安田章大 長編

クラゲ @04kurage

【先生】安田章大① 授業なんでつまらんわ 進路も決まったし もう授業なんて出たってつまらへん 屋上がいつからか俺の指定席 こんな冬に誰もおるはずない 「ん？」 なんか一瞬臭って その方向に進む 「え？！」 そこにおったんは清楚でめっちゃ大人しい担任

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② 『ふ〜』 って煙を吐き出している ここ禁煙やんな？ 初めて見た先生の姿に驚愕する だってさ 健全な男子生徒なら一回は必ずオカズにしてるし 俺も一回…いや…3回くらい… やからあんな姿 どこぞの不良少年より悪いやん 『はぁ…つまんないの』

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③ 「先生？」 『あ、』 びっくりするんかなって思ったら全然動揺しない 『内緒ね。お互い様』 そう言って肩を竦めた先生 「タバコ良くないですよ？」 『え？まぁねー』 「でもなんでですか？」 『知りたい？』 俺は黙って頷いた

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④ 『職員室の親父も教室のクソガキもみんないやらしい目でみて来られたら、ストレスだってたまるのよ』 「あ、」 すみません って心の中で言った俺 『どうせ安田君だってでしょ』 見透かされて何も言えなかった 『安田君みたいにカッコいい子ならいいけど』

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⑤ 冗談ぽくニコって笑う先生に 本気で恋した瞬間 やのに現実は… 『安田君初めて？私じゃ嫌だよね？』 ベッドの上で下着姿の先生 「嫌じゃないけど、あかんよ先生。理由が…」 『そう。じゃあもう帰っていいよ。はぁ…つまんないの』 そんな事になるなんてこの時は考えもせんかった

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⑥ 時々屋上に行くと先生と会うようになって 愚痴言い合ったりするようになった 「タバコって美味しいん？」 『美味しくはないよ』 「一本ちょうだいや」 『ダメー。あと2年我慢したら吸えるじゃない』 「先生がタバコ吸うって知ったら男子生徒や職員室のおじさまはがっかりするんやろな」

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⑦ 『知ってるの安田くんだけだしね。付き合ってる人も知らない』 「あ、彼氏居ったんや…」 そりゃそうやな めっちゃ美人やし あー失恋してもうた… どんな人か知りたくて色々聞いたけど全然教えてくれんくて 年上やって事だけ教えてくれた

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⑧ クラスの女子を見てると 恋バナしてる時のキャピキャピした笑顔とか全然ないし 幸せそうな顔せんくて むしろ悩んでる感じやった 「俺でよかったら話聞こうか？」 『はぁ？！何で安田くんになんか話すのよ』 「ですよねー」 『安田くんは彼女いないの？』

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⑨ 「おらんなー。欲しいって思ったこともない」 『それちょっと問題なんじゃない？』 “好きって思った相手に恋人がいたらどうしたらいいですか” 何て聞けるはずもなく 「ホモちゃうでな！」 『安田くんは女子力が高いってクラスの女の子が言ってたよ？』

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①⓪ 「なんやねんそれ。姉貴おるからやわ」 “ふふふ” って楽しそうに笑う先生と 毎日こうやって過ごせるのもあと少しで 今はこれを楽しんで卒業するねん そしたら俺の片思いも終わりや 何て考えながら先生の授業を受ける 放課後 母親の誕生日プレゼント買いに街に出る

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①① 週末やからか人も多くて 寒いのもあって早く帰りたくて急足になる ふと信号待ち反対側を見ると 手をつないでるカップルが居て すぐにそれが先生やってわかった パッとこっちを見て先生も一瞬で俺に気づいたけど 青になった信号ですれ違っても他人のフリされた

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①② 男の顔が見たくて先生の左隣に居た男の方をすれ違う 髪をかき分けるのにあげた左手の薬指に キラリと光るもんが見えた 『昨日会ったよね？』 翌日屋上で先生と過ごす 「先生さ、もしかして…」 『安田くんには関係ないでしょ？』 “割り切ってるから大丈夫です”

