不知火に落ち度はない その7

yamoto @yamoto

不知火の居ない司令室の２日目。 何事もなく過ぎていく時間、今日も平和な１日が続いている。 結局あいつに弁解も説明もしてなかったな。 司令室に灰皿をこっそり持ち込んだ俺はフワフワと煙を部屋に撒いていた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

司令室から外を見渡せば、訓練中の面々の姿が見える。 その中に孤立して走る浜風の姿を認め、手を振ってみた。 敬礼── あいつ案外余裕あんな。 手で行け、と示して見送る。 どうやら二日酔いは避けられたらしい。 まあ、一杯だけだったしな。酒。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

さて、我が愛すべき副官殿はというと、今日ものんびりどこかで過ごしてるらしい。 わざわざ寮まで訪ねていくこともあるまい。 買った土産のケーキはパウンドタイプ、案外日持ちをする奴だ。 顔を出したらさっさとそれでお許しを願おう。 そういう意味ではちょろい。 #不知火に落ち度はない

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こうも平和だと酒でも飲みたくなるが、昨日のアレがフラッシュバック。 浜風の唇が浮かんでくる。 いかんいかん。その後の惨事を考えると、暫くは楽しまない方が良い。 一応、足下の隠し棚に入れちゃいるが、取り出すのはやめにした。 ぷかー。 煙草で満足。 #不知火に落ち度はない

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トントン、とノックの音がする。 誰だ。長門か？ 「どうぞ」 声をかけるとドアが開く。煙草は予め用意した缶の中へ。 少々匂いが残るが、まあよほど鋭い奴以外きづきゃしない。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「失礼します。司令──お届け物です」 「おう……って不知火か。今日休みだろ？」 我が副官殿がお部屋に手紙片手に入ってきた。 やっべ。やっべ。 急げ俺の扇風機。ヤニ臭を外に流すのだ。 違和感に気づかれる前に早く。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「休みに顔を出してはいけませんか、司令」 「いや、別に。私服じゃないのか今日」 「休みに私服で居なければならないルールがあると？」 眉をひそめて鼻を動かす不知火。 顔に不機嫌の色が刻まれていく。 うわやべ、うわやべ。 これ煙草の匂いに気づかれてる。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ああ、そうだ不知火ちょっと待てよ」 さあ、誤魔化せ。 急げ俺。 冷蔵庫の中のパウンドケーキを出すんだ。 不知火は話を聞いているのか聞いていないのか、手紙を俺の机に置くと鼻を鳴らしてる。 駄目だ。もう相手は気づいてるぞこれ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ちょっと長門と飯の帰りに土産買ってたんだよ、ほら」 冷蔵庫を開けて取り出す俺に、不知火の目が冷たい。 「パウンドケーキ。好きだろ、お前こういうの」 「司令──」 うっすらと笑った。喜んでるんだよな。 何か笑い方がいつもと違って冷たいが。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「昨日ここに誰かいましたか？」 背筋が凍る。だが、俺も司令ですよ？ その程度の部下の言葉に揺らぐはずがないじゃないっすか。 「誰でも良いだろ。ほら、持って帰って陽炎達と食べなさい」 「居たのね」 不知火はケーキを受け取らない。 あれ？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「司令。ナイフを借りますね」 「え」 そのまま、迷わず俺の机を開ける。 ペーパーナイフ代わりにしてた、いわゆる便利なサバイバルナイフ様である。 不知火そいや、俺の私物の場所全部把握してたんだよな。 いやー、前々から思ってたけどお前ナイフ似合いすぎ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「……。いや、不知火、別にかまわんけど何に使うんだ？」 「手紙を開けようとしています」 ぴっとナイフを動かす。 さすが俺。手入れを欠かしてないからさっくりと紙程度なら切れる。 カミソリの切れ味ってやつだ。 実際髭剃りにも使えるんだぜ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「どうぞ、司令」 「お、おう」 笑って左手で手紙を差し出すけど、右手からナイフを離してないのは何故でしょうか不知火さん？ それもう用済みのはずだけど。 まさかなー。煙草だけでそこまでやるか？ あ、やるかも。 不知火のノースモーキング精神恐るべし。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

体重を対刃物用にシフト。 そこまでやることはないとは思うが、約束思いっきり破ってる俺が居るわけで。 前噛みつかれたことを考えると、仕置き程度にこれで暴れる可能性大。 とまで思ってふと考える── 何俺部下疑ってンだろね。 ちょっとこういうの良くない。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ご苦労」 とふとふと歩いて、自分の椅子に座り直す。 不知火、なーに刃物持って鉄面皮してるんだ？ セクハラりますよこの小娘。 「そのパウンドケーキ持って帰って、みんなで食べなさい」 「司令」 ぴたり、冷たい感触が俺の頬に当たった。 あちゃー。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「誰が居たの？」 「誰でもいいだろ」 うーむ？ もしかしてアレか。 煙草は実はどうでもいいのか？ 頬に当たるソレはこの際無視。 ここに当てるというのは、殺す気ありません、っていう宣言だし。 目が笑ってないのは、今日遊びの少ないキャラってことで。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ところで疲れないか。座れよ不知火」 「質問に答えて。匂いがするの」 ──浜風の臭いが部屋中からプンプンと。 目に鬼火が宿ってるかと思うぐらいの眼光と、ねっとりした言葉。 あー、わかったわかった。 こいつの余裕がない理由これで解決ですよ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

こいつ、結構縄張り意識が強いんだな。 ほら、わんこって入り込んだ相手とスッゲー喧嘩することあるじゃん？ この司令室は不知火のテリトリーだしな。 もともと不知火、犬チックだし。 それがちょびっと行きすぎてる感じになってるんだな。 以上分析お終い。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

長門の言葉が頭をよぎる。 ──お前は、不知火を甘やかしすぎだ。 ここは司令として、ちょっとばかり突っ張らないといけない感じじゃないでしょうか。 以上罪悪感と自分の棚上げ完了。 「不知火、お座り」 「………ふざけてるの？」 「いいからお座りなさい」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ざくん。と。 胸をブッ刺される。 傷口から血が盛大に吹き出し、身体が勢いで仰け反る。 刃物という異物への拒否反応。 そのまま腹を滅多差し。 ざくざくざくざく、ぐさぐさぐさぐさ。 鮮血が絵の具のようにその辺を彩る。 意識が血と共に抜け出ていく。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

──以上、俺司令の妄想お終い。 そんなことよりもっともーっと悪い結果になってます、なう。 「お、おーい、不知火？」 「何か？」 不知火さん不知火さん？ 確かに俺は座れと言いましたよ。 俺の股の上に 座れと言ってませんよ？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「あの不知火さん。これ人様に見られたら言い訳効かないんですけど」 「言い訳なんてしなければいいじゃない」 んなわけにいかんでしょーが！！ 俺の胸に鼻擦りつけて匂いかぐのやめなさい。 あと刃物ですけどね、この子ですね。 自分の服に当ててるんですよ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

しかも、電話の手が伸びるところにあるんですよ、手。 即憲兵さんにお電話OK。電話一本飛んできます。 愛用のナイフなんで指紋もべったり。 一方不知火は手袋装備。 詰んだー！！！ すっげー詰んだー！！！！ 俺のボルネオすぐそこアイフル。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「不知火なー。そういうの良くないと思う」 ぶつん。 弾ける不知火の第一ボタン。 お前なー！？ 「浜風と昨日何してたの」 「なんもしてません」 びりっ びりりりっ はい今度はスカート破れましたー！！ 何、質問断ると自動で始まるストリップって！？ #不知火に落ち度はない