不知火に落ち度はない　お正月スペシャル２０１５　その２

yamoto @yamoto

「じゃ、ジャンケンで勝ったら出ていける方式にしよう」 俺、普通のジャンケン超強いから。 あの二名が例外で、裏の裏まで知り尽くしてるだけで。 「よくそんなくだらない方法思いつくわねー？ おばかー？」 「くだらない方がいいだろ。困ったらジャンケンだ」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

あとはコイントス。 困ったときはそれで大概どうにかなる。 イカサマも仕込み放題だしな。 心理ゲームと、両面同じ柄のコイン２つは常備済み。 どっちもモグリとギンブチにゃ使えねえけど。 「だーめー」 「あれもダメこれもダメって、文句つけまくるなー」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

だが、楽しそうではあった。 おっかねえ腹黒ピエロは今、俺の腕の中ではしゃいでる。 あー、そっか。 龍田を見るとき、もう誰も「アウターヘブン」ってタグを外して見えなくなってたわけだ。 おそらくコイツ自身でさえもな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

なので今となっちゃよく分かる。 龍田、案外背ぇ低かったし、胸もそんななかったんだなー、とか。 顔の輪郭が意外と丸かったんだなー、とか。 あんま寝てないのかちょっとクマが出来てて、頬がわずかにこけてたんだなー、とか。 ああ、タレ目だったのも忘れてた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「兵頭さんー？ どうしたのー？」 「ん？ いや、お前案外子供だったんだな……いでででででっっ！？」 すっごいほっぺたつねられました。 「あらやだー、レディを捕まえてー」 「レディは愛宕みたいなのを……ってでででで！？」 やめて、ほっぺとれちゃう。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「兵頭さん、顔の皮があつーい♥」 「大人だし」 「剥がして飾りたーい♥」 「ショッキングな趣味だな！？」 猟奇的すぎるわ！ 「そういう言い回しが、不知火ちゃんを怒らせるのねー」 「龍田的には？」 「げきおこー？」 全然怒ってるように見えねえ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「兵頭さんー？ 龍田怒っちゃいましたよー？」 さいですか。 「どうしてくれるのかなー？ ぷんぷんー」 口で言うなよあざといな！？ だが見ろ。もう喪服が意味を成してねえ。 ──まあ、ここで油断したら最悪の地雷を引き当てるんだろうけどな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「そうな。俺のゴキゲンの取り方はだ」 「ホテルでロデオでアルペジオー？」 ちゃいます。 「茶店のケーキと屋台のクレープ、あとうまいラーメン屋」 「たんじゅーん」 うっせ。 「でもいいわねー。連れてってくれるのー？」 「おう、これからでもいいぞ」 #不知火に落ち度はない

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もういいだろ龍田。 こんな薄暗い世界から始まった話なんざ。 そういうのは、艦娘が背負ってもろくなことねえぞ。 まあ、作った大人が言うなって話だけどな。 だから大人に投げて、お前は知ったこっちゃないって投げ出せよ。 ここが分水嶺なんだからな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「うーん。兵頭さんは私もう頑張らなくて、いいって思うのー？」 「さあな？ もう頑張らなくていいとかは、お前の判断だ」 だいぶ腕も痺れてきた。軽いつっても米袋何袋分って話ではある。 「ただ、休んでも俺は文句言わねえよ」 「あらー？」 #不知火に落ち度はない

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「だって疲れたんだろ？」 「そうねー。疲れたって言ってたわー」 龍田は。 そう言って、ふう、と息を吐いて。 #不知火に落ち度はない

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「じゃあ、休んじゃおーっと」 大きく伸びを一つ。 手にした花束から、白い花がはらはらと。 薄汚れた場所の、黒ずんだ床の上に落ちた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

龍田は許したのだ。 己の過去を、過去とすることを。 永遠の今日から、明日を夢見ることを。 もう、ここはただの廃墟に変わった。 産声を上げた場所でもなく、終わりの場所でもなくなった。 #不知火に落ち度はない

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「ねえ、兵頭さんー？」 ん？ 「一つワガママ聞いてもらっていいー？」 聞くだけならいいぞ。 俺は頷いて。 「ありがとー、じゃあねえー」 龍田はそっと手を伸ばし。 #不知火に落ち度はない

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「これ、貰っていいかしらー？」 ああ。 どうやら俺は。 最後の最後でしくじったようである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

隣りに座ってる龍田はふんふん、と楽しげにハミング中。 俺の考えなんてお見通し済みなはずなのだが。 ほんと、図太い根性をしておいでだ。 「聞こえてるわよー？」 「そりゃどうも」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

その左手の薬指には、銀色の輝き。 そして俺の左手にも、銀色の輝き。 もうお分かりいただいていると思う。 うん。 そう。 つまり。 ケッコンしちゃいました、俺。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

保険的意味で、契約的意味で。 『ケッコンしちゃえば問題ないわよねー』 と龍田は言ったのだ。 確かにそれはパーフェクトアンサー。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

相互信頼の証として、この指輪は効力を発揮し。 相互理解の証として、思考リンクは何よりも明白で。 司令官同士のケッコンは、対外的に見ても文句の付け所はないのだ。 あらを探してつっつこうとするじゃん？ 俺のやった行動が美談化されるシステムついてるじゃん？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

つか龍田はすべて知ってるから、そういう情報操作もできるじゃん？ 「しないわよー？ するよりずっとドラマティックだものー」 はい、そうっすね。 してくれねっすか？ 「やーだ♥」 そーうか♥ と、自分のやった行動に、全力首しめられてます畜生が。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「映画みたいよねー」 そっすねー。 「映画化しそうよねー」 そっすかー。 「見に行こうかなー？」 え、二人で？ 「あら、息ぴったりねー？」 画面にポップコーン投げつける準備は万端だぞ俺。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「私ねー、実は初めてなのよー？」 「何がだよ」 うふふ、と龍田が笑い。そして。 「天龍ちゃん以外と、デートとかー」 「お前デートって単語使ってなかったっけ」 「そういうおとぼけするのー？」 「……意外にも程があんだろ？」 「あらー、やだわー」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

そうして車は、目指していたポイントへ辿り着く。 車を降りて二人で歩く。 喪服の龍田と、普段着の俺が、指輪をつけて。 #不知火に落ち度はない YAMOTODOU-RAKUGAKI-iti presents "siranui-ni-otidohanai”series

yamoto @yamoto

たどり着いたのは、基地のすぐ近くにある、海の見える崖。 いくつか並ぶ石の中で、龍田がそこを見つけた。 #不知火に落ち度はない Original Works：KANTAI-Collection（DMM Games） Producer：yamoto