"Towards a theory of development"まとめ

発生生物学とその哲学の論文集"Towards a theory of development" (Minelli & Pradeu 2014)のまとめ。
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Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

この論考、分析や主張の内容そのものはそれほど新しいものではないかも知れない(例えばGRNと総合説が対立してきた、というのは発生と進化が対立してきた、というよくある話を改変しただけのものにも思える)。だが歴史を(簡潔ではあるが)丁寧に追っているので地に足がしっかり着いてる感じ。

2014-08-17 01:42:28
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

EvoDevoの歴史とか関心ある人にとってもレビューとしていいかも知れない。 Morangeの研究はやっぱり好きだなー(大して数読んでるわけでもないんだけど)。

2014-08-17 01:47:37
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

@RioTsusumi 主流派の進化生物学者が支持する、突然変異と自然選択に基づく進化理論を著者は「一般的で抽象的」であると言っています。これは具体的な構造遺伝子や調節遺伝子の間の関係を詳細に記述し続けているGRNと対比されてのことです。 …という説明で大丈夫でしょうか?

2014-08-17 15:36:13
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

@RioTsusumi そういうことになります、私の書き方が不十分でした。「GRNとその変化の記述」をして彼は進化のもう一つの説明図式と呼んでいます。例えばホメオボックス遺伝子の進化に関する研究などが言及されています。

2014-08-17 16:01:34
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

@RioTsusumi あ、「GRNのこの関係性がこう変わればこう進化するはずと論じる」というのとは違いますね。飽くまで過去の出来事が議論の主たる対象です。

2014-08-17 16:04:55
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

"Developmental disparity" (Minelli)読了。Towards a theory of developmentの第15章。

2014-08-26 08:58:43
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

この論考において著者は、伝統的で素朴な発生概念を批判し、より包括的な発生生物学の枠組みを打ち立てることを提案する。

2014-08-26 09:13:20
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

論点は大まかに6つ。①適切な個体概念は扱う事例により異なる、②単細胞生物の成長も発生とみなすべきである、③個体の非適応的な変化も発生とみなすべきである、④発生は不可逆な過程ではない、⑤発生と代謝の境界は普通思われているほど明確ではない、⑥発生は形態の変化に限られるべきではない。

2014-08-26 09:23:17
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

著者の主張のほとんどは恐らくそれほど目新しいものではない。だがその点は著者自身も認めていて、この論文の意義はむしろ、様々な形での発生概念の拡張をまとめ、そのそれぞれについて多くの生物学上の事例を参照して分析を行っているところにある。

2014-08-26 09:33:22
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

実際、取り上げられている生物群は多岐に渡るし、参考文献の数も多い。論じ方としてはGilbert & EpelのEcological developmental biologyと似ているかも知れない(ただの印象)。ただしそちらよりも論理的な概念分析の比重が高いように思う。

2014-08-26 10:00:58
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

"Formalizing theories of development: A fufue on the orderliness of change" (Gilbert & Bard)読了。Towards a theory of developmentの第8章。

2014-09-16 00:28:14
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

本論文で著者らが支持するのは、有向グラフによって発生メカニズムを表現する方法である。有向グラフのノードには遺伝子・蛋白質・ネットワーク・細胞・組織などの対象が、エッジには「活性化する」「抑制する」「分泌する」などの作用が当てはまりうる。

2014-09-18 00:57:20
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

発生の過程をこのように表現することにはいくつかの利点があると著者らは言う:視覚的であること、web上の様々な関連するデータとリンクさせられること、情報の欠落を発見する助けになること、発生においては「関係」が基礎的な要素であることを示してくれること、など。

2014-09-18 01:05:09
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

まとめるとこれくらいしか書くことがないのだが、突っ込みたいところはいくつかある。

2014-09-18 01:24:12
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

一番気になるのは、この論文で支持されている表現法においては何がノード足りうる対象なのか、何がエッジ足りうる過程なのかについてほとんど制約が課されていないという点。言い換えると発生現象に現れるほとんどあらゆる名詞がノードに、動詞がエッジになりうるように思われる。

2014-09-18 01:32:08
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

この自由さ、制約のなさは発生現象の多様性を多様なまま扱う上で一つの長所にはなるかも知れない。だがその分、多様な現象を少数の原則の下で一般化するという面においては劣ることになるのではないか。

2014-09-18 01:46:37
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

もっとも、著者らは自分たちの図式に「直感的で明快な理解を与えてくれる」ことを求めており、上記のような一般化をそもそも目指していない可能性が大きいのだが。個別の発生過程それぞれについて分かりやすい図式を提供できればそれでよい、というのが著者らのスタンスなのであればこれでいいのかも。

2014-09-18 01:54:52
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

また別の素朴な突っ込みとして、上に紹介したこのモデルの利点(「視覚的である」云々)は別にこのモデルに特有のものではないだろう、というのもある。例えばシステム生物学の回路図にも上記の利点は全て当てはまるように思われるのだがその辺どうなのか。

2014-09-18 02:00:34
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

あと、ラスト約1ページ分を使って発生を音楽の演奏に例えてるんだけど、この部分いらなくないか。発生を演奏に例えることで理解が深まった気は(少なくとも今のところ私は)しないし、この話で論文を締められても結局何が言いたいのかよく分からない。

2014-09-18 02:07:22
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

Towards a theory of developmentの第6章、"Physico-genetics of morphogenesis: The hybrid nature of developmental mechanisms" (Newman)読了。

2014-09-21 23:15:15
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

形態形成メカニズムの初期進化の可能な道筋を、物質の「一般的な」(原語はgeneric。非生物にも見られる、というくらいの意味。他の定訳あるかも)性質に注目して論じた論文。ここでいう一般的(generic)な性質の例としては、粘性・弾性・拡散性などがある。

2014-09-21 23:26:50
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

その起源においては単純な過程だったであろう形態形成は、いかにしてより複雑で安定な、生物的な発生現象へと至ったのか。Newmanはこの変化を三つの過程に分けて説明する。

2014-09-21 23:40:53
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

(1)細胞集団のgenericな/non-genericな振る舞いによる形態形成。原始的な細胞の集団が持つ性質により様々な形態が形成される。Genericな性質として、例えば分子の反応拡散によるパターン形成などがある。…

2014-09-21 23:51:18
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

…対してnon-genericな性質として、細胞膜の接着性と細胞骨格構造の違いに依存した、自発的な層構造の形成が挙げられている。

2014-09-21 23:53:59
Yoshinari Yoshida @YoshinariYsd

(2)「卵」という進化的新奇性の出現。卵は形態形成より前の時点において分子の濃度差などからなるパターンを生じさせることにより、(1)で述べたような様々な過程が生じるための初期条件を与える。これにより形態形成はより安定的になされるようになる。

2014-09-22 00:03:42
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