#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #5～#6

春魔解丼 @vespiking

強盗殺人を生業とする危険浮浪者や労働帰りのシリアルキラー艦娘の目を避けるように、暗く狭い路地を選ぶ。「オゴーッ！アアアーッ！」「アーイイ……イイーッ！」「ゴボッ、ガボッ」「アッアッ」聞き慣れた不夜城の嬌声が、今宵は一段と大きく聞こえる。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

少し開けた路地に入り、アフターマンは警戒する。救済の聖堂、マイヅル・カテドラルの巨大な影が、悪魔城めいてビルの谷間から見え隠れする。聖堂は黙して動かぬ。絶対の自然秩序を体現するかのように。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

雷光が閃き、薄暗い路地が照らされた。アフターマンは戦慄する。すぐ近くに、2隻の深海棲艦のシルエットが、照らし出された。ナムサン。アフターマンはすぐに踵を返し、ずるずると物陰へと身を隠そうとした。「アー……アー？」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

2隻のうち1隻が、のそりと身を起こした。もう1隻は動かない。身を起こした深海棲艦は、動かぬ深海棲艦に腰を置いたまま、ギョロリとこちらを向いた。戦艦だ。コワイ。「アー……何だよ……ジャマすんなよ……今イイ所なのに」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

砲撃音が轟き、遅れて戦艦が立ち上がる。気だるそうにずれた下着を履き直しながら、荒い息で獲物を確認した。「チッ……ンだよ、野郎かよ……」戦艦タ級はアフターマンを一瞥し、再び着衣を崩し、動かない深海棲艦にのしかかり、前後した。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

急激に遠のく意識の中で、アフターマンは見た。所々が腐りただれ、前後に揺さぶられる、重巡洋艦の亡骸がこちらを見つめているのを。死後3日程度だろうか。崩れかけてなお美しい瞳が、ぐらぐらと揺れていた。「フーッ、アーイイ……実際上玉な……あと何日もつかな……」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

一体、どこでこうなったのか。スガモで、そしてマイヅルで、王になった気分だった。ニンジャなのだ。ニンジャになって、食物連鎖の底辺を脱した。そう思っていた。しかし、ここは頂点ではなかった。ニンジャになって、ブザマに死んだ。そうか、最初から何も、変わっていなかったのか。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

ニンジャになっても、結局何も変わらなかった。食物連鎖の頂点は遥かに高く、自分は常に喰われる側だった。ああ、なんとブザマな事か。降りしきる重金属酸性雨を浴び、前後される重巡洋艦の死体に睨まれながら、アフターマンはしめやかに爆発四散した。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

マイヅル・カテドラルの向こう側は、工業用エアロックで汚染大気を隔絶し、澄んだ夜空が広がっている。ドクロめいた満月が呟いた。インガオホー、と。幻覚だ。あの満月は、カテドラルの望むオヒガンの街だけを、慈悲深く照らしているのだから。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】終わり。 #KZNPLN