ゴッドハンド・ザ・スモトリ #1
「フザケルナ!」「ヤッタ!」「弱腰!」「スゴイ!」「ちゃんとしろよ!」「ワオーッ!」「お前の脇が甘い!」「ワオーッ!」歓声と辟易、ブーイングが入り混じった。理事長は汗を拭い、「エー、開催日程は後日にアナウンス。本日のお客様方には補償……」ブツン。男がリモコンでモニタを消した。24
2015-04-15 00:00:55「アッ!いつの間にリモコンを……」「クソが!」男はリモコンを投げつけ、トークンをカウンターに叩きつけた。「なァにが最強だ。リキシは力の戦士だろうがよ。最強ッてのはよォ……誰にも負けねえ奴を言うんだ。アアー?違うか、おやじ!」「アイエエエエ!」「何がファンだ!何が……クソッ!」25
2015-04-15 00:04:09「アイエエエエ……」失禁しかかりながら、店主は酔客を見上げた。恐るべき迫力。その眼差し。「エッ……」店主は目をこすった。「あンた、どこかで見覚えが」「そりゃアおやじ、俺ァ警備仕事の帰りにしばしば来店、オゴーッ」嘔吐!「アイエエエ!」「バカ野郎が畜生め……」千鳥足で退店! 26
2015-04-15 00:09:23ふらつく男を迎える路上は暗く、「大入り袋」「招き猫」「浅草」などのショドーが施された赤いボンボリを掲げた一杯飲み屋が立ち並ぶ。街灯のライトはバチバチとおぼつかず、ゴミバケツを漁る野犬が男を睨む。「ふざけやがって……ヒック」カンオケ・ホテルを目指す男の背中はすさまじかった。 27
2015-04-15 00:15:35「ハイ、おじさんこっちよ」「キテネー」その手をナース姿のオイランが取り、横づけした救急車に誘導した。「ヒック、何だァ?ッたくよお」男は酒臭い息を吐いた。「救急オイランサービスと来らァ。気が利いてらァ」「そうよ、おじさん」「キテネー」「確保」白衣姿の男たちが迎え、男を車内へ!28
2015-04-15 00:21:30ゴゴゴゴ……くぐもったエンジン音を鳴らし、救急車は走り出した。「拘束を早く」「ハイ。しかし、なんだなあ、もっとアブナイかと思いましたが、とんだダメ野郎ッて感じですね」若いサラリマンが侮蔑的に言った。「オイオイ」白衣の男が咎めた。「さすがにシツレイだ」「アッハイ。エヘヘ!」 29
2015-04-15 00:25:05アナヤ、これは一体?若サラリマンの胸元に光る社章は……ナムサン!暗黒メガコーポ、ヨロシサン製薬のそれだ!「ニンジャのセンセイまで手配したのにさ。ドーモスミマセン、暇させちゃったッスねェ!」「ダマラッシェー!」助手席から叫びながらニンジャが振り返る!「アイエエエ!」若者は失禁!30
2015-04-15 00:31:35「貴様の上司の名を言え、非ニンジャの屑!」ニンジャは苛立ちに満ちた眼差しを光らせる。「アイエエエ……カリバダ=サンです」「よかろう。カリバダ=サンはケジメだ。こんな無礼なガキをよこしたのだからな。調子に乗るな!」「アバーッ!」白衣の下請け社員達は無言でガタガタと震えている。31
2015-04-15 00:36:27「俺はカチグミ気取りではしゃぐ若僧が嫌いだ」ニンジャは冷たく言った。「若僧の死体もな。臭くてかなわん。捨てろ」「「ヨロコンデー!」」下請け社員達は失禁しながら、変わり果てた若サラリマンから社員ID関係を手早く剥がしたのち、死体を車外へ放り捨てた。ナムアミダブツ!32
2015-04-15 00:42:33白衣の者達は泥酔した男を拘束する作業に己を没頭させ、ニンジャ・リアリティ・ショックに耐えようとした。ニンジャが実在する事、そしてニンジャとは暴虐な存在である事を、彼らは職務上既に知っている。だが、ヨロシサン製薬のニンジャの残虐なバイオテックを間近に見た衝撃は計り知れない。33
2015-04-15 00:48:31「……ドーモ。私だ。カリバダ=サン。そうだ」ニンジャはIRC通信を行った。「無礼があったゆえ、貴様の部下を殺害した。貴様には管理不行き届きの咎でケジメを申しつける」アイエエエ、という声が通信機のスピーカーから漏れ聞こえた。「本題だ。対象を問題なく確保した。これより帰還する」 34
2015-04-15 00:54:37救急車は飲み屋街を離れ、しめやかにハイウェイ方向を目指す。街灯やネオン看板が流れゆく。「元気の男」「カセット」「お前様」「モミ」「カラオケ子達」。ニンジャは横目で車両後部の酔漢を見やる。「往年の覇気のかけらも無しだが、遺伝子的には問題あるまい」そして呟いた。「ゴッドハンド」35
2015-04-15 00:58:41その時だった。ボン、ボボン、妙な破裂音のあと、車両が減速し、停止した。「スミマセン」クローンヤクザ運転手が無表情に頭を掻いた。感情表現機能が豊かである。「どうした」ニンジャは睨んだ。クローンヤクザがドアを開けて車外へ出、タイヤを確認しながら言った。「パンクです」「パンク?」 36
2015-04-15 01:02:08ニンジャは首筋にぞくりとした感覚を覚える。ニンジャ第六感が鳴らす警鐘である。車外の運転ヤクザが斜め上を見上げ、「ザッケンナコラー!」チャカ・ガンを構える。その額にスリケンが突き刺さった。「グワーッ!」額から緑の血を噴き出し、クローンヤクザは死んで倒れた。「何!」 37
2015-04-15 01:04:28「イヤーッ!」KRAAASH!フロントガラスを貫き、第二のスリケンが飛んできた。ヨロシサンのニンジャは一瞬早く車外に転がり出ていた。「アイエエエエエ!」通過しようとしたスシ・デリバリー・バイクが驚いてスピンし、転倒しながら滑り消えていった。「アイエエエエ!」 38
2015-04-15 01:07:07「何奴!」ニンジャは攻撃方向を見上げた。そして目を見開いた。「な……なぜ貴様が」視線の先には……ゴウランガ……交通標識の上に腕組みして直立する赤黒装束のニンジャの姿があった。マフラーめいた長い布が夜風に翻り、ネオン・ライトはメンポに刻まれた「忍」「殺」の漢字を照らし出した!39
2015-04-15 01:10:45「なぜ貴様がここに!」「ドーモ」赤黒装束のニンジャは威圧的なアイサツを繰り出した。メンポの繋ぎ目からジゴクめいた蒸気が迸り出ると、その目は決断的殺意にギラリと輝いた。「……ニンジャスレイヤーです」 40
2015-04-15 01:13:46