不知火に落ち度はない お正月スペシャル2015 その2

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yamoto @yamoto

いろいろ試した。 艦娘以外の兵装を使って、足止めする方法を考えたり。 他基地との連携を使って、資材や艦娘の配備を整えたり。 そうしていくうちに定石と言える戦法が出来上がり、今では少人数でも対処可能になった。 その流れ自体は必要だったのかもしれない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 01:53:12
yamoto @yamoto

あと、司令官の無能以外にも、明暗を分けた要素はいくつかある。 幸いな事に、俺の手元には長門が居た。 不幸な事に、ここに戦艦は居なかった。 とかな。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 01:56:22
yamoto @yamoto

そして、龍田が休んでいる間に天龍の反応は消えた。 消耗状態で、破損した龍田の代わりに出撃し。 深海棲艦の群の中央で。 轟沈だった。 天龍は艤装もろともに海上から消え、二度とよみがえることはない。 そして今もまだ──天龍の艤装は発見されていない。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:01:09
yamoto @yamoto

『新しい』天龍がどこにも居ない理由はそれだ。 取り付けるべき艤装が存在しないのだから。 もし、新しく天龍になれる奴がいたら、龍田はここまで進まなかったのかもしれない。 姉の装備をした、別人の誰かの姿さえあれば。 龍田の後をついて回りながらそう思った。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:04:12
yamoto @yamoto

まだ、姉は海にいる。 それを盲信し進んだのだろう。 結果今じゃアウターヘブンの司令官。 それだけの力を得てもまだ、こいつは天龍を見つけられてないのだ。 あん時無理矢理にでもこっちに引き止めておくべきだった、とか、後悔はいくつもある。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:07:33
yamoto @yamoto

そして、龍田はドアを開ける。 そこは作戦室。中央に黒く汚れた痕がある。 あれがなにかって? 司令官だったもの。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:08:50
yamoto @yamoto

「そういえば兵頭提督はー あの時、私のリミット解除してくれてたのよねー」 「おう。俺の後悔のウチ一つだ」 当時、艦娘と艤装にはセキュリティがかけられていた。 例えば、同胞には攻撃できないとか、司令官を攻撃できないとか。 今は艤装にだけかけられている。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:12:15
yamoto @yamoto

逃亡阻止もその中に入っていた。たちの悪いことに、艦娘本体にな。 つまり、ヤバいと思った鎮守府からの逃亡すら、できないのだ。 今は艤装だけ置いてけば、どうにでもなる。 当時多発していた問題のあれそれってやつだな。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:15:53
yamoto @yamoto

俺の後悔その一。 艤装と艦娘のセキュリティをアレコレして、機能停止方法を知ったのは、天龍が沈んだ後だった。 後悔その二。 逃亡阻止機能だけじゃなく、全セキュリティを解除しちまったこと。 後悔その三。 軍部に『海ぼうず』側から介入しなかったこと。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:19:30
yamoto @yamoto

指折り数えても当時の後悔が頭を覗かせてくる。 さらに、もちょいスマートなやり方もあった。 その無能な司令官を、俺が穏便な手段で締め出しゃ、何も問題は起きなかったんだ。 そう──帰投した龍田が、司令官を殺傷するなんてことはな。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:22:28
yamoto @yamoto

「思い出してるんですかー? 兵頭提督ー」 「……嫌でも思い出すわ。んなもん」 その後、心神喪失状態にあった龍田を、上は処分の方向に動いた。 鉄格子の向こうの龍田は、見えない天龍と会話してた。 全部が悪い方にばっか転がった。 そして、俺は。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:25:05
yamoto @yamoto

俺は、手荒な方法に出た。 当時の人権団体に詳細情報をリークしたり、海ぼうず側からの圧力をかけたり。 あと、長門の『後援会』に出てきてもらったりな。 それは多分、龍田のためじゃなかったんだろう。 天龍が── #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:28:11
yamoto @yamoto

天龍が見せた、背中への後ろめたさのほうがきっと、でかかったはずだ。 ああ、もちろん大混乱だったとも。 上へ下への大騒ぎ。 そのドサクサで龍田は釈放、その後行方知れずになった。 手を回して海外に行くように仕向けたりとかな。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:30:03
yamoto @yamoto

