不知火に落ち度はない　34（第十七駆逐海賊団編　その２）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「連中は海賊になるっつってるけど、実際どう思う？」 「そうですね。ブラフではないと思います」 「根拠は？」 「日本軍のクルーザーが海賊行為を働いてる、と現地人が知ればどうでしょう」 「当然立派な復讐になる。が、だ」 異論はあった。 #不知火に落ち度はない

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「現状、現地人は襲わないと思う。セブ島にも補給と観光、って感じじゃないかね」 「何故でしょうか？」 「あいつら、基地の金庫から金も持ち出したそうだからな」 はあ、と、深々ため息をつく神通。 気持ちは大変良くわかります。 #不知火に落ち度はない

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「余所に迷惑をかけない、という点ではいいのかもしれませんが……」 「金のある内はな。明日あたり、武器の補給がてら聞き込みを頼む。回るだろ？」 「はい。まずはマーケットを中心に」 市場ですか。 「良い判断だな。食い物か」 「誰でもお腹空きますから」 #不知火に落ち度はない

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「提督はどちらを？」 「大人の遊び場をちょろちょろ回るわ」 あ、神通が首をかしげた。 「カジノとかバーとかだよ」 「その、未成年ですよね……？」 うむ。そう思うのが教官の判断だろうが。 「規律から抜け出したんだ。まずは酒飲みたいだろ」 #不知火に落ち度はない

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「それは……わからなくもないですが、可能性は薄いのでは？」 「お前んとこの生徒は、先生がしっかりしてるからな」 あ、ちょっと赤くなった。 照れた模様。 「俺の場合、自由にしていいっつわれたら、まずはバーで一杯。カジノで小遣い稼ぎさ」 #不知火に落ち度はない

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で、バーについてるストリップで堪能。 元気がありゃ、そのまましけこみまでセットである。 海軍なんて命がけの仕事してると、そうなりやすい。 沖縄とか見りゃわかんだろ、って話だ。 「提督は……その、そう言う経験が？」 「生まれたときから士官してねえしな」 #不知火に落ち度はない

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落胆させたか？ 少し伏し目がちになっていた。 「だから羽目を外したいトコの予測はつく。経験って大事だぜ」 「それは──」 言い淀むが納得はしたらしい。 「その。おつきあいしますか？」 え、そう来る？ あ、いえ。 そのですね。神通教官殿。 #不知火に落ち度はない

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おそらく神通は、俺がどういうトコ行くか予想してない。 いや、調査は真面目にしますよ。 事情通そうな奴が居るだろうしな、大方。 だがしかし、だがしかしだ。 可愛い姉ちゃんが脱いでケツ振ってるバーに連れて行こうもんなら卒倒しかねん。 #不知火に落ち度はない

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そうなったら最後である。 神通をそんなエロバーに連れ込んだなんて知ったら、地球の裏側からでもあの川内という生物がやってくる。 下手すると近くに来てる可能性もある。 ありえねえとは思う。 だがあの飛び抜けたバカならやりかねんという可能性は捨てきれない。 #不知火に落ち度はない

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あと、本音。 任務も良いが、本場ストリップ行きたい。 めっちゃ行きたい。日本の枯れたストリップじゃなくて、バーでくるくる回りながらオープンセサミーなの見たい。 モグリが自慢してやがんだよ。本場は最高だぜ！ ってな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「や、なんつーかアレだ。下町方向巡りになるから、あんま治安良くないぞ？」 「では、護衛が必要ですね」 あれっ。 「あと、すけべいな客も多分いるぞ」 お、少し引いたな。 「二人連れなら平気ではないでしょうか」 そう来る！？ #不知火に落ち度はない

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「それに、海外のバーで飲んだことはないので、興味がないわけでもなくて。それに先程──」 サボり生徒が出てくる、とのお話が引っかかってる模様です。神通教官。 「疑うわけではありませんが、未成年の飲酒は……」 「あー……海外だとその辺緩いしな」 #不知火に落ち度はない

