掌小説語り~自作つぃのべる集11~

自作つぃのべるまとめです。2013年5月分。
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リュカ @ryuka511

「街まで送るわ」彼女は男の手を取った。今はまだ、彼の為に自分が出来る事はそのくらいしか無い。握り返された力強い手に鼓動が高鳴る。その手が熱いのは、彼もまた同じ気持ちでいるからだろうか。「また会いに来てもいいか?」男の言葉に彼女は大きく頷いた。 #twnovel 1/2

2013-05-02 00:19:28
リュカ @ryuka511

安心したように微笑み男は陸の街へ、少女は海へ戻る。お伽噺みたいな劇的な恋がしたい、そんなきっかけで出会ったのは確かに運命を感じさせる相手だった。お伽噺と違うのは、彼の為に共に生きようという決意。夕闇の街へ向かう男の背中を、彼女はいつまでも見つめていた。 #twnovel 2/2

2013-05-02 00:21:47
リュカ @ryuka511

昼でも尚暗い魔王城周辺。一行は最終決戦に備えひっそりとテントを張る。世界を絶望で覆う恐怖の城を前にした一行の沈黙を、最年少の少女が破った。「皆と旅が出来て良かった」一行はハッとする。一番若い仲間にこんな事を言わせちゃいけない。「魔王倒して今度は安全な旅しような」 #twnovel

2013-05-02 22:00:46
リュカ @ryuka511

愛を交わす事は2人の破滅だった。夢魔である男の口づけは恋人の精気を奪う。彼女は貴方に愛されて死ぬなら本望だと微笑んだ。冷たくなった恋人の、来世は貴方と同じ夢魔に生まれて永遠に愛し合いたいという言葉に彼は涙を流す。「俺が人間になる方が確実かもな」その涙は温かった。 #twnovel

2013-05-04 00:00:58
リュカ @ryuka511

獲物として近付いた彼女に何故だか惹かれた。彼女も彼の正体を知った上で彼を愛した。同じ死なら貴方に愛されて死にたいと。男は魔族の証である黒い翼を自ら引き裂いた。痛みをこらえ壁にもたれかかる。どうか来世は共に人間であるように、静かに愛し合えるように願い目を閉じた。 #twnovel

2013-05-04 21:44:27
リュカ @ryuka511

死神は猫の姿をしていた。死に瀕した者達が、恐ろしい思いをしないように。安らかに死を受け入れられるように。残される者達が、哀しみに暮れないように。穏やかに死者を送れるように。足音立てずひっそりと、運命告げにやって来る。野良のふりして軽々と、彼岸と此岸を往き来する。 #twnovel

2013-05-05 23:24:35
リュカ @ryuka511

歩き疲れたら、星を枕に、月をベッドに眠りましょう。星の枕は貴方の涙をそっと吸い込み、願いを乗せ流れるでしょう。月のベッドは貴方の身体を優しく包み、貴方の傷を癒すでしょう。街の灯りは遠くから貴方を見守り、帰りを待っているでしょう。恐れずに今はゆっくり眠りましょう。 #twnovel

2013-05-06 22:58:52
リュカ @ryuka511

真っ赤な扇子の向こうに君の真っ赤な唇。宴の席で笑う君は年齢に不釣り合いな大人の顔。乞われて舞う姿は高価な人形のようで見る者を惹き付ける。君の手を取ったのは宴の主、末席の僕には手が届かない事を思い知らされる。いつか僕が手を差し伸べたら、君はその手を取るだろうか。 #twnovel

2013-05-07 22:08:08
リュカ @ryuka511

継母に命を狙われ王子は森へ逃げ込む。傷を負った彼を助けたのは森に住む七人の小人だった。「まるで童話だ。」呟く王子に七色の声が響く。「これは現実ですよ。」「お妃に復讐しましょう。」「我々もお妃の悪逆ぶりに迷惑しているのです。」現実は童話ほど清くないと王子は嗤った。 #twnovel

2013-05-08 23:31:13
リュカ @ryuka511

思い立って自分探しの旅に出た。世界中の美味しい物を食べ、世界中の絶景を堪能した。世界中の歴史と現状を学び、世界中に友達が出来た。世界中旅するうちに、目的の探し物は何だったのか忘れてしまったけれど、これはこれでいいような気がする。 #twnovel

2013-05-10 00:58:40
リュカ @ryuka511

幼い娘にこれ出してと手紙を渡された。宛名は妖精さんへとなっている。何を書いたのか知りたいけど中は見ないと約束させられた。妖精さんのフリして返事を書こうか。でもバレたら二重の嘘に子供は傷つくだろう。けど返事が無いと悲しむだろうしどうしたものかと封筒を眺めている。 #twnovel

2013-05-11 22:10:14
リュカ @ryuka511

「泥棒!」と叫ぶ声に巡査は走り出す。唐草模様の風呂敷を背負って逃げる昭和の漫画のような男がいた。巡査に捕まると男は溜息ついて語る。「現代人には何かが欠けてんだ。貧しくても心は豊かだったあの頃を俺は取り戻してぇんだよ。」「……そうか。」 #twnovel 「窃盗の容疑で逮捕する。」

