【ニンジャスレイヤー二次創作】 司祭廃棄 #3
それから、一週間もすると、被害者の家族をまわりおわった。まだ、死体のあがってないのもあったから、さがしてくれと泣きつかれもしたが、ヤクザとルンペンにはおかどちがいだった。できることといえば、おどしとものごいだけなのだ。 R107
2015-01-23 10:00:42そのあいだ、あらたな犠牲者はでなかった。そのことを、だれか気にするべきだったかもしれないが、またぞろ気まぐれをおこしたにちがいないときめこんだろう。千年うらみつづけるのもにんげんならば、季節がかわるよりもはやく、だれかをにくむことに飽きてしまうのもにんげんなのだ。 R108
2015-01-25 14:31:38さいごの家をでたとき、ドミシマがいった。 「なんにもなかったぜ」 「直接、犯人がわかるようなのはな」 「とんだむだ骨おりだったってことか」 「そうでもないさ」おれはいった。「足をつかう捜査がおわったってだけだ。あしたからは、あたまをつかう捜査がはじまるんだ」 R109
2015-01-25 21:42:36まるで、つっぱったルーキーにいろはを教えこむロートルみたいな口ぶりじゃないかとおれは思った。それはすてきな考え方で、そういうふうに振る舞った。実際にはルンペンとヤクザてしかないというのに。酔っぱらいめ。 R110
2015-01-26 13:58:00それから3日間かけて、おれとドミシマは手分けして聞き込みのメモをUNIXにうちこんだ。年齢、性別、職業、趣味、その他。すべての要素をことこまかに解体し、精査し、ふりわけてしわけた。これも聞き込みと同じくらい骨のおれるしごとになった。 R111
2015-01-26 22:44:00なにせ、40人からの話をぜんぶメモしていたのだ。脳みそにおでましねがうほど複雑なものでもないのだが、指がやたらにいたくなるのには閉口した。ドミシマも、おまわりのまねごとに続いてサラリマンのまねごとをしなければならないことに腹をたてていた。 R112
2015-01-26 23:13:11やけに強くUNIXのキーをたたくものだから、こわしゃしないかとよけいな心配をしたものだった。そうやってできたものをながめて、ドミシマは、はたとこまったようだった。これだけ苦労したのだから、作業がおわったらぱっちりとジグソーパズルの絵がらが見えるようになると思ったのだろうR113
2015-01-27 17:14:02けれども、そううまくいくのはまれなことだ。いよいよ、灰色の脳細胞というやつにひとっぱたらきしてもらう時間がきたのだ。 おれはまず、被害者にはパターンがあるとみているのだから、例外をはずした。被害者たちのなかで、いちばん年のいってるやつと若いやつをはずした。 R114
2015-01-28 10:46:30すみかがいちばん遠いやつもはずした。まだ、ほおっぺたの赤いちびだったころにさん数で習った統計みたいにやったのだ。 パターンから外れるということは、パターンから外れなければならなかった理由があるから、大事なヒントでもあるのだが、おれが外したやつらは別件だとにらんだのだ。 R115
2015-01-28 14:58:10いままでの被害者はみんな、きりさかれたり、やかれたり、ひきちぎられたりしていた。ありていに言えば、拷問されたのだ。だが、おれが例外にしたやつらは、こづきまわされて死んでいた。ということは、ヤンクかヒョットコにでもなぶり殺しにされたあわれなやつというわけだ。 R116
2015-01-28 22:28:28そいつら例外をさっぴたあとのデータを、おれはためすすがめつ、ながめたり、アルファベットやせいのたかさの順にならびかえてみたり、そうかといえば R117
2015-01-29 01:36:55ドミシマにちょっかいをだして時間をすごした。おれはひらめきをまっているのだ。それは、いたずらっ子のように小道からひょいとかおをのぞかせたり、うしろからはしってとびついてきたり、天使のようにおりたつことがあるのだ。おれはその瞬間をまっているのだ。 R118
