不知火に落ち度はない その15

yamoto @yamoto

「まあ、納得した。南雲機動部隊の再結成となりゃ、ウチよりお前んとこだろ」 「ご理解いただきなにより。追って書類は提出します」 「空母ハーレム作りに協力しよう」 「一々人聞き悪く言い換えてませんか？」 否定しないのか。強いなお前。 #不知火に落ち度はない

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「繰り返すが、あいつらありえねえほどワガママだぞ」 「腕の鳴る話ですね」 眼鏡をくいっとあげる。 お前は調教師ですか。似合いすぎるからやめろ。 「お前ンところの装備はどんなんだ？」 「彼女達の分も烈風改、流星改は用意しています」 用意済かよ。 #不知火に落ち度はない

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「よかったら訓練風景を見ていきますか？」 「来るとき見たよ。お前ンとこの演習に当たりたくねえなあ、って心底思うわ」 瑞鳳・祥鳳ですら流星装備。 恐ろしいほどの練度で次々艦載機を出して的を蜂の巣にしてた。 空母専門の鎮守府かよと言いたい。 #不知火に落ち度はない

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「なあ、不知火。お前的にはどう思う？」 「一時移籍に異論はありません。訓練内容、密度に関しても信頼性が高いです」 お茶菓子の羊羹の手を休めて、愛しの秘書艦殿が言う。 お前、それ気に入ったの？ なんなら土産に買って帰ってやるぞ。 ここの地元の水羊羹。 #不知火に落ち度はない

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「質問ですが」 「なんでしょう、ぬいぬい」 「ギンブチさんは、二名ともケッコンするおつもりですか？」 おい。 爆撃すんな。 翔鶴の顔がちょっと青ざめてんぞ。 ウチのプチドーベルマンまじこわい。 どんな相手でも容赦なく食いつける逸材過ぎる。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「なるほど。完全な移籍も視野に入ってる、とのお考えで宜しいですね？ 事後承諾で」 おいおい。 翔鶴の顔を、チェッカーに使うんじゃありません。 もんのすげえ眼光で睨まれて、結構ビビってるじゃありませんか。 思考リンクってこう言うときに弱点になるのね。 #不知火に落ち度はない

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「翔鶴をあまりつついてやらないでください。口に出していなかったのは謝罪しましょう」 「あくまで彼女達はこちらの所属ですので。戦力が減るのは問題です」 ちょっとは困るけどな、そりゃ。 もち、言外のことは察してます。 めんどくさいので言わなかっただけ。 #不知火に落ち度はない

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「会話をしなくて良いシステムにいささか頼りすぎではないでしょうか」 「便利なんですけどね、これ」 翔鶴に視線を合わせ、笑ってみせるギンブチ。 翔鶴が顔を赤らめて睨み返す。 お前、今なに言った。 うわ、すっげーいちゃつかれた気分。 #不知火に落ち度はない

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ただ、こいつは正直異常とも言える。 思考が四六時中流れてくるのを任意でカットアウトしたり、単体に向けて発信したり出来てるってことだ。 開戦ともなれば、恐ろしい情報量がこいつの脳を焼いてるんだろう。 それは便利の一言で済ませていいものじゃない。 #不知火に落ち度はない

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それでなお、二艦追加するのも視野に入れているという。 全艦コントロールを四六時中行い、把握しているってのはどんな気分なんだろうな。 想像するに、あまり真似をしたくない事である。 やっぱあの海に、大事なもん落っことしてきてんだな、と再認識する。 #不知火に落ち度はない

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「ギンブチさんは、ケッコンをどうお考えですか？」 「それはもちろん」 ──深海棲艦に勝つための、技術です。 その言葉は。 とても。 とても。 理想的な回答と言えた。 不知火の目は、どこか冷たかったが。 #不知火に落ち度はない

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「了解しました。参考にさせていただきます」 「それは──貴方を対象にした言葉ですか？」 ギンブチ？ なんだその質問。意図が掴めねーぞ。 「戦力貸し出しの件についてです。不知火個人に特に関係はありません」 「そうですか。それは失礼しました」 #不知火に落ち度はない

