自分用グランクレスト大戦SSまとめ

俺の俺による俺のためのSSまとめ。ログを遡るのが面倒になったため作成。
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皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

さっきまで「この程度の傷、唾でも付けときゃ治る」などと豪語していた古参兵が、いざ治療してもらう段になると「こっちの傷も診てもらえませんか」などと抜かし始めた。女性は嫌な顔一つせずに、時折痛みの確認などをしつつ手際よく丁寧に、兵たちの傷を一つ一つ癒していく。

2015-03-05 02:11:58
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

さながら聖女のようだ。場所によっては癒しの力を持つ君主を神の様に崇め奉っている処もあるそうだが、何とはなしに納得できる光景が目の前では繰り広げられていた。己の業は常に戦場で発揮されるもので、見ている暇などもちろん無い。

2015-03-05 02:12:14
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

なので他の君主の力が発現している所をしげしげと眺めるのは、実は初めての事かもしれない。と、不躾な視線に気づいたらしい聖女様が「貴方も何処か癒して欲しい傷等御座いますか?」とこちらに向かって尋ねてきた。

2015-03-05 02:12:26
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

いえ、特には、と応えを返すと「嘘仰い。そんなにご立派な包帯を巻いておいて、怪我が無いとは言わせませんよ。」と無理矢理椅子に座らせられ、あれこれと治療を施されてしまった。傷はほぼ塞がっていたというのに、心配性な事だ。兵たちの生暖かい視線はこの際無視した。

2015-03-05 02:12:41
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「人々を救う為の癒しの力、か。」 砦の怪我人を粗方癒し終え、次の砦へと出立していった彼女の背中を見送りながら、独りごちた。俺には縁遠い想いと力だ。誰が為の力、とは言うが、俺の力はただ一人の為にある。今も昔も、これから先も、そう在り続ける事だろう。この命が潰えるまで。 了

2015-03-05 02:12:56

3/7分 病気こわい

皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

自分の吐息が熱い。いや、吐息どころか全身が燃えるように熱く感じる。視界はぼやけ、関節が軋みをあげる。思考は定まらず、益体も無い事ばかりが浮かんでは消える。要するに、性質の悪い風邪を引いたのだ。 #グランクレスト大戦SS

2015-03-07 02:32:23
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

風邪など引くのは何時振りだろうか、こんなに拗らせたのは物心付いてから無いように思える。

2015-03-07 02:32:36
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

苦しい息を吐き出していた口からケホ、と軽い咳が出る。今は小康状態だが、酷いときは咳が続き、そのせいで噎せ込みまた咳の発作が出るという悪循環もいいところな症状が続いていた。苦しいながらも正常な呼吸ができるというのは、実に素晴らしい事なのだと身を以て思い知った。

2015-03-07 02:32:49
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

熱も高い状態が三日程続いている。起きている時は熱に纏まらない思考を漂わせ、そのまま意識が拡散し眠りに落ち、高熱に魘されまた起きる。その繰り返し。病と云うのは厄介だ。体力のみならず気力まで萎えてゆく。このまま二度と起き上がれぬのではないか、などという下らない妄想をするぐらいには。

2015-03-07 02:33:20
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「鬼の霍乱、ですかな。」 風邪っ引きの看病を買って出てくれた爺様はそう笑った。俺は鬼じゃない、掠れた声でそう反論する途中で咳が出た。 「ほら無理をしない。ただの風邪と侮ると酷い目に合うのはご自分の身を以て体験している最中でしょうに。」

2015-03-07 02:33:40
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

そう言って薬湯を手渡してくる。だが、その薬湯のせいで俺の気分は余計に下降する。

2015-03-07 02:33:56
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

この、えもいわれぬ臭気を漂わせるヘドロ色のどろりとした飲み物は、爺様特製の薬湯だ。見た目通りの酷い匂いと味だが、効能がある事は軽くなっていく症状を見れば明らかで、毎度文字通り苦汁を嘗めたかの如き形相で飲み下す羽目になっている。もちろん、後味も最悪に不味い。

2015-03-07 02:34:14
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

もう飲みたくない、そう愚痴をこぼすと、「それは聞き入れるわけにはいきませんなぁ」と爺様。「ちゃんと飲まんと治るものも直りませんぞ」とも。そうして

2015-03-07 02:34:32
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「ただの風邪でも、人は死ぬのですから。」 爺様は存外真剣みを帯びた口調で、言った。

2015-03-07 02:34:48
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「まあ、貴方はそうはならんでしょうがね。」 まだお若く、体力も有り余っていらっしゃる。そう、小さく笑う。爺様はよく笑う。小さく、豪快に、含んで、そして寂しげに。どんな時にも笑っていられるのは、強い証拠だとどこかで聞いた。

2015-03-07 02:35:05
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

額に滲んだ汗を布で丁寧にふき取られる。乾いた布の感触が心地よい。ああ、熱で考えが纏まらない。頭がぼんやりする。

2015-03-07 02:35:22
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「お眠りなさい。寝て、起きれば、少しは好くなるでしょう。」 その言葉と併せて、暖かい手で目蓋を撫でられる。視界が暗くなり、意識が静かに沈んでいく。

2015-03-07 02:35:43
皐月@グランクレスト大戦用 @satuki_grancres

「・・・妻は風邪を拗らせて逝きましたので、少し、余計に心配になるのですよ。」 爺様の呟きも今の俺には届かない。そうして、眠りの淵へと滑り落ちていった。 了

2015-03-07 02:36:01
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