【ニンジャスレイヤー二次創作】 司祭廃棄 #5【完結】
スカーシンメトリーの服のすそからは、鎖のついたフックがたれていた。スカーシンメトリーはそれをゆっくりとまきあげていた。 「いやにうれしそうだね」 うれしそうだと? 「きみのメンポは、怒りのかたちなのだろうけど、よろこびを表しているようにもみえるね」 R186
2015-02-15 18:38:28そうだろうとも、いま、おれはうれしいのだ。 なにせ、こどもをうばわれた親と、おれのために死んだ男の頼みのためにたたかうのだ。やつをたたっ殺すのに、これ以上の正当な理由があるだろうか。 おれはそれが、ひどくうれしいのだ。 おれはゆっくりとやつに向けて歩いた。 R187
2015-02-15 21:30:46スカーシンメトリーはひどく落ちついたものだった。なにもしらないだれかがみたら、おれがスカーシンメトリーを抱擁するかもしれないとさえ、おもったかもしれない。ワン・インチ距離にはいると、おれは足をとめた。スカーシンメトリーはおびえてはいなかった。 R188
2015-02-15 22:41:37きにくわないことだ、ふつうなら、敵どうしが手のとどく距離でにらみあいをすると、ぴりぴりしたものが空気の中にただよって、はなの奥がつんとするかんじがするものだが、スカーシンメトリーがあんまりリラックスしているもんだから、そういうのとは別の、いやなものが空気中に生じていた。 R189
2015-02-16 00:01:37おれは様子見とか、けん制とか、そういうものはしなかった。だしぬけに、めいいっぱいの力でやつの胸のまんなかにパンチをぶち込んだ。パンチは大ぶりになったが、しっかりとヒットして、スカーシンメトリーを壁にめりこませた。 すると、まったく同じに、おれの胸にもすごい衝撃がきた。 R190
2015-02-16 00:07:43スカーシンメトリーと同じ距離をふっとばされて、おれも壁にめりこんだ。 「まったく!まさかとはおもったが、きみはわすれっぽいのだな!」 「いま、それに気づいたところだぜ」 フィアカタリスト・ジツがとかれていないことを忘れていたとは、おわらいだ。 R191
2015-02-16 00:13:51だが、ほんとうにお笑いなのは、スカーシンメトリーのほうだ。フィアカタリスト・ジツをうけると、施術者と非施術者は痛みを共有することになる。つまり、やつを殴ればおれも痛い。おれを殴ればやつも痛い。ジツをとかれなければ、おれが痛みで死ねばやつも死ぬことになるのだ。 R192
2015-02-16 00:39:53まったく、ねがったりなことだぜ。 「じょうとうじゃねぇか、え?まったくじょうとうなことじゃねぇか」 おれは、われ知らず、ぶつぶつとつぶやきながら起きあがった。 「あたまでっかちの宗教屋に、ひとつ、ほんとうのタフガイってものをみせてやろうじゃないか」 R193
2015-02-16 00:44:45おれは、スカーシンメトリーのえりをつかんで、むりやりに立ちあがらせた。スカーシンメトリーは、おれが何をするのかさっすることもできず、きょとんとしていた。おれはバタービーンよろしく大きくふりかぶって、きょうれつなのをまぬけのアゴにおみまいした。 R194
2015-02-16 00:58:08アゴに200キロで走るトラックがぶつかったような衝撃がきて、おれはたたらをふんだ。脳みそがゆさぶられて、頭蓋骨にあたるのをしっかり感じたぜ。おれは、いままでぶちのめしたことのあるやつらが、かわいそうになった。 R195
2015-02-16 01:07:54こんなパンチをもってるやつに立ち向かうなんて、いやになっちまうぜ! スカーシンメトリーは目を回して、起き上がれないようだった。しゃがみこんでやつの顔をのぞきこんでやった。 「どうだい、ひざががくがくして立ちあがれもしないだろう?いためつけるためじゃなくて、 R195
2015-02-16 01:14:31ぶちころすための攻撃っていうのをくらうとこうなるんだよ。アドレナリンだかがでるから、痛みがくるのもまだだろう?」 「なんで…」 口から血のよだれをたらしながら、スカーシンメトリーがいった。 「痛みがこわくないのか…」 「なれてるからな」 おれは口の中にたまった血を吐いた R196
2015-02-16 01:18:11それからにやりとわらった。ひゅう!いまのはよかった、きっと、どえらくタフな男にみえたことだろう。 「あんたの拷問をうけてわかったよ。ニンジャがどれくらい痛みにつよいか、さっぱりしらないんだな。そんなおっかなびっくりの拷問があるもんかね」 とはいえ、きつい拷問には違いない R197