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①③ ちっとも大丈夫じゃなさそうにそう言って 1本もタバコを吸わずに出て行った その日から俺は先生に避けられるようになった

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①④ 授業も無くなってテストがある 高3の最後のテストやし 誰も真剣にしとるやつ何かおらんくて たまたま試験監督の先生を目で追う 教室を行ったり来たり 真横を通った時に捕まえたくなる衝動をグッと抑える あと5分…

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①⑤ スッと机に置かれた紙 先生が置いたんやけど 先生を見たらあかん気がして そっと答案用紙の下に入れる チャイムがなったと同時にポケットに入れて 何もなかったように出て行った先生を見送る 急いでポケットを確かめる “夜電話して” の文字と番号

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①⑥ 急いで帰宅して スムーズに夕食も風呂も済ました そろそろ？ 紙を見ながらゆっくりとボタンを押す 2コールで出た声 「もしもし？安田くん？」 『せやで』 全然元気のない声 泣いてた？ 時々鼻を啜ってる 「お願いがあるんだけど…」

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①⑦ 翌日俺は朝から家から離れた街の駅にいた 『安田くん？』 「おはようございます」 『来てくれたんだ』 「はい。一応…」 『じゃとりあえず行こうか』 先生に頼まれたのは1日恋人のフリをしてほしいって事

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①⑧ 手を繋いで歩き始めた先生 フレアスカートの丈は短めでそこから伸びる黒タイツを脱いで欲しいなんて考えてしまう そんな格好の先生 『せめて20くらいに見えないとね…』 気づいたらメンズの服屋におって 今まで見たことのない値段の服が並ぶ

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①⑨ 『これ着てきて』 渡された一式を言われた通りに着てみる 「あの…」 『よし、それで行こう』 そのまま 着てきた服を袋に入れられて 試着の服の値を切られて店を出る 美容院で軽くカットとセットをされる 「あの…」 『ここからが本番よ』

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②⓪ 連れてこられたんは遊園地 たくさんの子連れの中 乗り物に乗らずに当たりを見渡す先生 少し先に見つけた姿 あー… そういう事か… 見覚えのある顔は おとなしそうな奥さんと可愛い女の子を連れてた 「先生、あっこやろ？」 今度は俺が手を引いて歩く

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②① ギュって手を握って わざと顔近づけて 恋人みたいに寄り添う 「次ジェットコースターな」 『えっ…あっヤダよー！苦手だし』 なんて言いながらすれ違う 少し離れた時に振り返るけどもうそこにはおらんくて 『安田くんありがとう…』 そう言って先生は俺から離れた

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②② 「先生…？」 『安田くんご飯行こうか！飲みたいの！付き合って』 パッと顔を上げて歩き出す先生 ーーーーー 『くー！美味しい！ごめんねいいお店知らなくて。でもここ料理も美味しいんだよ』 ビールのジョッキを豪快に傾ける ちょっと小洒落た居酒屋

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②③ 個室に通されて15分 机いっぱいの料理 先生って結構食べるんや… 見惚れてしまうくらい飲んで食べて… ビールからサワーに移って グレープフルーツ絞ってる 「めっちゃ飲むやん…」 『え？うん。お父さんもお兄ちゃんも皆んな酒豪』

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②④ 先生はお母さんを早くに亡くしてて お父さんと3人のお兄さんがいる みんなに可愛がられて お嬢様学校に通ったけど 全然性に合わんかったらしい 『男に媚びなんか売るな！男を尻に引く女になれ！がお父さんの口ぐせだったよ。なのに女子校しか許して貰えないなんてねー』

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②⑤ やから異性なんてお父さんとお兄さんだけ 『私男運ないの』 最初に彼氏は大学の時コンパで知り合ったけどあっさり当時の親友に乗り換えられた その次はニート お金取られて暴力も そして今日の奴 『不倫とか最低でしょ』 割り切った身体だけのが楽だと思ったのにって