PET検診(PET/CT検診)の有用性と限界について

呼吸器学会の依頼で作ったスライドが、わりとそのまま一般の方にも役立ちそうなので、解説付きで公開してみました。
133
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

次のS(u)ってのはLNT仮説準拠で考えた場合、検診被曝による発癌でどれだけ余命が短縮するかの数字(年/10万人)。ωはこの2つの数字の比率で、1以上なら余命延長の方が大きいという計算。仮説に仮説を重ねたモデルなのはご容赦。 pic.twitter.com/MfIJMm7a3F

2014-09-22 17:08:18
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、さっきのは「男性のPET検診」の部分だけ拡大してましたが、これが男性・女性、PET・PET/CTの4パターン並んでるわけです。先に書きましたが、PETとPET/CTでは被曝がだいぶ違いますし、男女では病気の種類や比率が違うので。 pic.twitter.com/Edstxdds3p

2014-09-22 17:08:49
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

となると、ある程度以上の年代からはやはり有益なのではないかという試算になるわけです。興味深いのは、病変検出感度が高いPET/CTより被曝の小さいPETの方が優秀という結果になっていること。 pic.twitter.com/Ysx90b4nYO

2014-09-22 17:09:34
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

もちろんこれはモデルにすぎないわけで、特に被曝の影響は「とりあえず慎重なラインでえいやっと決められたLNT仮説に基づくもの」で、過大評価されてる可能性も高いですから、実際はPET/CTだってもう少しはマシかもしれない。ただ、これ以上のことはこの検討では言えません。

2014-09-22 17:09:52
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

まぁ、とりあえず「有用性の証明」にはなりませんが、有用性を示唆する研究くらいには言っていいんじゃないかと。あと、私がずっと「被曝低減のため検診はPET専用機だけ使いましょう」って院長に食い下がったことに後ろ盾ができてちょっと嬉しい。 pic.twitter.com/6lZTjtvHjL

2014-09-22 17:10:50
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

あと、これもこないだのPET検診disで言及されてた話。2013年に米国核医学会から「PET/CTを検診に使うんじゃねぇ」という勧告が出されて話題になったんですね。ウチら的には「随分思い切ったなぁ」という感じでした。 pic.twitter.com/EiCa3BU9Ty

2014-09-22 17:11:28
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

その理由も出てて、「発見率が低い」「過剰診療の危険がある」の2点。これ、ちょっと事情を知ってる方なら「???」ってなると思うんですが、何がおかしいか分かりますでしょうか? pic.twitter.com/YNlSMSNDrK

2014-09-22 17:12:00
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

最初の「発見率が低い」は先に書いたので分かった方が多いと思います。単一の検査で1%はすごい発見率が高いんですよ。ない病気を見つけるわけにはいかないですから、検診での発見率が低くなるのは当たり前で、一体何と比較して低いと言ったのかなと。 pic.twitter.com/qoIsHRTqI7

2014-09-22 17:12:39
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

2つ目の過剰診療の危険性に関しては、PETは小さい病変が見える検査ではないので、大抵は見つかった時点で何らかの介入が必要になります。しかも質的評価もそこそこできる検査なので、むしろ過剰診療の危険は他の多くの検査より低いんじゃないかと。 pic.twitter.com/bPC8hAr5xQ

2014-09-22 17:13:07
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

そして何より、「発見率が低い」と言いながら「過剰診療の危険が」って、ちょっと矛盾してますよね。米国核医学会はPET検診に積極的ではないとはいえ、PETの特性は知ってるはずなので、ここにはすごい違和感がありました。で、この提言の背景を調べたわけです。

2014-09-22 17:13:52
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

すると、これはお上の主導で行われた「医療資源適正利用キャンペーン」の一環として、各学会に「なんか削減できそうなもの提示してよ」と依頼されて出されたものの1つだったわけです。私的保健機関も関わってて、医療費緊縮の狙いがあったのではとも。 pic.twitter.com/t9jYxvC0JX

2014-09-22 17:14:48
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ということで、飽くまでも米国の医療制度・財政が前提になったもので、実際に日本核医学会の人が「よーよー、あれって結局どうなんすか」って聞いて、「あれは米国内だけに向けた提言だから、他国に言うつもりは全然…」という言質をゲットしてきたとのこと。

2014-09-22 17:15:10
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

余談ですが、同じように出された提言の1つに、「高品質の大腸内視鏡検査で明らかな病変がなければ、以後10年間は一切の大腸癌検査は不要」というのもありました。これもなかなか攻めてるなぁと感心したものです。

2014-09-22 17:16:33
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

それはさておき、言質があろうとなかろうと、「1%しか見つからないものにPET/CTなんて高い検査使うな」っていうのは一理あります。もちろんPET検診は任意検診で、その高い金を出すのは受診者本人ですから、この辺は個々人の価値観ですけどね pic.twitter.com/SG8WeoFYN9

2014-09-22 17:17:30
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、検診としての有用性を考える上では、他にも雑多な要素が関与します。いい点は、検査による侵襲(身体ダメージ)や苦痛が少なく、高齢者でもわりと問題なく受けられること。悪い点は、とにかく高いことと、大勢にはできないこと。つまり任意検診専用 pic.twitter.com/ra09c1JPMm

2014-09-22 17:18:21
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ということで、まとめるとこんな感じ。PET検診は毀誉褒貶の激しいシロモノですが、何せ「居場所の分からん癌を探すこと」に特化した検査ですんで、まんべんなく探すには悪くないと思っています。もちろん、魔法の検査じゃないし高いですけど。 pic.twitter.com/XryOWg82MP

2014-09-22 17:19:12
拡大
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ああ、あと高い検査だから「病院が暴利を貪って」みたいによく言われますが、あれって検査薬も検査装置もメンテ費用も人的コストもかかりまくる検査なので、決して儲かる検査ではないですよ。実際、北海道には開設から1年持たずに閉鎖したPET検診施設があります。

2014-09-22 17:19:26