日本海に面したキャンプ場で巨人の死体を見つけた 終

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アドリア海 @keizi80

「それを聴いた瞬間私は大変気分が悪くなりましてね、体に電気が走ったような気がして、逆にそのおかげでまた足が自分の言うことを聴くようになりはじめたわけですね。『わっ』と叫んで逃げ出して。そしたら同級生も泡食った顔で追いかけてくる」

2014-09-14 10:34:10
アドリア海 @keizi80

「考えてみればそんな気味の悪い光景も他にはないわけですからね。でも走れど走れど階段にはたどり着かない。そもそも室内の端にも到達しない。これはやはり空間がおかしなことになってるんだろうなあと思いはしましたが、とにかく逃げるしかないわけです。それで時々振り返るんだけど」

2014-09-14 10:37:09
アドリア海 @keizi80

「別に肉塊との距離はそんなに開いていない。絶望的な心持がして、同級生と顔を見合わせたりして、それでも他にとる手立てもないのでがむしゃらに走り続けました。そうしているうちに友人が何かにぶつかって、盛大にひっくり返ったわけです。同時に何かが壊れるとんでもない音が響き渡ってくる」

2014-09-14 10:46:55
アドリア海 @keizi80

「見ると芸術家が残した何かの像が根元から折れて転がっているわけです。そいつには『角』がたくさんついていたんだけど、壊れた衝撃でそのうちの何個かが剥がれ落ちてしまっている」

2014-09-14 10:52:00
アドリア海 @keizi80

「同級生は直感的に大変なことをしてしまったと悟ったのか涙目になって『どうしようどうしよう』と言ってくるんですがそんなもの私にだってわかるはずがない。後ろでは肉塊が相変わらず泣いてる」

2014-09-14 10:54:23
アドリア海 @keizi80

とりあえずまた逃げないとということで二人して動き出して、でも2,3歩進んだところで階段にぶつかりました。何か拍子抜けしつつ1階におり、家の外まで出るともう夕暮れになっている。そんなに時間がたったわけがないとうろたえていると沖に船が見えました」

2014-09-14 10:55:49
アドリア海 @keizi80

「そのボートはもうあとちょっとで島に横付けできる段階で。誰だろう誰だろうと気になりましてね。それでちょうどそのとき同級生は島に行くということもあって、双眼鏡を携帯してたんで、それで船の主を覗いてみたわけです」

2014-09-14 11:07:07
アドリア海 @keizi80

「そしたら同級生は『芸術家だ!』って言って叫びました。『芸術家がもどってきたぞ!』っていって。やつから双眼鏡を奪い取って自分でも見てみたところ、金属加工用の分厚いエプロンを体の前にかけ、顔には能で使うような面をつけた男がそこには立っておりました」

2014-09-14 11:16:09
アドリア海 @keizi80

「それでその額の部分や、背中には背びれのように例の角をびっしり並べてつけているわけです。そんなことをするのは確かにあの芸術家しか存在し得ない。私は震える手で双眼鏡を同級生に返しました。するとそれを再度覗き込んだ同級生が悲鳴を上げたわけです。『こっちを見てる』って」

2014-09-14 11:18:42
アドリア海 @keizi80

「『あいつ自分でも双眼鏡を取り出して俺たちを見てるぞ』ってそう言う訳ですね。私たちはもう生きた心地もしなくなって、自分たちが止めてあるボートめがけて全力疾走しました。万一それを盗られたり、壊されでもしたらもう島から出られませんからね」

2014-09-14 11:21:16
アドリア海 @keizi80

「幸いボートは無事な状態で元留めておいた場所に居座っていた。それで少しほっとして二人で乗り込むと一目散に陸めがけて走り出しました。で、そこでようやく気づいたんですね、帰るべき私の故郷でもある漁港がどこにも見えない」

2014-09-14 11:22:46
アドリア海 @keizi80

「はるかかなたに陸地はうっすら見えるのだけど、何十キロ先なのかもよくわからない。反対方向には夕焼けに染まった海が広がっているだけ。これはどう考えてもありえないことなんです。本来港と島との距離は1,2キロしかなかったわけだから」