今思い出しても、悪手極まる。 後手後手に回って、なんとか状況を転がそうとして。 肝心のところは一切動かせず。 様々なものを浪費し。 一番救いたかったものを。 何一つ、救い上げることは。 できなかったのである。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:40:30
yamoto @yamoto

「そんな顔をしないで、兵頭提督ー?」 「どんな顔してりゃいいんだよ」 「いつものバカ面で笑ってー?」 「さりげに酷いなそれ」 くるり回り、血で黒ずんだ床の上に龍田が、立つ。 儚げな笑顔を浮かべて。 それは──昔の龍田の笑顔で。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:46:25
yamoto @yamoto

「疲れちゃったのよねー」 「疲れた?」 「ええ。天龍ちゃんは見つからないし、集まる『みんな』をどうにかしないと、って悩んだり」 「アウターヘブン、あんまよくねえの?」 「平常運転よー? 私が居なくてもいいのかもー」 踊る龍田は、何を思うか。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:49:54
yamoto @yamoto

「私は場所で、私は司令塔で、私は駒で、私は道化」 でも、龍田はそこにいなくていい。 そう龍田は嘯く。 必要なのは、それを維持するだけの能力がある者で。 龍田という名前は特に必要じゃない。 「おバカな兵頭さんが羨ましいわー?」 懐かしい呼び方だ。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:53:46
yamoto @yamoto

「それにねー。私気づいちゃったのよねー」 龍田の動きが止まる。 「もう、天龍ちゃん、この世に居ないんだってー」 龍田が確信したなら、そうなのだろう。 こいつの情報網は、地球の裏側のことだって捉えられる。 だから、こいつがそう言えばきっと。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 02:59:28
yamoto @yamoto

「じゃあ、私何すればいいのかなー?」 強力な軍隊。 強大な権力。 完全な情報網。 そこから生まれた、艦娘の楽園。 ただ、それは最初から。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:02:44
yamoto @yamoto

「天龍ちゃんの居ない世界に、楽園があったとして。なんの意味があるのかな?」 最初から、意味のない。 龍田にとっては最も意味のない。 作り上げる価値すらない。 伽藍堂の世界だったのである。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:06:54
yamoto @yamoto

俺は、何も言えない。 例え龍田が望んだとしても。 自分を騙す嘘に気づいてしまった龍田に。 何も言ってやれないのだ。 ああ、クソッタレ。 数年前と何も変わりゃしねえ。 救える方法は、手持ちのカードの中に残ってねえんだ。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:09:57
yamoto @yamoto

「何も言えないの、兵頭さんー?」 名前を呼ばれる。 「それとも、何も言わないのー?」 白い花束を持った黒い装束の『少女』が言う。 自分が殺した、相手の血痕の上で。 自分を殺した、始まりの場所で。 俺の救えなかった、少女が笑う。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:15:42
yamoto @yamoto

ああ。 龍田が今恐ろしく脆いことは、わかった。 同時に、この龍田が恐ろしく危険なのもわかった。 対処のカード一つ切り間違えるだけで。 アウターヘブンが全世界に宣戦布告なんてことだってあり得る。 龍田はもう、この世に何ら価値を見出していないのだから。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:24:30
yamoto @yamoto

冗談じゃねえ。あそこにある全戦力が人類に向けられてみろ。 深海棲艦と艦娘、両方から攻められりゃ人類側もカードを切るしかねえ。 人類は最強最後の武器を残している。 マンハッタンにお住まいの、ファットマンにリトルボーイの子孫たちだ。 そして、それは── #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:29:06
yamoto @yamoto

それはアウターヘブンにもあると、俺は推測している。 ロシアが毎年紛失してるプルトニウムの数を知ってるか? 他にもロケット十数基が紛失扱いになってるなんて話を、海ぼうず経由で聞いている。 回答を間違えた瞬間、全面核戦争に突入なんてこともありえるわけだ。 #不知火に落ち度はない

2015-01-05 03:34:46
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