〈終わりなき日常〉は永久に終わらない  3・11後の宮台真司

社会学者、宮台真司先生の3・11後の言説の軌跡を追ってみました(矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の要約あり)。(文中敬称略)
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倉沢 繭樹 @mayuqix

〈軽蔑〉が永続する事態を、自業自得的にもたらしてしまうからだ。役人の一部も、「基地返還もどうせ話半分」という面だけでなく、「シャブ漬け地獄を自ら招き寄せている」という面を強く意識しているということだ。これを宮台は「自律的依存から他律的依存への頽落」だと指摘する。

2015-05-23 00:29:13
倉沢 繭樹 @mayuqix

「『基地がなければアレもできるしコレもできる。なのに基地が立ち去らない。ならば相応な対価を払ってもらおう。機会費用(失われた機会ゆえの損失)の補塡をさせようじゃないか』と『敢えてする依存=自律的依存』から出発します。ところが、やがて必ず、

2015-05-23 00:30:05
倉沢 繭樹 @mayuqix

基地がないと経済が回らないという『余儀なくされた依存=他律的依存』に凋落してしまいます」。  ところで、『これが沖縄の生きる道』での宮台の対談相手の共著者、仲村清司は、きちんと事実を説明している。「県民総所得に占める基地関連収入は復帰当時は15.5パーセントでしたが、

2015-05-23 00:31:20
倉沢 繭樹 @mayuqix

1987年以降5パーセント前後で推移し、現在もその水準です。つまり、基地で食うどころか、基地では食っていけないのが実情なんですね。でも、『沖縄は基地で食っている』という〝迷信〟があまりに喧伝されているせいか、内地にはなかなかその〝事実〟が伝わりません」。

2015-05-23 00:32:09
倉沢 繭樹 @mayuqix

1995年の米兵による少女暴行事件をきっかけとして県民集会が開催され、そこで当時の女子高校生が「軍隊のない、悲劇のない、平和な島を返してください」と訴えて話題になった。仲村はこの訴えについて、県民の受け止め方にズレが生じているような気がするという。

2015-05-23 00:32:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

「人権と生存権を獲得する運動が、いつのまにか、より多くの交付金をひねり出す交渉にすり替わってしまっている」と。これに応じて、宮台は語る。「歴史的経緯があって、いまの沖縄は、交付金をふくめれば、基地依存がたしかに大きい。でも歴史的経緯が別なら、基地に依存しなかったはず。

2015-05-23 00:33:40
倉沢 繭樹 @mayuqix

基地に依存しなかったなら、本来どんな沖縄であり得たか。『いずれは平和な島を取り戻したい』というのは、単なる基地撤去じゃなく、〈本来あり得た沖縄を取り戻す〉ということ。〈本来あり得た沖縄を取り戻す〉ために何が必要なのか。(中略)〈本来あり得た沖縄を取り戻す〉には、

2015-05-23 00:34:25
倉沢 繭樹 @mayuqix

基地の撤去では足りない。基地がなかったら沖縄の人たちはどんな経済活動によってどんな生活を支えたか。それを思い描き、それに近づく活動を、沖縄の人たち自身が責任を持ってするしかない。

2015-05-23 00:35:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

そうした具体的ヴィジョンを思い描かないと、内地から『本気じゃない』と思われます。主観的には本気でも、助けになりません」。

2015-05-23 00:35:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

■「自分に関心を寄せるほど自分の価値が減っていく」という摂理  宮台はつねに、政治を語りながら性愛を語り、社会を語りながら実存を語ってきた。そんな彼は近年、「日本全体の救国はほぼ不可能」だと公言している。「全体」は諦める代わりに「部分」に働きかける活動。

2015-05-23 00:36:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

それが原発をめぐる住民投票運動における熟議の試みであり、性愛を語るイベント「男女素敵化計画・愛のキャラバン」だと僕は思っている。  「愛のキャラバン」ではナンパについて語られるが、一般的なナンパの指南が「番ゲ(電話番号ゲット)からセックスまで」に集中するのに対して、

2015-05-23 00:37:25
倉沢 繭樹 @mayuqix

このイベントではその後の関係性に注目する。「実りのある性愛関係」をつくり維持するにはどうすればいいか。そこを焦点化する。  宮台は、性的に過剰な女子がイタくなったと指摘し、その背景をこう分析する。「93年に始まった援助交際ブームのピークが96年。

2015-05-23 00:38:22
倉沢 繭樹 @mayuqix

これを境に、僕が〈援交第一世代〉と呼ぶリーダー層(イノベーター層&アーリーアダプタ層)が退却。代わりにフォロワー層が参入します。折しも『エヴァンゲリオン』ブームと共振したアダルトチルドレン・ブームもあり、援助交際が自傷ツールだと見なされます。

