- hurutaka_CA
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「いいの、交戦がある以上戦力を省くわけにもいかなかったし、あなたは戦力を温存して頂戴」 無言で飛龍が頷く。 「でも・・・交戦、か」 小さく呟いた。 「ほんとに・・・そんなものがあったのかな」 伊勢の呟きは、雨音で掻き消えた。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:42:52―――【手掛かり】 「夕張さん! どうー?」 雷の声が艦隊に響く。 「ダメね! 何も無い!」 夕張もまた、大きなジェスチャーで応えた。 「・・・この雨じゃけぇ。 下手に捜索範囲は広げない方が良さそうじゃねぇ」 帽子を押さえながら浦風。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:46:26「この嵐、明け方までは続きそうかしら」 「かもしれん。 交戦の痕跡も無いし、あったとしてもこの嵐じゃさっさと敵さんも切り上げとる可能性が高いかもしれん」 夕張が頷いた。 「そうね・・・。 一度本隊と合流しましょうか」 「了解じゃ」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:48:35「雷ちゃん! 一度戻るわよ!」 夕張が再び声を上げる。 「はーーーい!」 少し遅れて雷の声が雨音に紛れて届いた。 「・・・手掛かりどころか交戦の跡すら無いわ・・・一体何なの、これ」 艤装を背負いなおしながら雷がぼやく。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:51:40「・・・ついさっき、本当についさっきの出来事なのよ・・・。 それがこんな一瞬で消えちゃうものかしら・・・?」 ならばやはり交戦など無かった? ・・・いや、だったら古鷹さんはどこへ消えたのか・・・。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:52:56・・・最悪の展開が頭をよぎる。 雷は慌てて首を振った。 「・・・何かが・・・起きてる?」 言った瞬間、雷の足元で小さな金属音が響いた。 「・・・え?」 目線だけ送り、そしてそれが何なのか確認すると同時、雷は慌てて腰を落とした。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:54:49「夕張さん、これ!」 雷が差す先、夕張はそこへ目を向けた瞬間、思わず声を漏らした。 そこにいたのは20.3cm連装砲の妖精さんだ。 「もしかして、あなた達古鷹さんの?」 問う夕張に妖精さんが何度も首を縦に振る。 三人は無言のまま顔を見合わせた。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 21:58:41・・・手掛かりを見つけた。 戦果だ。 この嵐の中、消えた古鷹の手掛かりを見つけたことは大変貴重なことだろう。 ただ・・・同時に、この結果は今まで以上に最悪の展開へと答えが近づいた事ともなった。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:00:23「・・・伊勢さん、夕張さん達から連絡です、手掛かりを見つけたから一度こちらと合流するそうです」 「・・・そう」 飛龍の報告に伊勢は短く応えた。 手掛かり・・・か。 「・・・参ったわね」 「ん?」 苦笑する伊勢に、ビスマルクが問う。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:03:54「気にしないで、独り言」 短く応える伊勢に、ビスマルクは鼻で応えた。 直後、ビスマルクの電探が雨音を破って響いた。 「え・・・?」 「何? 敵?」 「嘘・・・このタイミングで?!」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:06:37「・・・いえ、待って・・・なにこれ」 電探の反応を探りながら、ビスマルクが同様の声を上げる。 「電探反応アリ・・・反応、一隻?」 「は、はぁ?」 一隻? 敵艦隊の残存兵力? いやそれにしても・・・。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:09:09「反応、離れていく? 何この速度・・・」 「目視、目視は出来る?」 「ま、待ってください今偵察機を・・・!」 言いかける飛龍を、ビスマルクが手で制した。 「・・・反応、消えたわ」 聞き、飛龍が弓を下ろした。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:11:10「・・・別働隊と合流しましょう」 言う伊勢に、ビスマルク、飛龍共に頷いた。 ・・・手掛かりは見つけた。 戦果だ。 ・・・なのにこの、ぬぐえない不安感は何なのだろう。 伊勢は気付かれないよう二人を一瞥した。 恐らく・・・二人も同じだ。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:13:58捜索隊が合流し、鎮守府に戻る。 報告までの間、艦隊に会話は無かった。 ―――いや、一つだけ言葉があった。 「・・・この海は、どこまで深いのかしら」 そう、ビスマルクが呟いたのを・・・伊勢は聞き逃さなかった・・・。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:16:38ミッドウェーに消えた古鷹 2 【手掛かり】 了 今回艦隊募集はありません。 次回は来週の予定です。 お疲れ様でした。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-21 22:17:34青葉と衣笠が部屋の扉をあけると、そこには薄暗い空間が広がっていた。 「・・・加古さん?」 帰投の報告は受けている。 いるはずだ。 「・・・おーい、いるのー?」 青葉の後ろから衣笠が顔を出す。 同時に奥でごそりという音がした。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:10:11「あれ、どうしたの二人とも」 布団を跳ね除けるようにして顔を出した加古。 青葉と衣笠はその様子に目を丸くした。 「い、いや・・・古鷹さんの捜索隊がさっき戻ってきたから・・・報告を・・・」 「あ、ほんとー? で、どうだった? 古鷹いた?」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:11:45「いや・・・その、連装砲の妖精さんが見つかっただけで・・・。 詳しい話は妖精さんから聞けるとは思いますが・・・」 余りにもあっけらかんとした様子の加古に気圧されながら青葉が答える。 「そっかーまぁ状況を知っている子が見つかっただけでも戦果だねー」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:13:16「・・・ねぇ加古、古鷹が心配じゃないの?」 不意に、黙していた衣笠が口を開く。 青葉が止めようとするが、衣笠は静かに首を振った。 加古はそんな様子の衣笠を見、小さく苦笑した。 「そりゃ最初は焦ったけど、なんか急に冷静になっちゃっていうかね」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:15:22―――【兵器のプライド】 加古は抱えていた布団を脇にどけると、二人に座るよう促した。 「ちょっと長くなるかもだよ」 言う加古に、青葉と衣笠は視線を一度だけ合わせ、腰を下ろす。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:17:08「結論から言うと、あたしは言うほど古鷹を心配していない。 まぁ古鷹なら大丈夫だろう、程度かな」 これに衣笠が再び口を開きそうになったが、すぐに口を噤んだ。 「うん、衣笠の言いたいことはわかる。 でも理由はちゃんとあるんだよ」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:18:45「古鷹が初めてここに着任したときかな・・・こんな事を言ってたんだよね」 『私達にはなんで感情なんていうものがあるんだろうね』 どこか古鷹の口調を真似るように、加古が言う。 青葉と衣笠はこれに意外と言った反応を見せた。 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:22:10「意外でしょう? でも、古鷹ってそういうところあるんだよね。 いや・・・寧ろ古鷹は誰よりも不器用なのかも」 苦笑。 今日は良く加古のこんな顔を見る。 「古鷹が初めて海に出たとき、周りからは多大な期待が寄せられた」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:25:23「一等巡洋艦、果ては重巡洋艦として。 帝国海軍の期待が寄せられた」 ふっと加古の目が細められた。 『ね、わかるでしょ?』 そう、言わんばかりの鋭い目線に。 「古鷹は戦果を挙げることを強いられた。 その期待に応えなければならなかった」 #ミッドウェーに消えた古鷹
2014-08-28 16:27:29