不知火に落ち度はない その19

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yamoto @yamoto

「で、片目野郎はどうなんだよ。病状」 「トランキライザー少々だよ。退屈しねえ日々にサナトリウム効果でもあんのかね」 「ほー、そいつぁいいな。お前の回復が一番遅いって賭けてたのに」 「お前らと出来が違うんだよ。ただ血糖値と中性脂肪がマキシマムだ」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:08:59
yamoto @yamoto

「え、何お前まだ料理できてねえの? おいおい何やってんだよ三十過ぎて」 「歳と料理は関係ねーだろ。カップ麺マジ美味しいです」 はー、と二人のため息が重なる。 「一番先に死ぬな、こん中じゃ」 「原因は成人病ですか。惜しくない片目を亡くしましたね」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:11:56
yamoto @yamoto

「てか……マドンナ飯は?」 「作りになんかこねーよ。だからとっくに終わったつってんだろ」 旨かったけどな。昔の話だ。 「ぬいぬいに作ってもらえばいいでしょう」 「あいつな。お湯入れる以外なんもできん」 珈琲だけが絶品です。他は壊滅的。 食堂が命綱。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:14:58
yamoto @yamoto

「そちらに食堂もあるはずでは? こちらは兵站の関係上まだなんですがね」 「え、そっちどうしてんの?」 「ぬかりなく。栄養士資格持ってますから翔鶴」 スーパー秘書艦だ。スーパー秘書艦が居るぞ。 「基本自炊可能にしていますし少人数ですからね」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:17:57
yamoto @yamoto

蒼龍飛龍組大丈夫かね。 あいつら基本食堂生活だったはずだが。 「当番制になってますので、慣れれば大丈夫でしょう」 「心読むなっつの。お前もやんの?」 「ええ、エプロン付けて」 ぶっ。 俺達二人が吹き出すハメになった。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:21:04
yamoto @yamoto

「いや、すまんははははは、お前のツラで食堂でエプロンって……エプロンって!」 「わはははは、あーわりわり。鉄の味しかしなさそうだな」 「ええ。大不評です。毎回」 こいつが料理とかマジでな。 絶対野菜が角切りだ。固そう。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:24:23
yamoto @yamoto

「いやしかしぬいぬい、料理できねーんだな。作りに行ってやろうか片目」 「おう頼むわ。お前のイタリアンたまには食いたい」 同室の頃は最高だった気がする。 長年食ってきた味が懐かしい。 ただ、大抵イタリアンに偏るから和食が恋しくなるんだが。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:27:44
yamoto @yamoto

浜風のことは伏せておこう。 あそこのご家庭風味料理は、すごい吸引力がありすぎる。 もし鎮守府対抗料理合戦とかあれば、出してみたい。 コック姿の浜風とか見てて面白そうだし。 なんかな。服装に反比例してちょこちょこ動きそうでな。 ハムスターみてえ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:29:31
yamoto @yamoto

「火傷はどうよ、片目」 「ご覧の通りだ。少々疼くけどな」 髪の毛を上げてみせる。 「義眼とかつけねえの? 最近技術進歩してるんだろ」 「まだ実用段階前ですけどね、それ。申請を出せば被験者として使用できますよ」 「身体に機械を埋め込むのはちょっとな」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:36:46
yamoto @yamoto

「便利らしいぞー。X線とか仕込んですけすけ堪能とかさ」 「うっそマジで。すぐ申請出してくる」 「犯罪ですよそれ」 冷淡に言うなよ。 男の浪漫に現実突きつけるなよ。 漫画の世界が目の前にあるんだぞ。 「堂々と頼めばいいだけです」 セクハラだ。それ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:51:39
yamoto @yamoto

「ま、病状はそんなとこだよ。ところで、モグリ」 「あんだよ」 チョコパフェ食う三十路。 ビジュアル的に超痛い。 「尻尾付き、まだ見つかってねえか」 「……」 空気が重くなった。 ギンブチも眼鏡を整え直す。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:54:27
yamoto @yamoto

「片目。あなたの方に目撃証言は?」 「来てねえ。どこの海域にいるかもわからねえ」 海面に浮かぶあの姿を覚えている。 明かりのない夜の海の中、そいつは王者の様にたたずんでいた。 尻尾がある、深海棲艦。 あまたの情報を探しても、網に掛からなかった。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 08:58:10
yamoto @yamoto

