経っていないような気もするし、半刻も過ぎたような気がする。しかし、効果は確かにあるようで、あれ程暴れていた武蔵は、落ち着き出していた。

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#rsbs日誌 「なぁ、榛名」那智が榛名に問い掛けた。「私は防人であるが故、あまり魔術や神術の類いには聡くないのだが、提督は何をしているのだ？」「榛名の私見と推測で良ければ」「構わぬ」

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#rsbs日誌 「提督は恐らく、神降ろしの義を使い、武蔵さんの深層へと足を踏み入れているのだと思います。術によって降ろすのではなく、心までの道へと使い方を変えて」「なるほど…」「そして恐らく、周囲を漂う式や新たな陣は、提督が中で力を振るう為の魔方陣かと」

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#rsbs日誌 「本当、何をやって来たんでしょうね」叢雲が呟く。「我流我流と謙遜しながら陰陽道とか魔法とかを使いこなすとか頭可笑しいわ」「確かにな…」「人の身が負い切れる範疇を越えてるわよ…あのばか…」

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#rsbs日誌 「…満ち足りたかや？」幾つものカステラを口にし、何杯もの煎茶を飲み干した。少女は、ただゆっくりと頷く。双眸が、ぼんやりと遠い空と一筋の雲を見た。「…満ち足りた…だが、まだ足りない…これでは、満たせない…」

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#rsbs日誌 「じゃろう、な…」「…もっと…もっとだ…もっと…私の空白を、埋めたい…満たしたいんだ…だけど…」空へと延びた手が、だらりと下がる。「…もう…私には無理だ…もう…信じることが出来ない…戦えない…」

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#rsbs日誌 「人に裏切られたか…無理もあるまい…」「…そうだ…二番艦として生まれ…姉の成功から生まれた願望と…現実の落胆に私は打ちのめされた…」「烏の濡れ衣のやうな黒髪、絹の様な白い肌。淑やかな佇まい。」「そうだ…私には、何もない！何も！」

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#rsbs日誌 「これがあれの妹か！想像と違う！とんだ荒くれものだと散々な扱いを受けた！左遷も！転属も！何度も受けた！戦えるならばと、わたしは…わたしは！この身さえも捧げた！人間に！色欲の塊に！」「…そして、最後の出撃かや」