〈終わりなき日常〉は永久に終わらない  3・11後の宮台真司

社会学者、宮台真司先生の3・11後の言説の軌跡を追ってみました(矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の要約あり)。(文中敬称略)
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倉沢 繭樹 @mayuqix

■〈巨大なフィクションの繭〉を出よ  社会学者の宮台真司は、自身が原発推進派であったことを公言している。しかし、日本の原発政策・行政のデタラメさを知って、日本には原発をマネージする能力がないことを痛感したという。

2015-05-23 00:02:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

「ぼくは原発の住民投票運動にかかわる中で『民主主義の本質は多数決ではなく、〈参加〉と〈包摂〉だ』と言い続けてきました。〈参加〉をパラフレーズすれば、〈任せて文句を言う〉ならぬ〈引き受けて考える〉作法。巨大システムに思考停止でお任せしていたら、

2015-05-23 00:03:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

福島第一原発事故のような災害が再来します。行政や企業による情報公開は大切ですが、引き受けて考える作法がない限りダメ。『原発絶対安全神話』『全量再処理神話』『原発安価神話』のような日本にしかない〈巨大なフィクションの繭〉に包まれてしまいます。

2015-05-23 00:04:01
倉沢 繭樹 @mayuqix

〈巨大なフィクションの繭〉を破るには〈任せて文句を言う〉作法から〈引き受けて考える〉作法にシフトする必要があります。  〈参加〉が〈巨大なフィクションの繭〉の克服だとすると、〈包摂〉は〈分断された地域共同体〉の克服です。

2015-05-23 00:06:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

一口で言えば、ポジティブな意味での『われわれ』意識を継続するために必要な営みをすること。ぼくが請求代理人としてかかわった『原発都民投票条例の制定を求める直接請求』の署名運動における条例案は、永住外国人や高校生も住民投票への参加資格を与えます。単なる権利配分の拡張じゃない。

2015-05-23 00:07:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

住民投票の本質は、投票に先立つ熟議、つまりワークショップや公開討論会にあります。間違っても政策人気投票じゃありません。参加資格を拡張する狙いは、世代や属性で分断されがちな住民が、『若者はダメかと思ったら、すごいヤツもいるな』『在日はダメかと思ったら、すごいヤツもいるな』

2015-05-23 00:08:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

という気づきを経て『われわれ』意識を抱けるようにするところにあります」。  宮台は、「原発都民投票条例の住民直接請求」請求代理人や「みんなで決めよう『原発』国民投票」共同代表などとしての活動において、一貫して「熟議」の必要性を強調している。

2015-05-23 00:08:57
倉沢 繭樹 @mayuqix

そのスローガン的なフレーズは「原発をやめられない社会をやめる」だ。原子力ムラの情報操作と宣伝によって作り出された〈巨大なフィクションの繭〉に対して、私たちは意識的にか無意識的にか強く抵抗してこなかった。ネットの発達により、積極的に関心を持てば、様々な情報を得られたはずなのに、だ。

2015-05-23 00:10:01
倉沢 繭樹 @mayuqix

その状態では「原発をやめられない社会」のままである。「原発をやめられない社会をやめる」こと。そのための試みが住民投票であり、その中核が熟議である。宮台が熟議を語るとき、参照しているのは政治学者のジェイムズ・フィシュキンの議論だ。フィシュキンは熟議民主主義の権威で、

2015-05-23 00:11:01
倉沢 繭樹 @mayuqix

「討論型世論調査(Deliberative Polling:DP、以下DP)」の考案者のひとりだ。DPとは「通常の世論調査とは異なり、一回限りの表面的な意見を調べる世論調査だけではなく、討論のための資料や専門家から十分な情報提供を受け、小グループと全体会議で

2015-05-23 00:13:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

じっくりと討論した後に、再度、調査を行って意見や態度の変化を見るという社会実験」である(慶應義塾大学DP研究センター)。このDPにおいて、重要な役割を担っているのが、DPの趣旨を理解し十分に訓練されたモデレーターで、小グループでの討論の司会をする。

2015-05-23 00:13:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

宮台は、このDP同様熟議のひとつの方法であるコンセンサス会議のファシリテーター(モデレーター)を務めたことがある。コンセンサス会議とは、1985年にデンマークで生まれた市民参加のテクノロジー・アセスメントの方式だ。医療や農業における遺伝子操作技術など、

2015-05-23 00:15:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

高度な科学的知見が社会に及ぼす影響を人々が市民参加的に議論し、合意(コンセンサス)を生み出すための会議である。専門家と一般市民が意見を交換し合い、最終的には市民が合意を形成する。  宮台は言う。民主主義とは自治であり、自治とは〈参加〉と〈包摂〉であり、

