「石田三成の青春」第一話「美しい誤解~出会いの三献茶」
こやつ、自分の方の行く末はどう考えているのか。 紀之介は、母親を病で亡くしたその後すぐに、父親を戦で亡くし、縁あって当寺に引き取られた。他人に出仕の機会を譲る余裕などないはずだ。 住職は、紀之介を呼んで。訊いてみた。 すると、 #石田三成の青春
2015-02-07 18:13:09「私は、戦で敵の首を土産に、お仕えしとうございますゆえ」 と言ってのけた。 茶の点て方などで認められ、出仕するのは嫌だ。 言外にそう言っているように聞こえる。 本気なのか、友のために出仕の機会を譲るための方便なのか。 #石田三成の青春
2015-02-07 18:14:02おそらく、その両方であろう。住職はそう考え、もうそれ以上何も言わなかった。 (五) それから佐吉は住職と一緒に、石田村の自邸に帰った。 住職から話を聞いた父・正継は、 「なぜ佐吉に」 #石田三成の青春
2015-02-07 18:15:29訝ったが、住職が秀吉の言葉を伝えると、 「佐吉がそのようなことを。御住職のお仕込みのお陰です」 と喜んだ。 住職は事の真相を正継には話さなかった。律儀者の正継だ。真相を知れば、紀之介をさしおいて佐吉を仕官されるわけにはいかないと言いだしかねない。 #石田三成の青春
2015-02-07 18:17:38佐吉の心配りが秀吉の気に入ったと信じる正継だ。仕官の話に否やのあろう筈(はず)はない。 「ありがたい事でございます」 二つ返事で、事は決まった。 #石田三成の青春
2015-02-07 18:18:47住職の帰り際、佐吉が、宣言するように言う。 「一所懸命励みます。そして、羽柴様にお願いをお聞き頂(いただ)けるようになれば、紀之介殿をお召し抱えくださるようにお願いするつもりです。その時はどうか、お口添えをお願い致(いた)します」 #石田三成の青春
2015-02-07 18:19:48「そうだな、それが良い」 住職は、紀之介から聞いた最後の言葉を、これまた、佐吉には言わなかった。 「それでは、また明日」 「はい」 佐吉が見送る住職の背を、春の月が朧に照らしていた。 #石田三成の青春
2015-02-07 18:20:39以上で「石田三成の青春」第一話「美しい誤解~出会いの三献茶」終了です。 お付き合いくださりありがとうございました。 明日一日、お休みを頂き、週明けより第二話を連載予定です。 どうぞお楽しみに!!! #石田三成の青春
2015-02-07 18:24:32