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それ以後、不知火は特に話に食い付くようなことはしなかった。 話はスムーズに進み、一時的に移籍については了解の判をつく。 艦娘の強い要望があれば、正式な移籍も了承する、という文面も確認した。 戦力は若干減るが、うちじゃ100％活かせてないしな。 #不知火に落ち度はない

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その後訓練の光景も見せて貰ったが、正式空母4艦による一斉攻撃は凄まじいものだった。 一切の無駄なく行われる攻撃や陣形転換。 ギンブチを中継されて行われる沈黙の連携に、オンライン戦闘の上をいくものを見せられた。 これも一つの戦争技術だな。 #不知火に落ち度はない

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そして現在。 帰りのＳＡで、不知火がなんか小難しい顔をしてたので、アイスを差し出してる所である。 ＳＡ名物、あずきソフトクリーム。つぶつぶがとってもみずみずしい。 食ってみると結構、小豆のざらつきがソフトクリームと合わさって旨い。 #不知火に落ち度はない

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「食えよ。結構ここの旨いぞ」 「不知火のお腹が空いてるように見えましたか？」 受け取りながらもそう言い返す秘書艦殿。 「めんどくさい顔はしてたな」 「……。いただきます」 素直で宜しい。 めんどくさい気分の時は、旨いもの食えば落ち着くしな。 #不知火に落ち度はない

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不知火の座ってるベンチに腰を下ろして、俺も頂く。 うむ。うめえ。 流石は小豆の名産地。粒がしっかり揃ってる。 あと、これなら多分親子連れに見えてセーフという考えもある。 こないだ、複数連れだと危うく通報されるトコだったしな。 #不知火に落ち度はない

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「実際に目の当たりにしてみると、複雑な心境です」 「ああ。ケッコンのことな。あーいう技術なんだからしょうがないっちゃしょうがないぞ」 俺が二の足踏んでるのもああ言う身内が居るからだし。 前向きに検討はしたいんだけどな。 あー、ソフトクリームうめー。 #不知火に落ち度はない

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「以心伝心。離れてても伝わる意思。そりゃ便利なことだけどな」 「……。不知火の考えていることも、全てわかるのでしょうか」 「そればっかはしてみんことにはさっぱりだ」 技術資料には艤装状態って話だが、あの様子を見るとそうとも言えないしな。 #不知火に落ち度はない

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あと、ロマンチストと笑われるかも知れないが。 あの報道を見た人間からすると、何か引っかかってならない。 システムではなく、繋がった証としてのものだからこそ、大事なのではないかとか。 隣のプチドーベルマンにぷふーっと笑われそうなので、考えを追いだそう。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「司令は考えを見られることはどう思います？」 「……ぞっとしねーな。ってのが本音だけどなー。ただ、お前が出てるとき一々心配せんでいいのは、いいかもな」 こいつめっちゃ好戦的だからな。 大破状態でまだ前に出ようとするときもあるからな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「不知火としては、見てみたい気もします」 「そっか」 「ただ、何人もと繋がるのは嫌です」 「同感。そんな便利な脳してません」 ソフトクリームのコーンうめえ。 これは、もしやこっちにも小豆練り込み済か。 #不知火に落ち度はない

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「だけどな。不便ってのもまた大事だしな」 「？ どういうことでしょうか」 「お前このアイス好き？」 「……はあ？ 好きですが、ちょっとざらざらしてるので変な気分です」 「だろうな。お前ちょっと食ってるとき眉が下がってたから」 不知火が眉を押さえる。 #不知火に落ち度はない

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「今、はずかしっ って思ったりしただろ」 「そんなことはありません」 「こんな風に考えを読んでく楽しみに欠ける」 「不知火は髪が気になっただけです」 おーおー、言いよる言いよる。 耳赤いぞお前。 あと、黙ってるがほっぺにソフトクリームついてる。 #不知火に落ち度はない

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「つまり、だな」 指を頬に伸ばし、ソフトクリームに触れる。 不知火は何事かと思ってるようで、抵抗はなかった。 むにっとしたほっぺたの感触が指に伝わり、指がソフトクリームをぬぐい取る。 あむ。 うむ。人肌で溶けたのもまあまあいけるな。 #不知火に落ち度はない