2015-05-23 00:16:30
倉沢 繭樹 @mayuqix

〈参加〉と〈包摂〉は熟議を不可欠とする。これが民主主義の本義なのだ、と。〈巨大なフィクションの繭〉は、民主主義の本義に立ち返るとき脱出可能となる。そして「原発をやめられない社会をやめる」日が訪れる。

2015-05-23 00:16:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

■沖縄問題の責任の半分は沖縄の人たちにある  宮台が大学で最初に書いた社会学のレポートは「八重山諸島の祖霊崇拝」がテーマだったという。1999年に激しい鬱状態に陥って以降、沖縄に何度も足を運ぶようになったらしい。「内地の人が沖縄に来た時に持つイメージには

2015-05-23 00:18:43
倉沢 繭樹 @mayuqix

二種類あると思うんです。ひとつはリゾート的な『明るい沖縄』のイメージ。もうひとつは何かわからないけれど『暗い沖縄』のイメージ。その時にぼくが沖縄に抱いたイメージは、後者でした。それは、ぼくが沖縄の歴史や現実について詳しく知っていたからというわけではなく――

2015-05-23 00:19:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

どちらかというと当時はあまり知らなかったんですけど――自分の心象風景と強くシンクロしたこともあって、そういう印象を持ったのかもしれません」。  宮台は、単なる米軍基地反対は思考停止だと言う。基地返還を現実化したいなら、「三つの柱」が必要だと提言する。

2015-05-23 00:20:50
倉沢 繭樹 @mayuqix

第一は、立地地域の町村レベルから、県レベルに到るまで、住民投票を積み重ねること。アメリカが民主主義を外交の武器としている以上、民主的な住民投票は強力だからだ。第二は、沖縄にある全米軍基地について現実的な跡地利用計画を立てること。そのことで基地が沖縄から

2015-05-23 00:21:46
倉沢 繭樹 @mayuqix

どんな未来の機会を奪っているのかを内外に明示しながら、沖縄県が日本政府や米国政府と交渉にあたる。第三は、沖縄の頭越しでなされる日米政府の交渉事を原則として認めないこと。たとえ沖縄にとって有利な協定合意であっても、必ず事前の沖縄への打診を要求する。そのことによって、

2015-05-23 00:22:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

沖縄が、中央へのぶら下がりではなく、圧倒的な共同体自治への要求を持つことを、内外に示せる。  宮台はこんなエピソードを語る。「国交省の官僚たちと話していてよくわかったことがあります。それも衝撃でした。沖縄のことをそれなりによく知り、その重要性もわかったうえで、

2015-05-23 00:23:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

いや、わかっているからこそ、徹底的にバカにしている役人が少なくないことです。今回も仲井眞知事の辺野古埋め立て承認をめぐって、新聞で基地に対する反対世論の盛り上がりが大きく扱われています(※2013年12月27日、仲井眞弘多知事《当時》は、米軍普天間飛行場の

2015-05-23 00:25:15
倉沢 繭樹 @mayuqix

名護市辺野古移設に向けた国の公有水面埋め立て申請を承認する記者会見を行った)。しかし、そういう流れの中で出てくる独立論なども含めて、彼らは『あれはすべて隠れバーゲニング(交渉・取引)なんだ。全部カネで片がつく』と言います。ぼくが反論を試みても、彼らに言わせれば

2015-05-23 00:25:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

『結局はカネで片がつくという帰結を、どこよりも沖縄自身が全部わかっているはずだ。だから、沖縄がそういう風に物取りバーゲニングをしている以上、こちらも沖縄の主張をまともに取り合う必要はなく、カネの算段をすればいいだけ』ということになるわけです。それを聞いて、ぼくは

2015-05-23 00:26:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

『ああ、沖縄の基地反対運動は、霞が関からはこのように見えているんだ』と思いました」。  仲井眞元知事のような世代に共通しているのは「ヤマトへの復讐」として「いまのうちに内地から土木でカネをふんだくる」という発想だ。しかし、これがなぜまずいか。

2015-05-23 00:27:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

〈復讐〉のつもりでいるのが、霞が関の役人や永田町の政治家の一部が「どのみちカネが目当て」と徹底的に〈軽蔑〉を向ける。この〈軽蔑〉が本質的なのは、〈復讐〉の意図に基づく敢えてする土木依存が、やがて必ず、余儀なくされた土木依存へと変質し、それゆえ「米軍基地返還も話半分」という

2015-05-23 00:28:39
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