2015-02-16 01:27:49「まあ、でも、いちばんの肝はな…」 おれは立ちあがり、やつの頭にあしをのせた。 「根性がすわってりゃ、ちっとばかし痛いぐらい、どうってことはないってことだ。おまえが死ぬんなら、痛くて死ぬぐらい、こわいことなんかあるもんか。よわむしめ」 R198 R198
2015-02-16 01:37:18すると、スカーシンメトリーはすそからフック付きの鎖をさっとのばし、ろうかのどん着きのかべにつきさした。ぴんとはった鎖を巻きもどすと、こんどはスカーシンメトリーが、もうれつな速度でひきずられていった。あまりにすばやかったので、おれはなんにもできなかった。 R199
2015-02-16 08:57:33それと同時に、おれのむねの十字のきずから、どろりと血がしたたった。やつはジツをとき、おれから逃げることをきめたのだ。 だが、うまくいったのはそこまでだった。おれは両手にすばやくスリケンを生成し、同時になげた。スリケンはおれの考えていたとおりに、 R200
2015-02-16 12:48:46スカーシンメトリーのあしに突き刺さった。ひやっとさせやがる、ここまで追いつめたのに逃しちまうところだった。逃げるぶんにはいっちょうまえだ。さあ、さっきのつづきといこうじゃないか。 R201
2015-02-16 12:53:24スカーシンメトリーは、インターラプターがひどくおそろしかった。これまでにスカーシンメトリーが殺した人びとのなかには、たしかにこういうたぐいの人間がいた。かれらには、こうしよう、また、かくあるべしと決めたからということで、苦痛や死は意味をうしなうのだ。 R202
2015-02-16 14:40:14かれらは、どんなに責めても哀願したり、悲鳴をあげたりはしなかった。怒りのこもった罵倒や唸り声で抵抗をしめした。だが、さいごにはいつもスカーシンメトリーが勝った。かれらがあきらめるのをみると、歓びが体をかけめぐった。そういう男たちがニンジャになると、こうまで恐ろしい R203
2015-02-16 19:41:46いきものに変わってしまうとは!スカーシンメトリーには、インターラプターが神話のなかから抜け出てきた怪物のようにみえた。 おお、見よ!石畳をがっしりと踏みしめる足は地球を支えるタイタンのようであるし、丸太のように太いうではヘラクレスのような力をそなえていることだろう。 R204
2015-02-16 20:10:33なにより、あのメンポときたら、地獄の鬼をそのまま鋳溶かしてデスマスクにしたようだ。開口部からもれる水蒸気は、瘴気を吐いているようではないか。その怪物は、己の血と返り血をしたたらせながら、スカーシンメトリーへ近づいた。 R205
2015-02-16 21:02:49スカーシンメトリーは逃げようとした。足の腱をスリケンに断ち切られたようで、動かそうとするとひどい痛みが返ってくるばかりだ。うでで這おうとしたが、石床は血塗れで、ぶざまにすべってしまった。もはや逃げるすべはない。そのことがスカーシンメトリーの恐怖をさらにかきたてた。 R206
2015-02-16 21:08:23スカーシンメトリーはイタミ・ニンジャクランであったが、それはなんの助けにもなりはしなかった。恐怖は痛みを呼び覚まし、痛みは恐怖をいや増した。そのサイクルは加速度的に早くなり、スカーシンメトリーはがたがたと震え、涙をながし、ついには神にいのった。神に! R207
2015-02-16 21:21:02「たすけてくれ!たすけてくれ!あんなに祈ったじゃないか、悪魔でもいい、たすけてくれ!おれの魂をやるから!」 それを聞き、インターラプターは哄笑した。じつにゆかいそうに笑った。 「きいたかドミシマ!肝ったまの小さいやつだ、ついに命ごいをしたぞ。 R208
2015-02-16 21:45:49なんともすてきなネンブツじゃないか」 そしてはなをつまんでいった。 「おまけに、パンツまでぬらしやがる。これはこいつのシニミズだな」 インターラプターはスカーシンメトリーの上に屈みこんだ。その影におおわれると、スカーシンメトリーは闇につつまれたような気がした。 R209
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