2015-01-30 10:05:46そのときがきたのは、やはりデータをいじくっているときだった。どんな数字をいれても、相関係数に有意差など、なかった。どれもこれもバラバラだ。グラフのあちらこちらに散らばった点々をいくらにらみつけても、一本の線にまとまりはしなかった。いまいましいことだ。 R119
2015-01-30 19:34:23ふと、思いついて、最初の10人だけでやってみることにした。するとどうだ、ひとつだけ共通点があった。ぜんいん、教会にかよっているのだ。11人目はどうだ?やはり教会にかよっている。12人目、13人目もおなじだ。これだな、とおれはおもった。こいつがルールだ。 R120
2015-01-31 22:42:29おれはそれをドミシマに話した。 「でも、被害者ぜんいんが教会に通ってるわけじゃないだろ」 「うん、そうだ。犯人はさいしょ、教会で獲物をさがしていたんだ。だが、そのうち、教会で獲物漁りをつづけてちゃ、いつか足がつくときづいたか、どこでも獲物をえらべるときづいたか R121
2015-01-31 23:26:09狩場をひろげることにしたんだ」 「ふむ、筋はとおってる気はするな。でも、それぐらいなら警察も気付かないか?」 「この犯人は知恵のあるやつだぜ。死んだらさわぎになりそうなカチグミはやってないんだ」 ドミシマはUNIXの画面をじっくりとながめた。 「なるほど」 R122
2015-01-31 23:34:28ドミシマはなんどかうなずいた。 「なるほど、そいつが当たりにおもえるな。いや、きっとそうだ。それが当たりだよ」 R123
2015-01-31 23:49:02おれは確証をえるため、その教会をさぐることにした。危険だととめたのだが、ドミシマはついていくといってきかなかった。その目はイサオシではなく、カタキをまえにした男のようだった。 R124
2015-02-04 00:39:06よく当たる武器をえらべとおれはいった。ニンジャを相手にしたなら、かすり傷でも、当てることさえできれば生き残る目はある。 R125
2015-02-04 10:11:59サケの小びんを買い込んで、おれとドミシマは教会へむかった。空はすでにくらかった。おれたちの気もちも暗かったか?おれはちびりちびりとやることができたので満足だった。ドミシマはつまらない仕事がおわり、自分の本分、銃と刃物とげんこつでやる仕事がはじまるということで R125
2015-02-04 21:50:05よろこびをかくそうともしていなかった。おれはそれでいいと思った。じぶんを奮いたたせるために、凶暴なしぐさをするのはだいじなことだ。 夜の教会というのは、いのる神のいないおれにとっては、いごこちの良い場所にはみえなかった。がらんとしたくらくて天井のたかい広間など R127
2015-02-04 22:15:46ぞっとしない。おまけにいちばん奥にははだかの男が磔にされている像まであるのだ。 「きみは外をまわってくれ、おれは中にはいってみる」 「おれも中がいいぜ」 「なにかあればよぶ、一時間してもどらなければおれは死んだとおもって、別のニンジャをやとえよ」 R128
2015-02-04 22:27:37「死なれちゃ、こまるぜ。ニンジャのあてなんてほかにいないんだ。そうでなきゃ、だれがあんたみたいな酔いどれをたよるかね」 もっとな話だ。 「おれも、きみに死なれちゃこまる。酒代をはらうやつがいなくなっちゃことだぜ」 ニンジャにあったら、とにかく逃げろといって、 R129
2015-02-05 11:48:21おれはドミシマとわかれた。 正面かはいってもよかったが、それもまぬけな気がしたので、ぬき足さし足で別の入りぐちをさがした。すぐにうらぐちは見つかった。ノブをまわしてみると、カギはかかっていなかった。都合のよいことだ。だが、おれはぶるりと身ぶるいした。 R130
2015-02-05 19:58:19おれは景気づけに、上着のポケットから小びんをとりだし、ぐいとひとくちやった。舌がぴりりとしびれ、胃がかっとあつくなった。さあ、これで準備はオーケイだ。おれはそっとドアをひらいた。ぎっと思いのほか大きなおとがしてぎょっとさせられた。 R131
2015-02-05 21:05:00