「こっちも手がかりなしだ。見間違えたのかもしれねえって未だに思うぜ」 「案外、誰かが沈めたのかも知れませんね」 二人揃ってそんなことを言うが── 「じゃ、見つけたら俺が独り占めな」 「冗談じゃねえ。核弾頭打ち込んでやる」 「蜂の巣にしてやりますよ」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:01:40
yamoto @yamoto

「どこにいるのかねえ、尻尾付きちゃんは」 「案外鎮守府の中いたりしてな」 「笑えませんね、その冗談」 まあな。 あれが艦娘だったとかいうオチは勘弁だ。 「どっかで匿ってたらどうするよ」 「核弾頭ぶちこむ」 「蜂の巣ですね」 ぶれねえな。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:08:01
yamoto @yamoto

「お前ならどうするんだよ片目」 「ごめんなさい許してください って言うまで追い詰めて──ブチ殺す」 あいつらがそんな神経してるか知らんけど。 「中身が十歳のガキで命乞いをしても?」 「だったら最高だな。狙いやすい」 部下にゃー聞かせらんねえ台詞。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:19:07
yamoto @yamoto

「それでこそですね」 「いっちゃんこん中で、ゲスで外道になれるよなお前」 ははははは。戦術核ぶち込むっていうバカと、蜂の巣にするって冷血が揃って何いってやがる。 「だからこそ、部下を利用しちゃいかんと自省してます」 俺の問題とあいつらのお仕事は別。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:24:42
yamoto @yamoto

「まーなー。でちちゃんとかすんげー良い子だし」 「翔鶴以外には聞かせていませんので」 「俺部下が取り逃がしても責めたりしねえよ」 あー、アイスコーヒーうめー。 まじうめー。 「あと、さ。ギンブチ。お前に聞きたいんだがよ」 ギンブチが首をかしげる。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:28:05
yamoto @yamoto

「もし、だ。もし艦娘が不要になる新兵器が来たらどうする?」 これは、命題である。 あくまで仮定の話だ。 だが、悲願でもあるといえる。 「まずはモグリから聞きましょう。あなたは、そんな新兵器が来たらどうします?」 「原潜あるから俺はそっちでいい」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:29:35
yamoto @yamoto

「俺は艦娘を兵器としちゃ見れないからなー。原潜乗ってるのもそれだし」 「なんだと思ってるんだ、モグリ」 「可愛い女の子♥」 うん。お前昔っからそうだよな。 適性検査で写真指さし、今晩この子って言ったもんな。 結果、男の巣に投げ込まれたモグリ哀れ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:32:41
yamoto @yamoto

「モグリらしい意見ですね。私も新兵器より艦娘を取りますよ」 「おいおい。あいつらは一応人格が──」 「ですが兵器です」 すっぱり言い切るギンブチ。 「損傷せぬよう気を遣いましょう。全力が発揮できるようメンテもしましょう」 淡々と、淡々と。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:46:01
yamoto @yamoto

「ですが兵器です。そして私ももはや兵器と言って過言ではない」 指輪を見せる。 こいつの脳をネットワーク機器に切り替えるアイテムだ。 「現状新兵器の出番はありません。現状最有力と言われるものを使用するまでです」 「艦娘の出番がなくなるなら?」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:50:47
yamoto @yamoto

「夢のある話ですね。そんな新兵器が出来れば、艦娘に装備して貰いますか」 「ミサイルみたいな奴ならどうよ」 「スイッチ一つで簡単に、ですか。それならもう出番はありませんね」 と区切った上で、さらに言葉を続ける。 「退役するまで掃討を行うようにします」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:55:52
yamoto @yamoto

「お役ごめんになったら即開放じゃねえの?」 「そんなに甘くはないでしょう。新兵器に欠陥はつきもの。現状火力は維持すべきです」 世界初の艦娘の際も、同様だったでしょう? そりゃそうか。 時代遅れと言われる護衛艦も、ミサイルも、航空戦力も現役だ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 09:59:24
yamoto @yamoto

「と、言うことは。片目──貴方はその新兵器が導入されたらいち早く、それを使いたいと言うことですね」 「ご名答」 素直に答えておこう。 「良心が痛みますか。貴方も最初は兵器派だったでしょう」 「気が変わったんだ」 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 10:02:25
yamoto @yamoto

「ギンブチ。こいつマドンナにいっちゃん先に手ぇ出したろ?」 「ああ。合点がいきました」 おーまーえーらー。 温厚な片目大先生でも今日は暴れちゃうぞ? 『やーいヘタレけだものー』 声がハモった。 よっしお前ら表でろ。 今日がお前らの命日だ。 #不知火に落ち度はない

2014-09-14 10:05:38