【突然の】枇杷先生の止血凝固講義【真面目】

枇杷先生の止血と凝固の講義 Hemostasis and Coagulation presented by Dr.Biwa
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枇杷 @loquat_priest

プラスミンの働きを直接的に抑える薬がトラネキサム酸(トランサミン)。止血薬と呼ばれるけど、あくまで「線溶を抑える薬」なので、できた血栓が壊れにくいようにする、というだけ。しかし最近になって、消化管出血例の予後を改善するなどエビデンスも出てきてます。凝固は理屈より複雑かも。

2014-12-20 23:51:07
枇杷 @loquat_priest

フィブリンの分解をしゃべって終わりにしますけど、その前に最後の役者に登場してもらいます。

2014-12-20 23:58:49
枇杷 @loquat_priest

他が一通り(名前だけでも)登場したのに一度も出てこなかった凝固因子、FXIII。こいつの働きは独特で、重合したフィブリン同士を化学的にくっつけ、血餅をさらに強固なものにする、というもの。

2014-12-21 00:02:01
枇杷 @loquat_priest

フィブリンはD-E-Dという3領域のつながったタンパク質で(詳細は省略)、Ca2+の存在下で勝手に重合してポリマーになりますが、分子同士は結合していません。FXIIIは、フィブリンポリマー中の異なる分子のDとDを化学的に架橋し、完全に不溶性にして安定化させます。

2014-12-21 00:07:13
枇杷 @loquat_priest

この独特の作用のため、FXIIIの活性は、PT, APTTなど他のどの凝固検査にも異常として現れず、単独で測定しないとわかりません。原因不明の出血傾向のうち、FXIIIの活性低下が相当数報告されていて、詳細の解明が望まれます。togetter.com/li/740509

2014-12-21 00:10:05
枇杷 @loquat_priest

なぜこんな話をしたかというと、フィブリンの分解は、このFXIIIが架橋する以外のところで起こるからです。フィブリンが分解されるといろいろな種類の断片ができますが、そのすべてを測ったものをFDP(フィブリン分解産物)、架橋されたD-Dを含むものをD-ダイマーと呼びます。

2014-12-21 00:13:28
枇杷 @loquat_priest

FDPは「すべてのフィブリンの断片」、D-ダイマーは「FXIIIが丈夫にするところまでいったフィブリンの断片」ということ。FDPがD-ダイマーに比べてすごく高い場合、線溶まで調子が狂うほど凝固の異常が激しい、ということができる。

2014-12-21 00:18:26
枇杷 @loquat_priest

またFDPもD-ダイマーも、線溶が亢進していることの証拠にはなりますが、上がっていないからと言って凝固が活性化していないことの証拠には(理屈では)なりません。高ければDICの診断がより確実ですが、低いからといってDICではないとは言えないんですね。

2014-12-21 00:24:25
枇杷 @loquat_priest

途中でやめときゃよかったかと思うくらい長くなりましたが、このへんで終わりにします。凝固にも興味のある者ですが、血栓止血学のプロというわけじゃありませんので、専門家からみて間違ったところがあればご指摘ください。以上連ツイ終了。

2014-12-21 00:29:39