「フジ・サン・ライジング」 #6
ナンシーは顔を上げた。そしてフロントガラスを挟んですぐ前に、視界を遮るように着地したガンメタル色のニンジャ装束におののいた。サボターは血まみれだった。いかなる戦いが繰り広げられたのか。では、ニンジャスレイヤーは……まさか……!?
2010-12-09 19:54:31サボターが腕を振り上げた。パンキ・パンチでフロントガラスを破壊するつもりだ。そうなれば……「イヤーッ!」
2010-12-09 19:57:50ナムサン!その瞬間、サボターの背後に降り来たったニンジャスレイヤーがサボターの頭を両手で掴み、なんの躊躇いもなく、力任せに捻ったのだ!サボターの首だけが真後ろを向き、途端に、糸のきれたジョルリ人形よろしく、ぐったりと絶命した。
2010-12-09 20:08:31ニンジャスレイヤーはサボターの死体を機首から蹴り落とすと、ナンシーを一瞥した。ナンシーはなんとか笑顔を作り、無言で頷いてみせた。ニンジャスレイヤーは頷き返した。そして、「Wasshoi!」叫びと共に跳躍。フロントガラスの視界から消えた。
2010-12-09 20:13:16「ドーモ。乗客の皆様、オツカレサマデス。安全で・早く・信頼性の高い、我々オバンデス航空をご利用いただき誠にありがとうございます。まもなくネオナリタ空港へ到着します。着陸時には……」
2010-12-09 20:21:29機械的なアナウンスの後、やや上気した放送が続く。「ドーモ、機長です。なんとか……なんとか皆さんを送り届けることがかないました。皆さんのおかげ……しかしながら、たくさんの方が、今回尊い命を奪われたことを……」
2010-12-09 20:25:59惨たらしい爆発と消化の跡をさらすビジネスクラス席を視界の端にとどめながら、スナバはぼんやりと、モマメの手を握っていた。もうすぐネオサイタマが見えてくるはずだ。「シシマイ体操、きっとうまくできるよ」何時の間にか目を覚ましていたモマメが明るく言った。その明るさが救いだった。
2010-12-09 20:36:57今回の恐ろしい爆破テロは、地上にニュースとなって届いているのだろうか。術後の妻が心配していはしないか。早く会いたい。そしてジョルリを見て、スキヤキを……「もう怖くないよ、お父さん、ね、怖くないから、泣いちゃダメだよ、恥ずかしいでしょ」「そうだね、そうだね…」スナバは鼻をすすった。
2010-12-09 20:41:00「えらいわね、お嬢さん」添乗員が声をかける。スナバは慌てて目をこすった。金髪スチュワーデス=サンだ。スナバとモマメに、優しく微笑みかける。「チャをどうぞ。温まります。ヤツハシもあります」「ヤツハシ食べたい!」
2010-12-09 20:46:31モマメが元気良く言った。金髪スチュワーデス=サンは笑い、スナバも困ったように笑った。「あ」落ち着かないモマメは、ヤツハシを持ったまま窓の外を見やった。「パパ!飛行機だよ!」スナバと金髪スチュワーデス=サンはそちらへ目をやった。赤黒のセスナ機が一瞬視界をよぎり、飛び去っていった。
2010-12-09 20:49:25