ヒトラーが「元伍長」であるという誤解/その背景は何か?(赤城毅氏)

ヒトラーは第一次大戦で、鉄十次勲章を得るなどの戦功を立てた勇敢な兵士であったのですが、ヒトラーが「伍長」だったという表現がよく見られます(例:手塚治虫「アドルフに告ぐ」)。 しかし、実際の階級的にはそう呼ぶのは適切ではない、と歴史関係のノンフィクションや翻訳を手がける赤城毅氏(大木毅氏)@akagitsuyoshiが紹介。 詳しい人の間では常識だとか(笑)。 では、なぜそんな誤解が広まったのか?それも含めての考察と反響です。
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赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

誰もが知っている、ありふれた史料から、それまで考えられていなかった疑問をひきだすのが、優れた研究者なのだと思います。

2014-08-02 23:46:45
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi 注意してみていませんが、ないと思います。

2014-08-02 23:48:04
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei だと思います。Bömischer Gefreiter だと、きちんと訳せば「ベーメンの一等兵」で、侮蔑的ニュアンスが消えちゃいますからね。

2014-08-02 23:49:38
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

史資料探すこと自体は、金とひまがあれば、誰にでもできますしね。大事なのは、どこをどう掘って、どう解釈するかという問題意識。

2014-08-02 23:52:51
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi なんでボヘミアなんだろうとは疑問に思ってましたが、英語のボヘミアンから来ていると考えれば、蔑称ということで筋が通りますね。

2014-08-02 23:55:48
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei ぜひ、疑問を楽しんで下さい(笑)。

2014-08-03 00:01:04

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Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

えっ、そんな大きな間違いがあるなら、どうしてその誤解が普及しているんだろう?QT @akagitsuyoshi  WWⅠのヒトラーの階級は、よく「伍長」と訳されているが、実際には Gefreiter で下から二番目、「一等兵」だった。統率力がないので階級を上げちゃ駄目という判断

2014-08-03 08:49:22
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

ヒトラーは伍長か一等兵か問題 ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2… ウィキペディアでも「伍長」だったが「Gefreiter 」であることも明記されている。下から二番目のこの階級をどう翻訳するのが適切か、という問題なのだろうか。 @akagitsuyoshi

2014-08-03 09:03:18
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

togetter用資料 本日、2014年8月3日の朝には確かに「伍長」という記述があったのです。今無いのは…このtwitter上の議論の影響かしらん(笑) / “アドルフ・ヒトラー - Wikipedia” htn.to/wvSDkqi

2014-08-04 00:30:31
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

階級は国ごとにちがうけど、捕虜の扱いやカウンターパートの選定などに必要だから、「この国のAは、あの国のBに相当する」という正式な取り決めがある、とも聞いたことがあるのですが、それは将校・士官や下士官などの区分ていどなのかな。@akagitsuyoshi

2014-08-03 09:14:56
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan おはようございます。tanosennseiとのやり取りをみていただければわかりますが、英語圏で生まれた蔑称が広まったのじゃないかと仮説を立てています。Gefreiter 、英訳すれば、private 1st class ぐらいになりますし。

2014-08-03 09:21:49
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan 英語では、Bohemian Corporal だと思いますが、Corporal に相当するのは、Unteroffizier。ドイツ語で、bömischer Unteroffizier などと記された文献はみたことがありません。

2014-08-03 09:24:38
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan もちろん、colonel が Oberst など、どれがどれに相応するかは決まっています。現代の例だと、NATOなどは多数の国が参加しているので、階級符号というのが定められていますね。参加国の軍隊の階級を、どれがどれに相応すると決めたものです。

2014-08-03 09:31:19
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan Gefreiter は下から二番目の兵の階級ですから、日本の下士官の階級である「伍長」を訳語にあてるのは、あきらかに間違いですね。

2014-08-03 09:35:42
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

たいへん丁寧な解説ありがとうございます。後でまとめよう,,…,@akagitsuyoshi

2014-08-03 09:42:03
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

いしいひさいちの漫画で、フジサンケイの世襲代表が解任された時「あいつは ヒトラーだよ」「独裁者!?」「いや元伍長(細かい小者)」というのがありました。鬼軍曹みたいに、いろいろ含意があるのですね。@akagitsuyoshi

2014-08-03 09:53:42
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

石原莞爾は「東條上等兵」呼ばわり、一方でナポレオンは兵隊から敬意を込めて「ちび伍長」でしたか。「現場を知ってる、先頭に立つ」も「大局を見ない、大物でない」もあるので翻訳とかでも思わぬ間違いを生みそうですね… …@akagitsuyoshi

2014-08-03 10:03:50
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan 「ボヘミアの」も、ドイツ語だと bömisch 「ベーメンの」(ボヘミアはチェコ語です)は、俗語で、奇妙だ、不可解だというような意味があるだけですが(英語の It is Greek to me と同じように使います)……(続)

2014-08-03 10:41:13
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan (承前)英語の bohemian だと、「気まぐれな」とか「流浪の」とかいう意味が出てきますよね。この点からしても「ボヘミアの伍長」は、英語圏のヒトラーを小馬鹿にする呼び方として出てきたんじゃないかと推測しています。

2014-08-03 10:42:57
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan ちなみに「伍長」は、下士官の階級のなかでは、いちばん下です。

2014-08-03 10:43:23
Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) @gryphonjapan

「ボヘミアの醜聞」も、そこである必然性があったのかなあ。@akagitsuyoshi

2014-08-03 12:27:22
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@gryphonjapan そこまでいくと、英語における Bohemian の語義の変遷の問題になりますね(苦笑)。

2014-08-03 12:44:59

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