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第 幕[オペラ:サロメ]

 10月、ハロウィーンが近く上客たちからの要望もあり、劇団ではホラーの色が強いオペラ:サロメを上演することに決める。しかし、配役について役者たちの間で言い争いが起こってしまう。  本物と見紛う作り物の生首、“動物”の血を使った演出――それに誘われたかのように、劇場でもう一つ、奇妙な騒動が起こった。 [原作/リヒャルト・シュトラウス作曲、オスカー・ワイルド著]
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第一場 配役の行方

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

「次の舞台が決まった?」『ああ、次はこれをやる。』「サロメ……おい、まさか俺が主役じゃないだろうな?」『何を言っているんだ、お前がタイトルロールに決まっているだろう。』「……七つのヴェールの踊りはどうするんだよ。」『お前が心配しなくともどうとでもなる。大丈夫だよ、ロニカ。』

2014-10-02 23:50:01
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『上得意からの要望も多くてな、無碍にはできないんだ。』「はっ、ヘロデみたいな客ばっかりだな。」『……滅多な事を言うものではない。』「分かってるって。“パパ”の為に踊ればいいんだろ?」

2014-10-03 00:00:27

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『次のサロメはタイトルロールをロニカ、ヨカナーンをモーリス、ヘロデをロルフ。これでいこうと思う。』「おいおいちょっと待てよ、ヘロデがロメオだって?逆立ちしたって無理だろ。」『……っ、言いがかりはやめてくれないか。』「俺は事実を言っただけだ。アンタにはできない。」

2014-10-03 23:22:52
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『まあ待ちなさい。声質としてはロルフが妥当だろう?先日の公演での評判も悪くない、こういった役柄に挑戦するのも悪くないと思うのだが。』『ああ、ロメオ君は成長期だからね。私も団長には賛成するよ。』「はっ、実力不相応な役をやったって恥をかくだけさ。俺は巻き添えなんてご免だな。」

2014-10-03 23:30:57
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『……先程から聞いていれば、君は何を根拠に私を否定するんだ。』「分かってんのか、“ヘロデはサロメに情欲してる”――アンタは俺に情欲できるのか?」『………不本意ながら、君とは幾度となく恋人役をしてきただろう。ならば今回も、』「恋人なんてお綺麗な役じゃないって言ってんだよ。」

2014-10-03 23:37:28
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

「あんな恋人ごっこと一緒にされちゃ困るんだよ、アンタにはヨカナーンの方がお似合いだ。“サロメを拒絶する預言者”、コッチの方が得意だろ?」『君にそこまで言われて、大人しく食い下がったりはしない。そこまで言うのなら、』『そこまで言うのなら、実際に軽い立稽古をしたらどうかね?』

2014-10-03 23:54:17
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

「今すぐにか?それじゃロメオに不利だろ。」『……、』『ふふ、勿論今すぐにではないよ。それでは詰まらない。しかし時間は限られている。猶予は一日、でどうかね?明日またこの場所で続きと行こうではないか。……良いだろう?団長、』『お前が構わないのなら私は反対しないよ、モーリス。』

2014-10-03 23:58:46

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……確かに、ロニカの言うことにも一理はある。ロルフにやらせるにはあと一歩及ばないかも知れないな。」「その点私はヴェラに欲情するのは容易いからね。」「そう胸を張って言われても困るがな、」壮年の男が2人、ワイングラスを片手に話し込んでいる。)

2014-10-05 20:46:46

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(――明くる日、劇団の稽古場で次の舞台の立ち稽古が終わった。一人の青年は膝を落として項垂れ、もう一人の青年は毅然とした様子でその青年を見つめている。「……これでわかっただろ、アンタにはヘロデは無理だ。」その言葉に項垂れた青年が唇を噛み締めた。それは、本人が最も痛感していた。)

2014-10-07 00:22:00
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(どれほど努力をしても、意識を変えても、自分には演じられる役ではないとそう感じていた。猶予の期間からずっと。それでも相手の言葉が悔しく、意地でも役をものにしようとしたが、結局は失敗に終わった。「ふむ、惜しかったねロメオ君。悪くはなかったと思うよ。」)

2014-10-07 00:27:02
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(壮年の男が親しげに声を掛けても青年は陰鬱に視線を落としたままだった。「……そういうわけだ。今回は、ヨカナーンをやってくれるか?ロルフ、」壁際で傍観していた男が不意に言葉を投げかける。それに対して青年は悔しさを滲ませた声音で了承した。)

2014-10-07 00:33:30
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……よし、話は纏まったね。今日はとりあえずこれでお開きかな?」場違いなほど呑気な壮年の男が壁際の男に問い掛けた。「そうだな……お前も役を変更しないといけないだろう、今日はここまでにして台詞を入れてきてくれ。」稽古の終了が伝えられると、壮年の男が立ったままの青年を抱き上げた。)

2014-10-07 00:36:56
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……は?」突然の出来事に面喰った青年が男の腕の中で身を捩る。「っ、おい!どういうつもりだモーリス、」「うん?だからこれから私の家で稽古でもしようと思ってね。君の身体を味わおうかと。」抗議の声を上げる青年に涼やかに返し、壮年の男はそのまま稽古場を後にした。)

2014-10-07 00:40:49
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(後にはこめかみを押さえる壁際の男と、呆気に取られた青年が取り残された。)

2014-10-07 00:42:32

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……で、稽古するのに何で縛る必要があるんだよ。」両手を後ろで拘束され、脚を開いた状態で固定された青年がベッドの上に転がされている。それを傍らの男がにっこりと笑いながら見下ろしていた。「うん?その方がやる気が出るかと思ってね。」)

2014-10-08 00:32:23
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「アンタのヤる気が出るだけだろ、」「まあ、否定はしないね。」男はさらりと言ってのけると、様々な“玩具”をベッドの上に並べ始めた。それを目視した青年が顔を顰める。「おい、そんなことヤってる暇があったら台本覚えろよ。」「台本?そんなものはとうに覚えたよ。」)

2014-10-08 00:38:28
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(手を止めることなく返す男の顔を苦い表情の青年が見遣った。「……つまりヘロデもヨカナーンも覚えてたってことか。なんだかんだ言っておいてアンタも抜かりねぇな。」「お褒めに預かり光栄、だね。……さて、」そう言うと、男が青年の衣服を脱がせ始めた。)

2014-10-08 00:44:42
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(手足を拘束されているため、衣服は中途半端な位置で止まる。身を捩って逃れようとする青年の抵抗も空しく、白い肌が露わになった。男が満足げにその肌に指を滑らせると青年の唇から艶のある吐息が漏れる。「……で、一体何の稽古のつもりなんだよ。」バツの悪そうな顔で青年が問い掛けた。)

2014-10-08 00:51:51
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「そうだな……さしずめ、情欲する稽古と誘惑する稽古と言ったところかな。」妙に茶目っ気のある笑みの男がそう返すと青年は呆れた表情になる。「何がさしずめだ、もっともらしいこと言いやがって……単にアンタが遊びたいだけだろ。」)

2014-10-08 00:56:32
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「冷たいな、ヴェラは。色事の最中はあんなに積極的だというのに。」なおも言い募ろうとする青年の口に猿轡をはめた。「さあ、上手に誘惑してご覧?うまくできたらご褒美をあげよう。」男の声はとても楽しげだった。)

2014-10-08 01:03:42
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