【捏造未来】成人済メルボルン同棲ルク翔【事実婚】
はっと我に帰り話そうとしたが通話は即座に切られてしまった。慌てて再度電話をかけたが繋がらない。二度、三度、四度。繋がらない。繋がらない!
2014-11-19 22:39:40彼は勘違いをしている!あの様子、あの言葉。翔悟は、きっと彼女に好意的だと思っている。翔悟は感情的になると周りの言葉が入らなくなる時があり、今回も恐らく同様の状態だろう。尚且つ彼は自分の感情より他者の意志を優先する節もある。空回りが空回りを招いている。なんということだ!
2014-11-19 22:45:14最悪なことにそのまま電話は叶わなかった。しかも時間をおいて再度かけたら着信拒否されていて完全に遮断された。メールを送信しても返信はないし自宅の電話にも出てもらえない。本当なら今すぐ帰国して直接話したいというのに仕事は一番の激務期間になっていて僅かな時間を見つけるのがやっとだった。
2014-11-19 22:52:25何度も連絡するも音信不通の日々が続いた。仕事とプライベートの板ばさみで心身共に疲れ果ててきた頃。個人携帯に一本の着信があった。画面を見ると、表示されていたのはアンナの名前だった。
2014-11-19 22:55:25できるだけ疲れている事を感付かれないように咳払いを一つしてから電話に出ると、アンナのよく通る声が聞こえた。お疲れ様と声をかけてくれる彼女の声は昔と変わらない。
2014-11-19 22:58:13『今忙しい?少し話がしたいんだけれど…』「大丈夫です。それで用件は?」『…単刀直入に言うわね。翔悟くんの事なんだけど』 翔悟の名を聞いた瞬間、肝が冷えたような悪寒がした。疲れからきていた睡魔もその言葉で一瞬にして消え去り、声が震えないように深呼吸を一度だけした。
2014-11-19 23:02:38「…はい。翔悟に何かありましたか」『明らかに異変が起きているわ。本人は隠していつも通りのフリしてるみたいだけど。目に見えて落ち込んで塞ぎ込んでるし、研究にもあまり身が入ってないみたい。顔色も良くないし、それに、』
2014-11-19 23:06:45『一昨日からいつも付けてた貴方の髪留めをつけてこなくなって、昨日はさらにピアスを外してた。今日に至っては左手の指輪が見当たらないの。…貴方達、喧嘩でもした?』
2014-11-19 23:09:49…最早何も言えなかった。事態は予想以上に悪化している。これ以上は後戻りができない寸前まで来ている。翔悟の孕んだ誤解は、修復不可能の域まで差し掛かっている!
2014-11-19 23:13:06アンナから電話を貰ってすぐ、ロス研究所所長である父に無理を言って時間を作って貰った。鬼気迫る私に何かを察してくれたのだろう、父はすぐに時間を割いてくれた。時は一分一秒を争うので本当に有難かった。感謝をしながら、私は所長室の椅子に座る父にまず詫びた。
2014-11-19 23:17:58「この立場にありながら仕事に私情を挟む事、そして関係者各位に御迷惑をお掛けすることを承知の上お願いが御座います。処罰なら追って何なりと受けます。ですからどうか、承認願いたいことがあるのです」
2014-11-19 23:21:25【side:S's one day】 んん、と大きく伸びをしたら背骨がボキボキと鳴った。軽く首を回して、肩もならす。ちょっと休憩しよう。そう思ってダンボールだらけの寝室を出てキッチンに向かった。
2014-11-20 22:18:43お湯を沸かしてインスタントコーヒーを適当に作る。ミルクと砂糖を少し入れてほっと一息、いや溜息をついた。砂糖の数はここ最近減ってない。甘党の誰かさんが出張してるからそんなに減らないからだ。
2014-11-20 22:20:45コーヒーを一口飲んで、また溜息。キッチンからリビングを見渡せばここにもダンボールがちらほら。仕事を終えてくたくたになった後の引越し作業は全然進まなくて、自分しかいないのをいいことに今は家中散らかり放題だ。
2014-11-20 22:23:20あれからさらに数日経った。思い出す度に辛くなるから、溜息を何回したかは数えない事にした。今頃ルークはあの秘書の人と遠いロスの地、俺のいない遠い場所。はぁ、とまた溜息を零して揺れるコーヒーの黒い池を見つめる。
2014-11-20 22:26:53このメルボルンの俺達の、正しくはルークの家はそこそこ広い。世界を救った後研究者となる為帰国した彼が買ったのだと言っていた。あの若さでこの家を買ったというのだから当時の俺は驚いたもんだ。
2014-11-20 22:29:01俺がこの家に転がり込んだのは2年前。高校を卒業して、大学に進学して、卒業して、その後メルボルンで大学院と研究者見習いをする事が決まった時にルークが招いてくれたんだ。それが2年前。16歳の頃から付き合ってきたルークは、俺が引っ越してきた当日凄く喜んでたのはよく覚えてる。
2014-11-20 22:34:09その日に送ってくれたのがあの指輪。「私はずっとこの日を待ち焦がれていたよ。一緒に暮らしていく日を、こうして生涯を共にしたいと約束できる日を。翔悟、これを受け取ってほしい。そして私の傍に居てくれたら、私はこれ以上の幸せなどない」
2014-11-20 22:37:50あの日は恥ずかしいけど泣いたっけ。俺も嬉しくて仕方なかったんだ。ずっとずぅっと焦がれていたのは俺だけじゃないんだなって、一緒に居られるんだなってその時やっと実感したから。嬉しくて嬉しくて、次の日目がすっげえ腫れてたなぁ。
2014-11-20 22:40:42