〈終わりなき日常〉は永久に終わらない  3・11後の宮台真司

社会学者、宮台真司先生の3・11後の言説の軌跡を追ってみました(矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の要約あり)。(文中敬称略)
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倉沢 繭樹 @mayuqix

演技をやめて脱力する。その「盛り場」ならぬ「癒し場」が、96年を境に「死んで」いく。宮台は語る。「僕は同時期の『SPA!』に『地元化/お部屋族化』と記しました。社交的な子がセンター街には行かずに、首都圏だと町田・柏・西船橋・浦和・立川に滞留するようになる(地元化)と同時に、

2015-05-23 02:12:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

北海道から沖縄まで同時多発的に、24時間出入り自由な『若衆宿』的な友達の部屋にタムロするようになります(お部屋族化)」。その背景のひとつに、クラスでリーダー的存在だった「援交第一世代」の女子高生のフォロワー「第二世代」に自傷系の子が多く、援交がダサいと見なされるようになり、

2015-05-23 02:13:01
倉沢 繭樹 @mayuqix

世代が交代したという事情があった。「かつては『渋谷的風景』と、僕がAVギャルや援交ギャルの量産地として頻繁に言及した『16号線的風景』(※スーパー、パチンコ屋、家電量販店、消費者金融等々のチェーン店で埋め尽くされた風景の喩え。東京郊外を走る国道16号線がその典型である)は、

2015-05-23 02:13:34
倉沢 繭樹 @mayuqix

明確に異なりました。風景のみならず人の風体も異なりました。それが同じになりました。全てが『渋谷的』になったのではない。全てが『16号線的』になりました。これは一般にグローバル化が帰結したデフレ経済の結果だとされますが、『地元化/お部屋族化』という文化現象の変化が大きいのです」。

2015-05-23 02:14:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

宮台は沈痛に語る。「『盛り場』も『癒し場』も欠いた〈スーパーフラット〉な『16号線的風景』の全国化こそが、〈終わりなき日常〉の第三レイヤーです。第一レイヤーが『〈自己〉の時代』の永続。第二レイヤーが『様々なる意匠』の永続。これらから逃れるべく、

2015-05-23 02:15:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

僕は〈まったり革命〉的な『癒し場』としてのホットスポットに希望を託したのですが、それが消えた挙げ句に、前面に出てきた第三レイヤーが〈スーパーフラット〉の永続というわけです」。  77年から始まる「〈自己〉の時代」以降、ナンパ系とオタク系の間には優劣関係があると思われてきた。

2015-05-23 02:16:06
倉沢 繭樹 @mayuqix

ところが96年から援交を含めた性愛への過剰コミットがイタいと感じられはじめる。そこから出てきたのが、異性(オヤジ)の性的視線を遮断するツールとしてのガングロだ。こうしたナンパ系の地位低下と同時期にオタクの地位上昇が生じる。単にナンパ系の低下による相対的上昇ではない。

2015-05-23 02:16:55
倉沢 繭樹 @mayuqix

90年代半ばまでに一部オタクのオシャレ化が生じ、それとは別にパソコン通信やインターネットの拡がりで、薀蓄を競う〈オタクの階級闘争〉に代わって〈オタクネタの戯れ〉が拡がる。ナンパ系がイタくなり、オタク系がコミュニカティブになった結果、

2015-05-23 02:17:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

96年以降ナンパ系とオタク系の間に優劣関係を想定するコミュニケーションが一挙に廃れる。  宮台は言う。「〈場所のスーパーフラット化〉に続いて、ナンパ系とオタク系の優劣関係消滅という〈人のスーパーフラット化〉が生じましたが、

2015-05-23 02:18:23
倉沢 繭樹 @mayuqix

これは愛の絆(をはじめとする人間的紐帯)に期待しないという〈心のスーパーフラット化〉と相即している可能性があります。とすれば、〈終わりなき日常〉の第三フェーズである〈スーパーフラット化〉は、想像を絶した深さと拡がりを持った問題なのかもしれません」。

2015-05-23 02:19:05
倉沢 繭樹 @mayuqix

「結論。〈終わりなき日常〉は永久に終わらない」。

2015-05-23 02:19:46
倉沢 繭樹 @mayuqix

■それでも「クソ社会」を生きる  「愛のキャラバン」の登壇者のひとりである公家シンジは、『「絶望の時代」の希望の恋愛学』中のコラムでこう書いている。「ぼくたちがいるこの社会はクソである。

2015-05-23 02:20:43
倉沢 繭樹 @mayuqix

(中略)これは宮台真司氏の感覚に根ざした強固な価値観なのだ。ぼくは彼が吐き捨てるようにこういった台詞を言い放つ姿を何度も目にしている。彼は現代社会に強い不快感を持っている」。

2015-05-23 02:21:11
倉沢 繭樹 @mayuqix

僕は、かつて宮台が、江戸時代から380年も続く人形芝居の結城座によるアングラ劇『アンチェイン・マイ・ハート』を観劇した際のコメントがとても印象に残っている。

2015-05-23 02:21:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

「この芝居は、『私たちはなぜ、生が殺伐とした事実性でしかないような、砂を噛むがごとき毎日を送っているのか』という問いに、概念的にも体感的にも、感動的なほど明確な答えを提示しています。答えは『縦の力』を失ったからというもの」。

2015-05-23 02:22:41
倉沢 繭樹 @mayuqix

「縦の力」とは宮台の造語で、非日常的事態に対処し得るカリスマのような存在に宿る力のことで、社会に還元できない。対して「横の力」とは、通常の恒常的な人間関係や社会関係を維持する力。宮台のコメントを僕なりにパラフレーズすると、

2015-05-23 02:23:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

「私たちの社会は、『非日常性』を上手に導入してきた過去から遥か遠ざかってしまい、その結果、殺伐とした『日常』だけが延々と続く砂漠と化した」となる。たとえば、これが「クソ社会」の実相だ。だが、宮台は、素朴な伝統回帰などあり得ないと強く主張してきている。

2015-05-23 02:23:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

共同体が空洞化したときにこそ、その埋め合わせとして「伝統」が呼び出されるが、それは「反省された伝統主義」であり、再帰的であるほかない。『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』でも、汎システム化に抗うためにも、システム化による「設計」を行うしかないのだとの認識が示されている。

2015-05-23 02:24:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

そう。僕たちの社会はもはや「ベタ」に生きられない。  『終わりなき日常を生きろ』から20年。宮台はラジオで、「ひたすら日本社会の劣化を見てきた20年だった」と語っていた。

2015-05-23 02:25:50
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかし、宮台はしばしば、師匠である小室直樹のこの言葉を引用する。「宮台君、社会がダメになると人が輝く。昔からそうだから安心したまえ」。宮台の「もう日本社会はダメですね」との言葉に答えたものだ。

2015-05-23 02:26:35
倉沢 繭樹 @mayuqix

〈終わりなき日常〉の中で、この「クソ社会」で、僕たちはこの小室の言葉を、宮台真司と共に噛みしめねばならない。

2015-05-23 02:27:11
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