掌小説語り~自作つぃのべる集21~

自作のつぃのべるまとめです。 2014年3月分
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リュカ @ryuka511

空回りしたのは僕の想い、じゃなくて、僕を取り巻く世界の方、なのだろう。僕を取り残して世界は進んでいく。いつから、どこから、僕の世界の歯車は噛み合わなくなったんだろう。君が僕の手の届かない世界にいるなんて。でももう全て手遅れ。空回りする世界から、君の幸せを願う。#twnovel

2014-03-23 23:56:17
リュカ @ryuka511

指先に浸した紅色の顔料をつぅと唇に乗せる。鏡に映るのは憂いを帯びた顔。これではいけないと妖艶な笑みを作る。いつからこんな表情が出来るようになったか覚えていない。酒と舞と嬌声に満ちる日々。馴染みの客がそろそろ来る頃だ。身請けしてやるなんて、真に受けてはいけない。 #twnovel

2014-03-24 22:54:51
リュカ @ryuka511

悪い妖怪を封印してあるという洞窟を興味本位で訪れた青年は、年端の行かぬ少女に縋るように見上げられ戸惑う。「ここから連れ出して。」掴んだ手首は砕けそうな位細い。こんな華奢な少女が悪い妖怪だなんて何かの間違いだ。青年は気づかない。手を引く少女がニタリと笑った事に。 #twnovel

2014-03-25 22:18:54
リュカ @ryuka511

こんな森の奥に子供だけで暮らせるのって?子供だからこそ生きられるのよ。両親はどうしたのって?さぁ知らないわ。気付いたら私達だけだったのよ。暖炉の中の物は何かって?子供だと見くびった愚か者の末路よ。あなたはどうかしら?赤く爛れた暖炉の死体はもう何も聞いてこない。 #twnovel

2014-03-26 23:40:29
リュカ @ryuka511

吸血鬼が眠っているという棺を見つけた。ずっと探していた棺に青年は縋り付く。あの日、逃げ遅れた彼女を救えなかった。今更助けた所で許されるのか。震える手で棺を開けると中はもぬけの殻だった。泣き崩れ青年は銀の杭を手にする。「許してもらえないだろうが、今傍に行く。」 #twnovel

2014-03-27 23:32:53
リュカ @ryuka511

夕立に見舞われ酒場へ駆け込んだ。戦の爪痕が残る街は、殺伐さや物悲しさで混沌としている。王の急死で戦は突然終わった。エライ人達の間で何が交わされたのか。正義も悪も、あの戦の意味さえ解らないまま、俺達は平和の中に放り出された。淡々と呷る酒は、ただ喉を焼くばかり。 #twnovel

2014-03-28 23:16:54
リュカ @ryuka511

私と君は同じ頃にここへ来た。下働きから客を取る歳になった時、君が穢されると思うと気が狂いそうになった。君を穢らわしい手から守るんだ。君を買った客が君に手を出す前に、私が手を下す。罪も穢れも私が背負う。何も知らぬまま、君は微笑んでいて、君だけは無垢なままでいて。 #twnovel

2014-03-30 00:30:52
リュカ @ryuka511

科学の発達により面倒な魔術は廃れていく。魔術師の家に生まれた少年は未だに魔術を駆使する家族が不思議だった。ある日、怪我をした彼に父が治癒魔法を施す。「科学は頭で、魔術は心で使うものだ。いずれお前にも解るだろう。」癒えていく傷と裏腹に父の言葉は少年の心に残った。 #twnovel

2014-03-30 23:04:41