2015-05-23 00:38:57
倉沢 繭樹 @mayuqix

僕の観察では、マスコミのフィーバーを背景に援交に多数のフォロワー層が参入した結果、それまではトンガリキッズ(中森明夫)の自己提示ツール(かっこいいでしょ!)だったのが、フォロワーの自傷ツールだという格好悪いイメージが広がったので、

2015-05-23 00:39:50
倉沢 繭樹 @mayuqix

リーダー層が一挙に『足抜け』したという経緯だと思われます。(中略)援交から離脱したリーダー層の〈男たちの性的視線を拒絶する〉ガングロ化にシンクロして、〈性的に過剰であることはイタイ〉という意識が日本全国に同時に広がります」。そしてこの援交ブームは、男子の側にも変化をもたらした。

2015-05-23 00:40:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

「96年に僕はゼミの男子学生と以下のようなやりとりをしました。ゼミ男子の7割近くがギャルゲーマニアだと知った僕が、『生身の子とやれないからって、逃げてんじゃねえよ』と言ったところ、今は優秀な数理社会学者となっている教え子が『先生、それは古い見方ですね』と答えました。彼は続けます。

2015-05-23 00:41:16
倉沢 繭樹 @mayuqix

『僕らは女の子とセックスできないからギャルゲーをしてるんじゃありません。セックスなんかいくらでもできます。そういう時代じゃないんです。でも僕らにして見れば、「リアルな女の子が、ゲームの中の子と同じように振る舞ってくれたら、セックスしてやってもいい」という感覚なんですよ』と。

2015-05-23 00:41:55
倉沢 繭樹 @mayuqix

前述したとおり、この96年が援交ブームの頂点。97年からリーダー層女子の退却が生じ、女子の間で性的過剰が自意識のイタさを示すものだとされ始めます。そう。援交に女子の得体の知れなさを見た男子が、セックスできてもリアル女子を忌避し、援交に自意識のイタさを見た女子が、

2015-05-23 00:42:41
倉沢 繭樹 @mayuqix

性的過剰を忌避し始めたわけです。繰り返すと、援交ブームの過剰さは、結果として、女子の〈性的過剰さを忌避する営み〉と、男子の〈リアル女子を忌避する営み〉に繋がりました。それぞれの〈性的退却〉は出発点も経緯もまったく異なるのですが、しかし共通して、

2015-05-23 00:43:23
倉沢 繭樹 @mayuqix

セックスができないから〈性的退却〉に向かったのではないという点が、ポイントです。出発点も経緯も違うと言いましたが、〈リアル女子を忌避する営み〉を示す男子も、ゼミ生が僕に語ったように〈リアルに過剰にこだわるのはイタイ〉という意識を伴いました。

2015-05-23 00:43:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

その意味で〈性的に過剰であることはイタイ〉という意識を示した女子と、〈過剰さというイタサの忌避〉という面でシンクロしていました」。しかし、ここに逆説がある。「〈過剰なこだわり〉を放棄することは、〈島宇宙〉の過剰細分化を抱えた社会システムに適応するという意味で、合理的です。

2015-05-23 00:44:40
倉沢 繭樹 @mayuqix

でも、社会への適応によって、性愛の実りから見放されます。逆に言えば、性愛の実りを獲得したいなら、多少なりとも社会への適応を遮断しなければならないのです」。  ナンパにおいて重要なマインドセットとして、宮台は〈変性意識状態〉に言及する。〈変性意識状態〉とは、

2015-05-23 00:45:31
倉沢 繭樹 @mayuqix

催眠状態の前段階にあたる催眠誘導状態や、薬理成分によってトリップした状態や、激しい身体挙動を伴う祭りの中でのトランス状態や、時間感覚が狂った状態などを指す。しかし、複雑化した近代社会では、こうした〈変性意識状態〉に開かれた身体はノイジーだとして、抑圧されがちになる。

2015-05-23 00:46:05
倉沢 繭樹 @mayuqix

〈変性意識状態〉は「近代の敵」の如き扱いになる。だが、性愛の実りをもたらす〈変性意識状態≒トランス状態〉は〈性への過剰なこだわり〉〈リアルへの過剰なこだわり〉抜きに不可能なのだ。そこで〈社会への適応が性愛への絶望をもたらす〉ような社会を変革することが主題化されることになる。

2015-05-23 00:46:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

「人を入れ替え不能な人格としてより、まるで入れ替え可能な道具のように扱うこと」を宮台は〈物格化〉と呼ぶ。「ナンパできない自分から、ナンパできる自分へのワンランクアップ」による自己肯定度の上昇を目的とした「自己啓発」的な振る舞いで数を稼ぐ男のナンパ。

2015-05-23 00:47:10
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