Y字の意味 ~HIVウイルスに効く薬~

エイズの原因となるHIVウイルス。 色々新しい薬が開発されているようです。
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Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)HIVはヘルパーT(Th)細胞に感染することで有名。Th細胞にはCD4, CXCR4, CCR5が発現してる。Th細胞は「免疫の司令塔」で、最終的にはこれがHIVに感染して死に、徐々にその数が減り一定以下になると重度の免疫不全に陥りAIDSを発症する

2015-02-21 08:00:35
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)で、あんまり知られてないけど、マクロファージにもCD4, CCR5が発現してるので、HIVはマクロファージにも感染可能。AIDS発症には、Th細胞死の方が重要だけど、治療とかを考えるならばマクロファージにも感染しないようにする必要があるわけ。

2015-02-21 08:03:30
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 で、抗ウイルス薬、というものを考える場合、いくつかのアプローチがあるのだけど、その一つが「ウイルスが細胞にくっつく(=吸着)のを邪魔する」というのがある。これは、じつはウイルスに限らず、ほかのくすりでもよくあって「受容体をブロックする」という考え方でもある。

2015-02-21 08:07:34
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)そのために何をするか。例えば、CD4やCCR5、またはそれによく似たものを外から入れてやれば、Th細胞とくっつくかわりに、ウイルスはそっちにくっつくはず。これが今回のやつの「基本戦略」。で、そっからさらにもう一工夫してるわけ。

2015-02-21 08:10:44

そうではなくて、「おとり」。

ぶたやま@「ぶたやまかあさんのやり過ごしごはん」発売中 @Butayama3

@y_tambe あ、受け入れ先をなくすのではなくて、おとり作戦なんだ。

2015-02-21 08:13:29
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 あぁ、その呼び方は判りやすいな>おとり作戦 今度、講義で使ってみよう ^^

2015-02-21 08:18:42

このお薬の「さらなる一工夫」とは。
「中和作業」と「凝集作業」について。

Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)そこで「抗体」の仕組み、というのが出てくる。僕たちの体の中では、ふだんは抗体でウイルスを排除してる。この場合、HIVに対する抗体は、HIV表面の分子、つまりgp120なんかをFab側で認識してくっつく。くっつくことでgp120が(続

2015-02-21 08:14:30
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)抗体がくっつくことでgp120がCD4とかと結合するのを「物理的に」邪魔してやるのが、抗体の一つの働き。ちょうど、抗体でHIVを無毒化していく感じなので、こういうのを「中和作用」という。んで、もう一つ、さらに効率化するための作用が「凝集作用(続

2015-02-21 08:17:20
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 抗体は、アルファベットの「Y」字型で、標的とくっつくためのFabを二つ持ってる。だから、一つの「Y」で二つのgp120とくっつける。HIVはウイルス粒子の表面に、たくさんのgp120を持ってる。だから、これを混ぜると(続

2015-02-21 08:21:04
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)抗体の一つの「Y」は、同じ一個のウイルス粒子のgp120だけでなく、最大二個のウイルス粒子と結合し、その「Y」がいっぱい一個のウイルス粒子にくっつくことで、ウイルス−抗体−ウイルス−…の大きな塊ができる。これが「凝集作用」。単に中和するだけでなく(続

2015-02-21 08:24:41
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)他所に行かないように一カ所にまとめて、最終的にマクロファージとかが食べて分解することで掃除する。マクロファージは、ある一定以上の大きさがあって、水に溶けにくい「塊」である方が、異物として認識しやすくなるから、そのためにも「凝集」が役立つ。

2015-02-21 08:27:32
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)ただ、抗体は「gp120の微妙なかたち」を認識して、くっつくものだから、ウイルスが変異して「CD4やCCR5とはくっつくけど、結合と関係ないところのかたちが微妙に違う」gp120が出来ると、その抗体がきかなくなってしまう(続

2015-02-21 08:31:56
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 そこで、今回の論文では「じゃあCD4とCCR5を使って、抗体みたいにY字にしたらよくね?」と考えた、というわけ。

2015-02-21 08:33:11
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 そこで、彼らがモデルにしたのが、抗体のH鎖。抗体はH鎖とL鎖、それぞれ2本ずつ、計4本で出来てるけど、実際に「Y字」になってるのは、H鎖2本の部分。H鎖が Fab-Fc、という並びになってて、2本のH鎖がFc部分でくっついて、Y字になる。

2015-02-21 08:38:09
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)「Fab-Fc」の代わりに、「CD4-Fc-CCR5」という並びになるようなタンパク質を作るようデザインしたDNAを入れる。ただ、CCR5そのままだと(多分大きすぎて)上手く行かないからCCR5側は実際にくっつくgp120との結合部に似せたものにしてる

2015-02-21 08:41:58
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 承前)そういう小さな細工をして、全体的に「抗体に似せた」形にすることで、もともと僕らの体が持ってる「抗体使って排除する仕組み」(凝集→マクロファージによる貪食とか)で排除されやすいようにしたら、なかなか上手くいったぞ、という、そういう論文(やっと説明終わった

2015-02-21 08:44:54
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 あと、今回のは、まったく新しい試みだから、当然まだヒトで試してるわけではなくて、培養細胞とかマウスでの実験段階。あと、抗体型の「Y」字型のタンパク質を生体内で作らせるので、このままヒトに応用するとなると、いわゆる「遺伝子治療」のかたちになる。

2015-02-21 08:52:54
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 どっか別のところで、抗体型タンパク質を作って、それを精製して投与する、という方法もあるかもしれないけど、(A)毒ヘビに噛まれた後で、毒素に対する抗体(抗血清)を投与する、のと、(B)ワクチン打って抗体をつくらせる、との違いで、前者は効果が一過性になる可能性大

2015-02-21 08:56:45

うわー、わかった・・・・。
なるほど、これは合理的とういうかなんというか。
一つで三役くらいこなすというわけですね。

--ここで質問がでました。
HIVに対して色々薬が開発されているけど、それらの耐性ってどうなっているんでしょうか。

上更プラウス千秋⚜💌 @mio_sng

@y_tambe @Butayama3 お聞きしてよろしいでしょうか。抗体と似ているけれど、ちょっと違って、抗体みたいなたんぱく質を投与しつづけないと、HIVに対抗するのは難しそう、ということでもあるのでしょうか

2015-02-21 09:20:59