2013-05-13 00:30:12
リュカ @ryuka511

先祖は世界に名を轟かせた大泥棒だったらしい。けど俺は普通の学生をしてる。高価な宝石や芸術品に興味は無い。他人から奪ってまで欲しいものなど……いや、一つだけあった。片思い中の隣の席の子は俺の親友の彼女。女性にモテたというご先祖様、彼女の心を盗む方法を教えてくれよ。 #twnovel

2013-05-13 00:30:33
リュカ @ryuka511

物語の義賊に憧れた貴族の少年は、家の貴金属を持ち出し貧しい人々にこっそり配った。家に戻ると泥棒が入ったと騒ぎになったが、翌朝配った貴金属は全て戻ってきた。首を傾げる少年に父が静かに語る。我々の仕事は貧しい人々に施す事ではなく、彼らが自立出来る世の中を作る事だと。 #twnovel

2013-05-13 00:30:57
リュカ @ryuka511

クーデターが起き城は炎に包まれた。多くの兵士が王と王妃、王子を守り戦う中、一人が王家の財宝を持ち出し逃げた。奴は反乱軍の密通者だ、裏切者を許すなと皆が憤る中、王は静かに首を振った。「裏切者を粛清した所で事態は変わらぬ。あれはただの火事場泥棒、放っておくがよい。」 #twnovel

2013-05-13 00:31:18
リュカ @ryuka511

怪盗からの予告状を受け厳戒態勢の中、狙われた品はあっさりと怪盗の手に渡った。手引きした者がいるに違いないと疑心暗鬼に陥る一同を尻目に怪盗は静かに笑う。怪盗は目の前にいると告げたら彼らはどうするだろうな? #twnovel 何? 探偵=犯人? 被害者=犯人? さぁどうだろうね。

2013-05-13 00:32:06
リュカ @ryuka511

猫は死に際を人に見せない。老猫は家を出ると精一杯のスピードで走り、お気に入りの場所に横たわる。お別れだ、目を閉じると飼い主の顔が浮かぶ。「貴方の考え位解りますよ。」驚き目を開けると飼い主の老婦人がいた。「最期を看取らせて下さいな。」淋しげな顔に解ったよと鳴いた。 #twnovel

2013-05-13 22:52:11
リュカ @ryuka511

事件が大詰めを迎え、探偵は項垂れた。ヒントはそこら中に転がっていたのに、異常さに惑わされ気付けなかった。もっと早く被害者のメッセージに気付けていたら、犯人の思考を汲めていたら、救えた人がいたはずだった。「犯人は貴方です。」安堵した奴の顔が目に焼き付いて離れない。 #twnovel

2013-05-14 22:09:42
リュカ @ryuka511

悪を討ち世界を救う旅をしながら男は考える。善と悪の間に境界はあるんだろうか? 良かれと思っての行動が迷惑がられるなんて事ざらにある。愛が憎悪に変わるのも簡単だ。愛ある嘘、偽善の慈善も山ほど見た。彼は迷い始める。悪を掃討し切った世界は、本当に救われるのか? #twnvday

2013-05-16 00:46:50
リュカ @ryuka511

仕上がった純白のドレスをトルソに着せた。その出来映えに僕は満足する。オーダーメイドの最新作はきみのために誂えたもの。このドレスを纏うきみはさぞかし美しいだろう。人生最高の日を僕が作ったドレスで飾れるなんて、こんな幸せな事はない。きみの隣に立つのが僕じゃなくても。 #twnovel

2013-05-16 22:17:15
リュカ @ryuka511

決められた人生、結末が分かっていても俺達はそこへ突き進むしかない。敷かれたレールの上を精一杯走り抜ける事が俺達の生きる道。つまらなくないかって? 抗っても無駄なんだ。俺達に結末は変えられない。それでも、俺達の生き様に読者が心動かされたなら、登場人物冥利に尽きる。 #twnovel

2013-05-18 00:20:34
リュカ @ryuka511

遥か海上に見える大都市は少年の憧れだった。小さな村の暮らしは少年には退屈で、大人になったら村を出てあの都市へ行くんだと心に決めていた。だが村を出ようとした少年を少女が止めた。それから数年。蜃気楼に重ねた夢は、戦で壊滅した都市と共に消え、少年は幸せに暮らしている。 #twnovel

2013-05-18 21:28:24
リュカ @ryuka511

少しだけ、と幼い好奇心で母の化粧品を手に取った。口紅とファンデーションとチークも少し、色づいた頬にときめいていると母に見つかりこっぴどく叱られた。そんなに怒らなくても、と傷ついたまま大人になった。母が怒るのも解らなくはないけど、この生き方を貫くと彼は紅をひいた。 #twnovel

2013-05-19 22:45:12
リュカ @ryuka511

政略結婚をした夫との間に愛は無いと思っていた。共に暮らし子どもを授かり、ただ義務だけで一緒にいたはずだった。いつの間に、こんなにも私の心を占めていたのだろう。亡くして初めて気付く。私は夫を愛していたのだと。もっと早く気付きたかった。自分のプライドの高さが哀しい。 #twnovel

2013-05-21 00:56:32
リュカ @ryuka511

この温室は多忙なご主人様が安らげる唯一の場所。スーツも鞄も放り出して私の元に駆けて来る。ご主人様に抱き上げてもらわないと触れられないお人形の私だけど、ご主人様を癒せるのは私だけ。でも近頃ずっといらっしゃらない。温室のお花が枯れていく。心配だわ。どうしたのかしら。 #twnovel

2013-05-21 22:53:12