「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」 #8
(前回のあらすじ:ギンイチが発した「ニンジャ」という言葉をニンジャ聴力で聴き取ったニンジャスレイヤーは、バー「ヨタモノ」に突入。虐殺を繰り広げていた超嗜虐被虐ニンジャ・アゴニィの異形カラテを破り、スゴイ=スリケンによって、異常なニンジャ回復力を持つアゴニィの体をハリツケにする。
2010-11-11 18:21:06ギンイチがヨタモノに戻ると、既に決着はつかんとしていた。タタミ針を刺されたオブジェ死体にまぎれ、床に倒れたイチジクの無事を助け起こしたギンイチ。二人の無害なハイスクール学生は、ニンジャの裁きを目の当たりにする……)
2010-11-11 18:23:39「アイ……アイエエエエエエ!」先程までの恍惚とうってかわり、アゴニィは必死でハリツケを脱しようともがいていた。だが、深々と両手足首を貫通し壁に食い込んだスリケンはびくともしなかった。ニンジャスレイヤーはそのさまを無慈悲に嘲笑う。
2010-11-11 18:28:24「イタミニンジャ・クランのニンジャは苦痛をニンジャ回復力に換えるジツを持っておる。オヌシを見て思い出したわ。首だけになりながら、なおもワシから逃れんとしたイタミニンジャ・クランのグレーターニンジャをな」ニンジャスレイヤーはゆっくりと近づいた。
2010-11-11 18:33:49「オヌシのようなヒヨッコに、そこまでのジツはあろうものか?まあよい……」「アイエエエエエエ!」ニンジャスレイヤーはアゴニィの首の後ろへ手を伸ばす。人差し指と中指が、ナムアミダブツ!
2010-11-11 18:40:41「イヤーッ!」血濡れの指が頸部から引き抜かれると、暴れていたアゴニィの四肢が力を失い、ぐったりと垂れた。「もはや痛みは感じまい。なに、頭を砕いてしまえばどのみち終わりだが、それではつまらぬ」ニンジャスレイヤーはハリツケとなったアゴニィの足元に屈みこむ。手にしているのは火打石だ!
2010-11-11 18:53:37火打石を打ち合わせると、アゴニィの爪先に小さな火が灯った。徐々にそれは、ひどい悪臭とともにアゴニィのラバーニンジャ装束を侵食し、燃え広がる。「アーッ!グワーッ!」ナ、ナムアミダブツ!なんたる残虐!それはさながらニンジャ松明である!
2010-11-11 18:57:50ニンジャスレイヤーは狂ったように哄笑する!「薪をくべてやろう!ほれ!」手近のブッダヘアー・パンクスの棒立ちオブジェ死体をつかみ、ハリツケ・アゴニィの足元に投げ込んだ!「アーッ!グワーッ!」
2010-11-11 19:00:59「何を恐れるか!苦しみが欲しいのであろうが? 苦痛は欲しくとも、死は恐ろしいてか!なんたるハンパな覚悟!グッハハハハハ!」狂ったように笑いながら、手近のシシマル・パンクスの棒立ちオブジェ死体をつかみ、ハリツケ・アゴニィの足元に投げ込んだ!炎が燃え盛る!「アーッ!グワーッ!」
2010-11-11 19:04:52ナムアミダブツ!マッポーの地獄の門が今ここに開いた!体を反らせて笑い狂うニンジャスレイヤーの瞳は今、点のようにすぼまり、炎よりもまぶしく赤く光り輝いている。おお、読者諸氏はご存知あろうか、まさにそれはフジキドの自我をナラク・ニンジャが掌握したしるしである!
2010-11-11 19:35:28「やめてください死にたくない」息も絶え絶えのアゴニィが炎の中で呟く。ニンジャスレイヤーは哄笑した。「ブザマ!己は殺したいだけ殺すが、殺されるはごめんとな!そうよのう、そうよのう。今のオヌシはまさにインガオホー、観念してハイクを詠め!グッハハハハハ!」「グワーッ!グワーッ!」
2010-11-11 19:41:18まさにその瞬間。遠く離れたとあるドージョー、力強く神秘的なカタカナで「ドラゴン」と刺繍された掛け軸の下、龍の刺繍を入れたニンジャ装束を着、積み重ねた座布団に正座して瞑想にふけっていた老人が、カッと目を開いた。
2010-11-11 20:03:46「お爺様?」近くで同様に正座していた美しい娘が、老人を振り仰いだ。老人は唸った。「なんたる邪悪!?」娘は不安気な視線を送った。娘のバストは豊満である。「邪悪?」「ユカノ!牛車を用意せい!」「こんな時間にでございますか」老人は厳しく頷いた。そして呟く。「これは一体いかなるシルシか」
2010-11-11 20:11:38人型に燃え上がる炎、その熱と煙でぼんやりとなりながら、ギンイチはなんとかイチジクの体を支えようとした。二人は眼前の殺戮の光景に視線をしばられ、ほとんど魅入っていた。だが、このままでは炎にまかれ、一酸化炭素中毒で死に至る事は確実だ。ギンイチは己を奮い立たせた。
2010-11-11 20:18:37「行こう、イチジク=サン。ここから出なきゃ……」衰弱したイチジクに肩を貸し、ゆっくり立ち上がる。フロアの奥で、赤黒のニンジャは手近のオブジェ死体をつかんでは投げ、薪のようにくべている。後ずさったギンイチを、振り向いたニンジャの赤い眼光が、捉えた。
2010-11-11 20:26:21ニンジャは哄笑した。「生きた薪もあったか!これはチョージョー!」言うが早いか、一息で二人の眼前に跳び来たった。その手がイチジクのゲイシャパンク・ガーゼキモノシャツの襟元をつかむ!「サツバツ!」ギンイチは弾かれ、床に尻餅をついた。まるで相手にせず、というていである。
2010-11-11 20:54:08「ア、アイエエエ!」衰弱したイチジクがもがき、叫ぶ。ニンジャはそれを容赦なく引きずってゆく。「イ、イチジク=サン」ギンイチは震えた。
2010-11-11 20:55:22「イチジク=サン!」ギンイチは叫んだ。そのとき彼の心を満たしたのは、やみくもな激情、理不尽に対する悲痛な怒りだった。「イチジク=サン!」ギンイチは力を振り絞り、立ち上がった。「アアー!」そして口をついて出る、おぼえたてのシュプレヒコール!「アンタイセイ!アンタイセイ!」
2010-11-11 20:59:00ギンイチはニンジャの背中めがけて、拳を振り上げ、飛びかかった。「アンタイセーイ!」ニンジャはよどみなく、振り向きながらの回し蹴りを繰り出した。「イヤーッ!」
2010-11-11 21:00:47回し蹴りは正確にギンイチの首筋を目掛けていた。時間が止まったように思えた。とりとめのない思考がギンイチのニューロンを駆け巡った。
2010-11-11 21:06:27どうしてこんな事になったのだろう。身の丈以上の望みを持ったからだろうか。反射神経ストーム。空虚な電子の王様。喝采を送るが名も知らぬわずかなギャラリー。ママの叱責。泣きながら嘔吐するパパ。センタ試験。
2010-11-11 21:07:45