- kaizer_6525
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そんな現実鎮守府でも、鈴谷みたいな子は案外話し掛けてくれたりして。よく秘書艦を頼むようになる。でもいつの間にやら鈴谷と提督の間を変に噂されて……
2014-10-18 02:22:59いつもの食堂。食べ終わった後、二人で食器を下げると誰ともない声が後ろから。「そんなに好きならキスしろよ!そら、キース!キース!」
2014-10-18 02:25:07戸惑う提督。唇を噛む鈴谷。コールは止まない。終わらせるためにはどうすればいいのか。ふと、頭を過るのは本当にキスをすれば、なんてこと。幸い彼女にはそこまで嫌われていないようだし。そう思い、肩へと手を伸ばした
2014-10-18 02:27:30後ろからはもう飽きたのか別のことをし始める艦娘たち。力なくただそこに膝を突く男は涙もなく、一人執務室へと戻るのだった。
2014-10-18 02:32:35口ごもる彼女に、男は言い放つ。「もういいんだ。私はここをやめる。それで満足なんだろ? 次はイケメンが来るといいな」渇いた笑いが添えられたそれに、鈴谷は俯いた。
2014-10-18 02:38:05「待ってよ!」執務室から、彼女を無理やり追い出す。扉を閉める直前に彼は小さく零した。「これ以上、楽しかった時の鈴谷を壊さないでくれ……」なにも言えず、なにもできず。扉の内と外に別れた男女は、ただ自分を悔やむ。
2014-10-18 02:43:10吐き出せない想いに、気が狂いそうだった。少しだけ、好きになれたかもしれない男を跳ね除けたのだから、当然の罰だ。それを受け入れて、自身を罰しながら生きていくしかない。
2014-10-18 02:46:43キリキリと締め上げられるような胸の痛みに耐え兼ねそうになるが、拳を握って堪えた。なにもかも、自分が悪い。伝えられない、自分が。
2014-10-18 02:48:07光明なんてない。先に待つ暗黒の海に、気分が悪くなる。たとえ格好良くなくても、話を聞いてくれたのに。笑ってくれたのに。膝を抱えて、鈴谷は声を殺して泣いた。
2014-10-18 02:49:58書類をまとめあげ、引き継ぎの準備を済ませる。転属願いはもう書き終えた。叶わなかった場合は、辞めるしかない。それでも構わなかった。しばらく、実家に帰るのも悪くない。
2014-10-18 02:51:53提督が不慣れな紫煙を噎せながら吸い込み、考える。思い返せば、ずっと辛かった気がした。漕ぎ出したばかりの船だというのに、荒波に揉まれ転覆しそうなことは何度もあって。いつから、それに慣れていたんだろう。
2014-10-18 02:54:12昔もらった苦手な煙草をわざと吸ってみたが、気分は余計悪くなる。落ち着かないし、なんだか部屋が広い。いつもならそこに、碧い髪の少女がいるのに。
2014-10-18 02:56:07仕舞っただけではまだダメだと、ゴミ箱に煙草の箱と合わせて捨てる。それでも、彼女との小さな幸せは消えてくれなかった。誰も合わせてくれない目線を合わせてくれたり、一緒に飯を食ってくれたり。
2014-10-18 03:00:01酒でも呷って、忘れるしかない。万能だ、酒は。嫌なことを忘れられる。それがいつか跳ね返ってくるかも知れないが、今忘れられればそれでいい。
2014-10-18 03:01:56