2014-09-14 11:24:12
アドリア海 @keizi80

「同級生は『やっぱり空間が曲がってるせいなのかなあ』と言っておりました。だとするとこのままボートで進んでいっても陸地にたどり着けるかどうか怪しいわけです。仮にたどりつけてもそれが日本であるという保障すらない。私も港の出身なので海難の恐ろしさはよくわかっている」

2014-09-14 11:25:38
アドリア海 @keizi80

「もう逃げようがないという結論に達しました。日も暮れかかっている。とするともう引き返すしかないわけですね。こっそり戻って芸術家の様子を観察してみるほかないということになり」

2014-09-14 11:27:25
アドリア海 @keizi80

「実際、再び芸術家の家のあたりまでやってきてみると、そこでは芸術家が高さ5メートルはあろうかという巨大なモニュメントの前に立ち、何やらクルクル舞っておりました。本当に精神疾患者のように」

2014-09-14 11:30:40
アドリア海 @keizi80

「そしてそのモニュメントなんですが、島にあまた残る芸術作品の中でもとりわけ宿す角の数が多かった。結果的に見てくれはサボテン同然となっていると言ってもよかった。私は芸術家の家の中にあった『壁画』のことを思い出しておりました。こうしてみるとあれにそっくりだなと思って」

2014-09-14 11:33:26
アドリア海 @keizi80

「やがて芸術家は何かを唄いながら踊るように家の中に消えていきました。それを見るや同級生は『あれなんじゃね』と言ってきたわけです。『あれの角をはげばなんとかなるんじゃね?』って」

2014-09-14 11:34:44
アドリア海 @keizi80

「それでよく考えてみると、そのサボテンが立っているあたりというのは、2年前に火事が起きたときの出火元あたりで、実際にそこらあたりが残っている焦げ後も一番ひどいわけです。にもかかわらずサボテンはかなりきれいな状態にある。というより他のモニュメントと比べて明らかに新しい」

2014-09-14 11:45:07
アドリア海 @keizi80

「私はあああれは芸術家が最近になって作り直したんだなって悟りましたよ。そしてさっき芸術家の家で角つきの像を壊したら表に出られたこと、加えて壁画の内容なども照らし合わせ、確かにあの角だらけのサボテンをどうにかすれば、港に帰れる芽もでてきそうではあるなあという結論に達しました」

2014-09-14 11:48:28
アドリア海 @keizi80

「それで二人してそのサボテンの破壊に取り掛かったわけです。あたりの岩やら何やらを拾って、強引にサボテンにこそぎつけて、そうしていると角が何個か地面に転げ落ちました」

2014-09-14 11:50:48
アドリア海 @keizi80

「それでなおもその作業を継続するうちに『ぎゃあ』という声が家の中から聞こえてきました。それは成人男性のものの用でもあり、またあの肉塊のもののようでもありました。おそらくはその両者がまざっていたのでしょう」

2014-09-14 11:52:08
アドリア海 @keizi80

「それではっとして家のほうへ目をやりましたが、以後まったく音沙汰はない。やめるべきか、それともまだまだ破壊を続けるかしばし考え、何気なく首をまわしたところ、1キロほど先になじみの港町が顔をのぞかせている」

2014-09-14 11:59:21
アドリア海 @keizi80

「これは助かったと狂喜して、あとはわき目も振らず同級生とボートに乗り込み、陸に戻りました。われわれが島に行っていたことはすでに港町にもばれていたらしく、大目玉をくらわされましたわ」

2014-09-14 12:04:20
アドリア海 @keizi80

「同時にわれわれの口から島での出来事を聞きだした住民らは、後日群れを成して島を訪れました。そこに芸術家の姿は影も形もなかったらしいんだが、家の中に骨が残ってたそうなんですね。身長4メートルに達しようかという巨人の」

2014-09-14 12:58:22
アドリア海 @keizi80

「それで、ここから先は推測の域をでんのだが、やはりあの芸術家は時間や空間に穴を開け、それをある程度思うがままに捻じ曲げる技術を習得していたのではないかと思うんですわ。で、港から拉致してきた女の子たちをその異界に閉じ込めた」

2014-09-14 13:01:54