【捏造未来】成人済メルボルン同棲ルク翔【事実婚】
髪を切ろうと思うんだ。ルークがそう言ったあの日は驚いたな。一気にばっさり切るとか言い出すもんだから俺は勿体ないと感じたけど、気持ちの切り替えというか、心機一転というか、そういう意気込みでやりたいんだって。そうしたらこの髪留めも必要ないな。愛用してた青いそれを触りながら言う。
2014-11-20 22:45:22「じゃあ今度は俺が髪伸ばすよ。だからそれ頂戴?」そう言ったらルークの奴きょとんとしてた。そんなにおかしいのか、って少し怒ったらアイツ笑って、君の髪はクセがありそうだから、なんて茶化しやがった。
2014-11-20 22:50:02お揃いのピアスをつけたいな。そう言ったのは街でルークのとよく似たものを見つけたから。ペアルックじゃないけど、一緒にいる証を指輪以外に増やしたくて、ルークに言ってみた。穴開けるのが怖くて今まで乗り気じゃなかったけど、あのピアスを見つけたら気持ちが変わった。
2014-11-20 22:53:02数日後にはあのピアスとピアッサーを買ってきたまでは良かったけど、やっぱり怖すぎて持ったまま硬直していた。そしたらルークの奴、いきなりピアッサーを取り上げて断りもなしにパチン。終わったぞ、ってすかした顔で言いやがるからちょっとテンパって怒った気がする。
2014-11-20 22:56:39…思い返せば返すほど、この2年間の思い出は人生で一番色濃いものだと感じた。そして何より、一番幸せだった。あんなに幸せだったあの日々は確かに現実で、そしてこれから無に返るんだと、そう思うと持ってたマグカップが震えた。
2014-11-20 23:00:09もう髪留めもピアスも、あの指輪も外してベッドサイドに置いている。彼との繋がり。繋がっているという証たち。今はもう繋がってない。繋がる必要もない。繋がりはあの日、切れてしまった。キスの現場を見てしまったあの時。あれが終焉だったんだ。
2014-11-20 23:03:58随分と感傷に浸りすぎてた。時計を見れば針は夜中を指し、持ってたマグカップも大分温い。明日だって仕事だから、今日の荷造りはここまでにしよう。そう思った矢先、何やら外が騒がしいし、車のエンジン音が聞こえた。こんな時間に珍しい。
2014-11-20 23:07:28がたがたと音がする騒がしさがはやがて玄関先へ。そして突然ガチャガチャとドアノブが声を上げる。こんな夜更けに訪問なんてする知人は俺も彼もいない。もしかして強盗?恐る恐る立ち上がり、俺はリビングの向こう、玄関を見つめた。
2014-11-20 23:11:01予想外すぎる人物とあまりにも必死な姿に茫然としてしまった。どうして。ロスへの出張はあと2、3週間はかかるはずなのに。どうしてメルボルンに、どうしてこの家に。
2014-11-20 23:19:06ルークは相当息を乱していて、相当急いだのか動いたのか肩が上下していた。それでも俺の姿をまっすぐ見つめて、顔をくしゃりと歪めてキャリーをその場に投げ出しながら俺に駆け寄った。そのまま勢いよく、力いっぱい抱きしめられた。
2014-11-20 23:23:14突然すぎて無抵抗のまま腕の中にすっぽり収められてしまい身動きが取れない。しかも困惑する俺をお構いなしに頭上から翔悟、翔悟とうわ言のように何度も繰り返す。久しぶりに聞くルークの声。ルークの腕、ルークの体温。俺の髪に頬を寄せながら、確認するように強く強く抱きしめてくる。
2014-11-20 23:27:28切ない声音でルークが俺の名を呼ぶ。どうして。なんで。疑問ばかり浮かんでくるのと同時に、俺の心はざわざわと浮つく。大好きなルークを久しぶりに感じて涙が出そうになる。苦しい。苦しいよルーク。
2014-11-20 23:30:26腕が無自覚にルークに抱きつこうとしている。けれど俺はそれをどうにか理性で押さえつけて、手を引っ込めた。引っ込めた手はそのままルークの胸に当て体を押し返す。近寄るな。近寄らないでくれ。
2014-11-20 23:33:10「……色々突っ込みたい事はあるけどさ。離せよ」「何故だ。離す理由などどこにもない。離したくなどない」「俺達はもう終わったんだよ!別れたんだ!恋人でもなんでもないんだ!離れろ!離れろってんだろ!」
2014-11-20 23:35:11やがて暴れるように離れようともがいたけど、ルークの腕はしっかり腰に回されていて離れない。それどころか再び強く胸の中に押さえこまれ、左手をがしりと掴まれた。
2014-11-20 23:37:57「…どうして指輪を外してしまったんだ」「っだから俺達は別れたんだよ!もう俺が此処にいる理由もない!ルークはルークが望んだ通り彼女と幸せになればいいんだ!!俺がいたら邪魔になるから!俺がいたらルークは幸せになれないから!!」
2014-11-20 23:40:59「俺には!結局ルークを幸せにすることなんて出来なかったんだよ!男だからっ!ルークが思ってる未来を作ってやれない!ルークのほしいものを与えられない!だから、だから……もう離してくれよ…っ」
2014-11-20 23:43:13最後の辺りはもう堪えきれずに泣き出してた。抵抗もやめて、俯いてぼろぼろ涙を零してた。嗚呼そうだよ。踏ん切りがついてないのは俺の方だ。強がりを言って平気なフリしてるけど辛いのは俺なんだ。分かってる。分かってる。
2014-11-20 23:45:56声を漏らしながら泣く俺を、ルークは再度抱きしめて背中を優しく撫でてくれた。俺を宥めるいつもの方法。ゆっくりゆっくり、子供をあやすような優しい手つき。翔悟、と呼ぶ声。ルークの落ち着いた声に、涙は逆に溢れるばかりだ。
2014-11-20 23:50:03「翔悟。私の話をどうか落ち着いて聞いてほしい。彼女とは本当に何の関係もないしそういう感情も抱いてない。キスをされたのは私の不注意だが彼女の勝手な行動だったんだ。彼女には君がいること、君しか愛せないことをちゃんと説明して身を引いてもらった。正直に説明したよ」
2014-11-20 23:53:40「あの日、君に手を出してしまったことは本当にすまないと思っている。あの行動は君自身を深く傷つけてしまった。君はずっとこの事で悩んでいたのに、感情任せになってしまった。ちゃんと根気良く君に説明しなかった事も私の責任だ」
2014-11-20 23:58:42「それでもよく聞いてくれ翔悟。私は今までも、そしてこれからも君だけしか愛せないし愛さない。私の人生において君という存在は必要不可欠なんだ。例え家庭を持つことができたとしても、そこに君が居なければ何の意味もないんだ。どうか信じてほしい。そして私から離れないでくれ」
2014-11-21 00:02:41