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実際、デリケートな問題です。 フランスではワインが、ドイツではビールが、そしてロシアではウォッカが水というのが定番だ。 それにまあ。ストレスの溜まる命がけのお仕事だしな。 俺は目を瞑るタイプなんですわ。飲酒運転とかは大いにNoだけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「郷に入っては郷に従えってなると未成年OKもあるが、そこはさておき、だ」 セブ島だと、路上飲酒が禁止とかはあるらしい。警官のお小遣い稼ぎ用。 「酔っ払いの相手する羽目になるから、そういうのに慣れてねえときついぞ」 「それなら大丈夫です」 えっ。 #不知火に落ち度はない

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姉と妹で、そこはよく鍛えられてますから。 そう、神通は少し恥ずかしげに言った。 うっわ、うっわ。もしかしたらもしかして神通。 酔っ払ったあの二人の相手を一人でしたことあんの？ うっわー、うっわー。俺絶対ヤダ。 俺ならストレスで動かなくなるわ。 #不知火に落ち度はない

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「それにその。挟まれるとお酒を勧められますから」 「……。飲める口だったのな、神通」 コテン、と行く不知火の師ゆえ、あんまり強そうに見えなかった神通だが。 案外いける口であると判明した。 日本酒とか似合いそうではあるな。確かに。 #不知火に落ち度はない

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「意外ですか？」 「結構。俺は洋酒派だけど神通は？」 「雰囲気だけ、楽しんでる派です。味にこだわりがあまりなくて」 なるほど。バーに連れてってやりたいタイプだな、これ。 「それに無理に飲みたいわけでもないです。下町までどうやって行かれるんです？」 #不知火に落ち度はない

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あ。しまった。そこすっぽ抜けてたわ。 バーと言えば、酒を飲まないと始まらないが。 足がないことにゃ、到底帰れないわな。 つまりあれですよ神通さん。 わかりやすく言えば、護衛と足、両方やってくれるつってるんですね。 あと酔っ払いの相手も、任せてと。 #不知火に落ち度はない

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雰囲気だけ楽しむ、ってことはそういう符丁な訳ですか。 場合によっては飲めるから心配要らない、と。 すんげえ気遣われてるデスねこれ。 浜風、お前も先生って呼んだ方がいいぞこれ。 メスゴリラとは違う気の使い方してくれて、なんか申し訳なくなってきた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ただ、そいつは正直ありがたい。 流石にもうストリップは避けなきゃならんが、足になってくれるのはでかい。 運転できて、酒もいける。 ストリップは行きてえ。 ストリップは行きてえけど。 調査もコミってのは本当の話だし、目的を果たすには十分だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

よし。ストリップは事件解決後ってことにしよう。 無事事件解決したら一人で行こう。そうしよう。 ストリップは後回し。 ストリップが待ってる。 ご褒美のストリップ。 自己欺瞞完了。 ストリップの誘惑を振り切ってこれからの算段を立てよう。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「んじゃ、市場で情報収集頼む。俺も武器調達ついでに警察関係に話を聞いてくる」 「その後、夜に下町のバーですね」 「おう。ガキどもの寝かしつけが終わってからな」 「その──」 ん？ 何かな？ 神通教官殿。質問は受け付けるが。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「不謹慎ですが。少しだけ、楽しみにします」 ぽそ、と神通はそれだけ呟き。 ぱっと座っていたベッドから立ち上がり。 そそそそそ、と入り口まで移動してしまったわけで。 「で…では。不知火さんを連れて、市場を回ってきます」 「お、おう。お願いします」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そしてぱたりと閉じるドア。 うっわ うっわ。 あのですね 神通教官殿。 そういう青春な反応は、俺も照れるからちょっと。 止して貰って構いませんでしょうか。 そんなことを思いつつ、広げた地図をしまい込んで出立準備をするのであった。 #不知火に落ち度はない