rsbs日誌#29

レズボス日誌。第二九巻
1

艦これ二次創作SS。
胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。
一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。

「風使い、出会う」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 波止場にざざん、ざざんと波が打って返す音が響く。それは規則性を伴って響き、時折ぱしゃり、ぱしゃりと小さな波が船体にぶつかっては波間に消えていった。波止場に佇む、胡乱な機帆船のセイルに彼女…あきつ丸は腰かけていた。漆黒の衣類と外套に身を包み、酷く現実味が無かった

2014-09-20 12:06:44
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#rsbs日誌 彼女はただぼんやりとしていた。走馬灯に思い出を灯して、幻影を巻物に照らし出しては記憶に浸っている。「あきつ丸!」不意に彼女を呼ぶ声が遥か下から聞こえた。「ああ、姉上でありましたか」「もう昼だと言うに、食堂に顔を出さないからな。呼びに来たわけだ」

2014-09-20 12:15:58
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 あきつ丸を呼んだ娘…否、艦娘はあきつ丸と良く似ていた。髪は長く延びていたが、老竹色の外套を羽織り、藍鉄色の詰襟を着て肌は病的に白かった。「それと今は勤務中だ。神州丸と呼びなさい」「了解でありますよ。神州丸どの」肩を竦め、あきつ丸は真面目な姉だと小さく苦笑する。

2014-09-20 12:36:40
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#rsbs日誌 彼女らは表立って戦場に立つ事の無い、輸送任務に従事する艦娘だ。己の管轄となる輸送船を任され、全力で陸軍と、その協力関係にある施設や個人へと物資を運搬する。中でもあきつ丸は際立っていた。海流を読み、風を巧みに操り機帆船とは思えぬ船脚で目的地まで航海するのだ。

2014-09-20 12:41:42
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#rsbs日誌 動力を伴わずに帆走で航行できる機帆船は、深海棲艦にとってはまるで幽霊の様であるらしく、激しい集中を伴いながら、強く目を凝らして漸くうすらぼんやりとその船影が見えるのだと言う。よって、多くの陸軍輸送船艦娘はこの様な作戦に従事しているのだった。

2014-09-20 12:48:05
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#rsbs日誌 食堂に出向いた二人は腰を下ろして食事についた。神州丸は蕎麦を、あきつ丸は定食を頼んだ。人気の低い麦飯をあえて彼女は食べていた。「…麦の少ない麦飯でありますなぁ…もっと沢山入っている方が美味しいでありますよ」「飯に文句をつけるか。普通は銀シャリを喜ぶだろうに」

2014-09-20 12:55:06
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#rsbs日誌 「いやはや、美味しい麦飯は本当に幸せでありますから。噛み締めていてとても幸福なのであります。また食べたいでありますなぁ…あのお方の食事が食べたいであります」あきつ丸の言葉を聞き、神州丸は箸を止めた。「…あきつ丸、お前はまだ海軍のあの鋼鉄の魔女にお熱なのか?」

2014-09-20 13:48:12
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#rsbs日誌 「あのお方は素晴らしいでありますよ神州丸。比良坂提督は強く、美しい」「馬鹿馬鹿しいな…あんな胡乱な魔女の何がいい」神州丸は蕎麦をすすり直しながら言い捨てる。「あれは実際にあのお方の力と背中を見なくては分からないでありますよ」ほう、とため息をあきつ丸は溢した…

2014-09-20 14:36:11

…―――――…

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#rsbs日誌 てろてろと脳裏を過る記憶。それは苦くもあり、同時にとても甘い記憶。南西方面の友軍に物資を届けるべく、あきつ丸は機帆船を連れて大海を航っていた。幾つもの波間を越え、あと少し。と言うときの話だ。運悪く、深海棲艦の艦隊と遭遇、交戦に入ってしまった。

2014-09-20 14:53:13
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#rsbs日誌 「機関長殿!これ以上のスピードは出せないのでありますか!?」走馬灯から一式戦闘機隼の機影を飛行甲板式巻物に投影し、出撃させながらあきつ丸は機関室に繋がる伝声管に吠えた。『大絶賛全力運転の最中だ!積み荷が重たいんだよ!』尻に帆をかけて逃げ出したいとはこの事か

2014-09-20 15:31:29
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#rsbs日誌 「儘ならぬでありますなぁ…」苦笑いをしながらぼやく。対艦対空両用砲が深海棲艦に火を吹き、旧式の海防艦艦娘が必至に応戦する。今まで散々深海棲艦を欺き、のらりくらりと輸送任務を成功させてきたツケが回ってきたのであろう。最悪の場合は、輸送船だけでも逃がさねば…

