「一作だけのまぼろしのミステリ作家」シリーズ
時無ゆたか「明日の夜明け」/地震により外界から隔絶された夜見月高校。脱出を試みるも謎の霧がそれを阻む。そうこうしているうちに時の止まった校舎で仲間が次々と殺されていき……という本作の粗筋を聞いてぴんときた人もいることだろう。某作品と被る題材を作者がどう料理したかに注目してほしい。
2011-04-05 20:07:17以上三作品。この中で個人的に好きな作品を選ぶとするなら時無ゆたか「明日の夜明け」になるだろう。ミステリとしての完成度で言えば三作中最も低いが、逆に最も先が気になる作品はどれか? と問われたら間違いなく本作である。異世界ミステリの傑作とはいかないまでも良作に入る部類ではあると思う。
2011-04-05 20:08:34「人に勧めるには注意が必要な作品」シリーズ番外編「一発屋作家編」第6回をお届けする。今回取り上げるのは日向亘、澤木喬、小貫風樹の三人。このうち小貫風樹は厳密にはプロ作家とは言えないかもしれないが、ミステリセンスで言えば最もズバ抜けているのは間違いないだろう。
2011-06-06 21:07:21日向亘「世紀末大バザール 六月の雪」/本作はある意味型破りである。というのも本作に登場する密室トリックは既存の作品からの借用であるとの宣言と共に中盤であっさり解かれてしまうからだ。本格ミステリと思って読むと間違いなく肩透かしだが、本格ミステリ風小説と割り切れば面白い作品である。
2011-06-06 21:09:10澤木喬「いざ言問はむ都鳥」/植物をテーマにした連作短編集である本作は、謎と真相のとんでもない結び付きこそ自分の求める日常の謎であると固く信じて疑わない人にとっては打ってつけな作品と言えるだろう。ただ、のんびりとした語り口とは裏腹に真相が黒いのが好みの分かれるところである。
2011-06-06 21:10:50小貫風樹「とむらい鉄道」/「新・本格推理03」収録の本作は2004年の日本推理作家協会賞短編部門の候補作でもある。次々と赤字路線を爆破していく犯人を周到に張り巡らせた罠で追い詰める名探偵。プロット上仕方ないとはいえ、黒すぎる探偵役のキャラは合わない人にはとことん合わないだろう。
2011-06-06 21:11:52以上三作品。このうち自分が好きな作品を選ぶとするなら小貫風樹「とむらい鉄道」になるだろう。ちなみに「新・本格推理03」に収録された小貫風樹の短編は「とむらい鉄道」の他に「稷下公案」「夢の国の悪夢」の二編があるが、いずれもチェスタトンが好きと語るこの作者らしい作品に仕上がっている。
2011-06-06 21:12:49なお「新・本格推理03」の作者アンケートで小貫風樹は今後書きたい作品、目標について「友成純一に絶賛される本格ミステリ」(!)と答えているが、個人的に「夢の国の悪夢」は友成純一の短編「地獄の遊園地」(「狂鬼降臨」収録)にヒントを得たのではないかとひそかに思っている。
2011-06-06 21:13:42