掌小説語り~自作つぃのべる集~40

自作つぃのべるのまとめです。 2016年8月分。
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リュカ @ryuka511

新米魔女の使い魔になった黒猫は、強力な彼女の魂をいつ喰らおうと舌舐めずりする。だがそれは、力を制御出来ない彼女の有り得ない失敗をフォローする日々の始まり。ある日、自嘲する黒猫に彼女は「珍しい」と笑った。黒猫もたまには笑うさ。俺がお前を気にいるなんて笑うしかない。 #twnovel

2016-08-02 00:09:29
リュカ @ryuka511

人類が滅びた後、地上は新たな知的生命体が文明を築き栄えていた。人類の歴史を知るべく研究が始まった頃、人類の声が遺された端末が見つかる。研究者が見守る中、音声が再生された。"I love you."その意味は解らないが、聞いた者の心を切なく締め付ける響きだった。 #twnovel

2016-08-03 00:38:48
リュカ @ryuka511

「お前いつの間に!」「あら?私はこちらですよ」「何っ!」そっくりな2人の戦巫女が敵陣を翻弄する。味方を癒し敵を拘束する力を秘めた糸を巧みに操り、華奢な体躯で戦場を駆ける。艶やかな黒髪に血を浴びるのも厭わず。全ては軍を率いる戦人の為。勝利を、大陸の覇権を我らが友へ #twnovel

2016-08-04 00:21:25
リュカ @ryuka511

国境沿いの谷は、竜など獰猛な生物が跋扈する死の谷と呼ばれた。魔女が国境を行き交う者を捕らえ、猛獣の餌にしているのだという。 #twnovel 密猟者を捕らえる魔女に、竜達はもうお前の手を汚させたくはないと告げた。涙ながらに別れを告げ死の谷から消えた魔女を、獣達は生涯忘れなかった。

2016-08-05 01:12:44
リュカ @ryuka511

朝早く、道場へ歩きながら青年は空を仰ぐ。自分は武士だ、刀に生き忠義に死ぬ者。父も祖父もそうして生きてきた。戦が近いと言われる今、自分もその覚悟を改めねばならない。戦の噂に不安げな幼馴染の顔が浮かび激しく首を振る。おなごにうつつを抜かしている時ではないというのに。 #twnovel

2016-08-05 23:57:24
リュカ @ryuka511

探偵事務所に来た子供が弟子にしてくれと言う。現実と小説は違うと話したが理解するには幼いようだ。仕方なく尾行や隠し撮りのやり方を教え、判明した事実を依頼人に話す所にも立ち会わせた。現実は醜いって解ったか?彼は未知の世界に目を輝かせてた。あぁ、昔の俺もこうだったな。 #twnovel

2016-08-07 00:24:43
リュカ @ryuka511

航行中の豪華客船にアサシンが乗っているとの入電に船内は大混乱に陥った。船客は命を狙われる理由に覚えのある者ばかり。互いを疑い諍いが始まる。殺られる前に殺ってしまえと誰かが言ったのを引金に、船内は殺戮の場と化した。 #twnovel 船外から偽の電信を送ったアサシンは容易いと笑う。

2016-08-07 23:51:09
リュカ @ryuka511

偉大なる魔術師と自ら名乗る男は、実の所ただのペテン師だった。本当の偉大なる魔術師は、彼が使い魔と呼ぶ黒猫である。前足で器用に五芒星の魔法陣を描く黒猫が、使い魔の身に甘んじているのは訳がある。ペテン師に喝采を送る人々は気づかない。街に黒猫の数が増えている事に。 #twnovel

2016-08-09 00:35:05
リュカ @ryuka511

夏になると人は怪談話に興じるから忙しくなる。真に迫る怪談話は人の世界と夏の妖怪世界を繋げてしまう。交わってはならない世界の距離を守るのが私の務め。人からも妖怪からも弾かれた私の、唯一の居場所は世界の狭間。本当は世界などどうでも良くて、自分の居場所を守りたいだけ。 #twnovel

2016-08-09 23:26:32
リュカ @ryuka511

私の身代わりとなって監獄に囚われた従者を開放すべく動き出す。史上最悪の反逆者として公開処刑の準備が進んでいるらしい。誰が反逆者だと?私は誰の支配下にも無い。私こそが支配者だ。私の右腕でもある従者を返してもらおうか。 どちらが真の支配者かはっきりさせてやる、神よ。 #twnovel

2016-08-10 23:48:33
リュカ @ryuka511

魔女は勇者を見据え笑う。「剣術では戦士に劣る、魔法は魔法使いに敵わない。治癒術も僧侶の方が上。ねぇ、貴方を勇者たらしめるものは何かしら?」俯く勇者の顔を覗き込む。「ごめんなさい、本当のことを言ってしまったわね」惑わされるなと叫ぶ仲間の声は、勇者にはもう届かない。 #twnovel

2016-08-11 23:19:16
リュカ @ryuka511

魔界へつながるアビスゲートは、君を魔界に残し閉じてしまった。止まない耳鳴りはいつかの君を呼ぶ声に似て、自責の念を募らせる。あの時君は笑っていた。これが自分の役目だからと。君だけを犠牲にして得た平和ならいらない。君を必ず見つけて連れ戻す。それまでどうか無事でいて。 #twnovel