2014-09-20 15:49:11
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#rsbs日誌 その時だった。双方向通信無線機に通信が入ったのだ『…ちら、……い軍、……艦隊…こえるか…?』「あきつ丸殿、無線機に通信が!」「なんでありますと!?」「深海棲艦の発する怪電波で雑音が多いですが、友軍のようです!」「余裕なんて無いであります!直ぐに救援要請を!」

2014-09-20 16:09:48
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#rsbs日誌 「こちら日本陸軍輸送船みどるそん号!現在深海棲艦の襲撃を受けて応戦中!可能な限り速急な救援を!」『相仕った』余りにも鮮明で老獪な声が、陸軍の彼らに聞こえた。そして鋭い砲撃が、深海棲艦を撃ち抜いていく。川内型軽巡洋艦三隻、そして特型駆逐艦三隻を擁する水雷戦隊。

2014-09-20 16:20:54
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#rsbs日誌 ギラついた両目を光らせる艦娘達。余りに正確で、強力な攻撃…だが、何よりも目を引いたのは…黒瑪瑙のやうな長髪に、紅玉よりも尚、深く赤い双眸を持った、染みひとつない白銀の詰襟を身に纏った一人の少女。下駄の様にあしらわれた艤装を履き、涼しい顔で海原に立っていた。

2014-09-20 16:34:27
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「みどるそん号の諸君、無事であるかや?」メガホンを片手に語りかける少女にあきつ丸はハッとする。「こちらみどるそん号所属の艦娘、あきつ丸であります。迅速な救援感謝するであります!」「それは上々。此方の戦闘もすぐに…」言葉を遮る様に激しい水柱が立ち上った。

2014-09-20 16:41:53
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#rsbs日誌 「…終わるつもりじゃったんじゃがなぁ」やれやれとばかりに少女は顔をしかめる。「提督!重巡が1!戦艦ル級が3!駆逐艦と軽巡洋艦が多数接近中!」川内が副砲の空薬莢をバラバラと排莢しながらに報告する。「吹雪らをつける。軽巡洋艦と駆逐艦は任せる。撃退出来るかや?」

2014-09-20 16:47:11
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「当然!全部沈めちゃっても良いんでしょ?」「無茶をしないと約束するならばよい」「いやったぁ!艦隊の皆、聞こえたね?川内、水雷戦隊!突貫します!」あきつ丸は絶句した。この少女はいったい、重巡と戦艦3隻を相手にどう戦うつもりなのだと。今すぐにでも呼び戻したい。

2014-09-20 16:50:53
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#rsbs日誌 「あ、さて…久方ぶりの砲雷撃戦と参るか」肩をコキコキと回し、少女は一つ掃除でもするかとばかりに呟いて見せる。「艤装展開、第一から第四装備、限定開放」光が放たれた。眩しい光が少女を包み、異形の、そして力強い武骨な黒金の艤装を身に纏っていた。煙突が黒煙を上げる。

2014-09-20 16:55:54
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「長砲身36センチ砲、撃てぇ!」4連装もの砲身が次々に火を吹き、砲弾を放つ。それも戦艦級とは思えぬ装填速度で、だ…とても単艦とは思えぬ砲弾の弾幕が、敵の頭上に降り注いだ。哀れにも一隻の戦艦が弾幕の直撃を受けて瞬く間に轟沈する。「…凄い、であります…」

2014-09-20 17:04:07
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 無事だった残りの三隻は隊を二分し、左右へと展開した。「ほう。多少は戦術を知っている様じゃが…甘い」25センチ副砲が、鋭い牙を向いた。主砲に勝るとも劣らぬ破壊力を見せつけ、戦艦を撃沈、並びに大破、戦闘不能へと持ち込む。「さあ、最後のお客じゃあ!」

2014-09-20 17:12:57
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 果敢にも主砲を放ちながら突っ込んでくる重巡に、少女は正対して見せた。「避けるであります!」あきつ丸の叫びを気に止める訳でもなく、少女は微笑んだ。そして…装甲の一部が開かれ、隠されていた艤装が姿を表す。くぐもった射出音と共に放たれたのは、死神の足跡を伴った。

2014-09-20 17:21:37
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 気付いた時にはもう遅い。12射線の高速酸素魚雷が爆発し、重巡を粉微塵に吹き飛ばして見せた。余りにも一方的な虐殺にも程近い戦いを終えると、少女の艤装は光の粒となって消え果てた。「これにて終了、と言う訳じゃな」恭しくお辞儀をして見せる少女にあきつ丸は心を奪われていた。

2014-09-20 17:33:41