2016-08-13 00:06:08
リュカ @ryuka511

君の背の翼の名残にキスを落とす。後悔してないかと問えば、何を悔いる必要があると怒られた。優秀な天使の君を、僕のせいで堕天させたのに。怒った顔のまま君は言う。「まさか、君が後悔してるのか?」そんな事は無いと言おうとした唇を塞がれる。「堕天が不幸だと誰が決めた?」 #twnovel

2016-08-13 23:41:03
リュカ @ryuka511

金メダルが実はメッキだと知り、ちょっとだけがっかりしたのは子供の頃の話。今、表彰台の一番上で、キツかった練習の日々や、応援してくれる人達の声や顔を思い返す。胸にかかったメダルは、それらの重みを感じさせてくれた。純金じゃなくたって、それ以上の価値がある。 #twnvday

2016-08-15 00:13:50
リュカ @ryuka511

見習い魔法使いの少年は口を尖らせた。「魔法なのに背を伸ばすことすらできない」なんだそんな事かと笑う師匠に少年は更に拗ねる。「こんなに小さくては貴方を守れない」「そういう台詞は大人になるまでとっときな」なら、こんな台詞が似合う立派な魔法使いになるから、待っててよ。 #twnovel

2016-08-16 00:33:20
リュカ @ryuka511

「必ず戻ってくる」そう言って旅立ったあの人は、未だ戻ってきません。魔王軍の侵攻は進み、不安と恐怖に包まれて世界は殺伐としてしまいました。魔王討伐に向かったあの人の消息を、誰も知ろうとしません。ならば私が行きましょう。世界を憂いた唯一の人を愛したのは、私だけだから #twnovel

2016-08-16 23:46:35
リュカ @ryuka511

王女を守り勇者達は旅をする。だがある日、王女は馬車を飛び出し勇者の隣を歩き出した。慌てる勇者達を王女は見据える。「皆様の背中はもう見飽きました。剣と魔法の心得はあります。何より、滅ぼされたのは我が王国」苛烈な戦いを知るその瞳に勇者は頷いた。「一緒に魔王を討とう」 #twnovel

2016-08-17 23:36:16
リュカ @ryuka511

「お詫びは結構だから、大人しく殺されてくれ」銃口を向けた俺に奴は震え上がった。俺が生きているとは思いもしなかったんだろう。青ざめた顔で「仕方がなかったんだ」と繰り返す。そうか。なら俺がお前に殺意を抱くのも仕方がない事だよな?免罪符は無効だ。弁解は地獄で聞いてやる #twnovel

2016-08-19 00:22:40
リュカ @ryuka511

棺を花で満たす。貴方が好きだった花で。人と吸血鬼が共生し、愛し合うのに何の障害も無くなった今でも、貴方は「寿命の長い吸血鬼は孤独だ」とよく言っていた。私が先に死ぬのだと思ってたのに。でも私も寿命が近いから孤独な時間は短くて済む。それは貴方が遺した愛の証なんだろう #twnovel

2016-08-20 00:37:56
リュカ @ryuka511

悲愴な面持ちで歌うのは白髪の少年。魔女の呪いで成長を止められ、永遠に少年のまま精神だけが老成していく苦しみに、彼の髪は真っ白に染まったという。やがて彼は自らの悲劇を叙事詩に仕立て、歌いながら旅を始める。旅の空に、いつか呪わしきこの身が朽ち果てる事だけを願って。 #twnovel

2016-08-21 00:08:26
リュカ @ryuka511

「あれ?これ出番なくない?」歴戦の戦士は愕然とする。旅慣れない勇者を導いてきた。しかし勇者は次第に頭角を現し、魔法使いとの見事な連携で魔物を蹴散らす。俺はもうパーティを抜けようと思った頃、旅の記録をつける賢者の充足した顔で気付く。俺の役目はまだ終わっちゃいない。 #twnovel

2016-08-21 23:16:55
リュカ @ryuka511

剣を構えると青年は嗤った。罪人や売られた者達が戦い殺し合う闘技場で、生き残る術は相手を殺す事だけ。富裕層の見世物に批判の声も上がったが、売られて来た彼は嗤う。殺し合いを楽しむ奴らも批判する奴らも、俺からすれば同じだ。戦う、それは生きるため。こんな世界への復讐だ。 #twnovel

2016-08-23 00:26:16
リュカ @ryuka511

魔王を討ったあなたを人々は英雄と讃えるだろう。だが時が経つにつれ人々はあなたを恐れるだろう。力への恐怖はどうしたって発生する。掌を返しあなたを忌避する人々をどうするか。心のままにすればいい。何も間違いではなく正しくもない。それまでがあなたの戦いだというだけの事。 #twnovel

2016-08-23 23:37:29
リュカ @ryuka511

「王の事でお話が」そう言って王子をバルコニーへ呼び出した。王の暴君ぶりに民衆の不満は高まり、王子の一刻も早い即位を願う声も上がる。急がなくては。王子は約束の時間きっかりに現れ私を探す。闇夜に紛れ、その背中を押して突き落とす。国を憂う王子様、貴方は邪魔なんですよ。 #twnovel

2016-08-24 22:48:49