掌小説語り~自作つぃのべる集24~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年6月分
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リュカ @ryuka511

私のような老いぼれに、若く美しい君が嫁いでくれるとはまるで夢のようだ。周囲は結婚に猛反対したが、私は彼女の愛を信じている。疑惑を払拭するように、彼女はきちんと手料理を作ってくれる。日々の目眩に廻る部屋、遠退く意識、彼女のせいでは無い、私の年齢のせいに違いない。 #twnovel

2014-06-01 23:11:49
リュカ @ryuka511

「世界を恐怖に陥れた君なのに。」「そんなのは昔話だ。」魔王は、勇者を見据える。「世界中の人間の希望を背負わされて、悲壮な顔をしたお前を放っておけなかった。それだけだ。」「懐かしいね。僕は間違って無かったかな。」「無論だ。」世界を分け合った魔王と勇者は笑い合う。 #twnovel

2014-06-03 09:07:39
リュカ @ryuka511

部下を蹴散らし魔王城へ来た少年は、小さな両肩に掛かる重圧に震えていた。その姿に魔王は心捕らわれ、人間への憎悪を深めた。「私と手を組まないか?」思わずそう問い掛けていた。「私を倒す力を持つお前を人間が今後受け入れると思うか?」目を見開く勇者の顔は今でも忘れられない。 #三連ツイノベ

2014-06-03 09:08:21
リュカ @ryuka511

魔王の言葉は薄々察していた事だった。「いいよ、世界を半分こしよう。」魔王と勇者、敵対する二人は共通の敵を前に繋がる。人間を滅ぼした後、二人は付かず離れず共にいた。そして、避けられない別離の時。「お前に私の命も分け合えられたなら。」「君らしくないな。僕は満足だ。」 #三連ツイノベf

2014-06-03 09:09:08
リュカ @ryuka511

夜の闇に紛れて生きてきた。闇は見たくないもの見せたくないものを包み隠してくれる。かつては昼の光に憧れた。だが光は余りにも公正過ぎた。弱さも醜さも曝け出し裁こうとする。私は闇へ逃げ帰った。光の下では生きられない。闇が安寧な揺り籠ならば、光は鮮明な絶望なのだ。 #twnovel

2014-06-03 23:57:27
リュカ @ryuka511

忘れたい辛い過去、夢見る平和な未来、それらは私の意識によって存在する。それらは概念として世界に存在するが、実在しない。ただ世界には私と言う実在があるだけ。ならば、こんな世界滅びてしまえと願うなら、そう願う私自身を、滅ぼすしかないのだろうか。 #twnovel

2014-06-04 23:06:51
リュカ @ryuka511

棺桶の姫君に口づける勇気ある者はいなかった。目覚める事の無い姫君の亡骸は、小人達の悲しみに包まれ緩やかに腐敗していく。あからさまに怪しい魔女が差し出す林檎を、何の躊躇いもなく口にした愚かな姫君の末路。姫君を死に到らしめたのは、お妃の憎悪と自らの純真なのだろう。 #twnovel

2014-06-06 07:45:11
リュカ @ryuka511

虚栄心に満ちた貴方は、その背から抜け落ちる羽根に気付けない。貴方に信仰を捧げる地上の人間達が、貴方の今の姿を知ったら落胆する事だろう。かつての貴方は輝く翼に相応しい崇高さを持っていた。世界の安定を実現させる為に覇権を手にした貴方が、本懐を取り戻すようにと祈る。 #twnovel

2014-06-06 23:18:01
リュカ @ryuka511

いつしか新鮮さを無くした私達は、現実という疲れた夢を見る。出会った頃を懐かしみ、本気や本音をぶつけ合わなくなった。窓を打つ激しい雨のように、息つく暇もない激情を見せてほしいのに、茶化した探りを入れるだけの私も臆病者。この恋が色褪せる前に、マンネリを打ち破ろう。 #twnovel

2014-06-07 23:14:40
リュカ @ryuka511

この穢れきった世界で尚、君は微笑んでいて、君だけは無垢なままでいて、それが僕には愛しいと同時に憎かった。君の清らかな微笑みは、君にその気が無くとも僕の醜さを断罪する。君の清廉さを壊したい。けど壊されても君は無垢なままでいるんだろう。手をかけたまま僕は動けない。 #twnovel

2014-06-09 09:52:47
リュカ @ryuka511

劣情が無かったと言えば嘘になるが、花街で出会った女を男は一途に想っていた。だが女は気位も高い太夫、若い男の甲斐性では相手にされなかった。焰の様な幼い恋情は、太夫にはまるで青い飯事だった。一夜だけと太夫を買った男に彼女は笑う。「こんな事に金を使うんじゃないよ。」 #twnovel

2014-06-10 10:18:22
リュカ @ryuka511

主君を裏切り敵に寝返った男は、薄紅の夕闇に身を隠す。彼を追う人影は遠ざかったが、耳を澄ますと追手の声はまだ聞こえてくる。彼に気付いた様子は無い。こみ上げる笑いを噛み殺す。俺はここにいるよと教えてやりたくなる。闇に忍んで生きるより、世をひっくり返してやるのだ。 #twnovel

2014-06-11 00:06:48
リュカ @ryuka511

少年が打ったボールは、澄んだ音と共に青い空へ吸い込まれるように飛んで行った。砂に描かれたダイヤモンドの上を少年は走る。歓声と砂と汗に包まれて駆けた日々。やかんから直に飲んだ水の冷たさを、陽に焼けた仲間の顔を、彼は生涯忘れないだろう。 #twnovel #夏色少年

2014-06-11 23:57:28
リュカ @ryuka511

基地の窓から少年は夜の街を見下ろす。街灯が灯り温かな光が美しい夜景を作り出す。それは人々の営みの証。明日、敵のアジトの突入作戦が決行される。きっとこれが最後の戦い。この街を、この灯を守ると決意を新たにする。不思議と怖くは無かった。隣に立つ仲間の手が温かいから。 #twnovel

2014-06-12 22:49:46
リュカ @ryuka511

隣の家のお兄ちゃんはとってもイケメン。今からちゃんと約束しておかなくちゃ。「大きくなったらわたしと結婚してね。」お兄ちゃんは笑ってる。わたしがまだ小さいから。この初恋が大人の恋になるまで待っていて。キレイな大人の女の人になって、笑った事を後悔させてみせるから。 #twnovel

2014-06-13 22:21:15
リュカ @ryuka511

手を繋いで仲良くゴール、皆で平等に一等賞。そんな学校生活は、幸せなぬるま湯だったと僕は思い知る。生き残る為に、駆け引きや打算、裏切りに抜け駆け、多くの事を覚えた。急いで身に付けたそれらは耐性の無い僕を蝕む。あの頃に教わっていたら少しは幸せな大人になれただろうか。 #twnvday

2014-06-14 23:32:12
リュカ @ryuka511

奥様は嫉妬深いお方。私が旦那様の食事の支度や洗濯をするのを嫌がられ、何とか理由をつけて私を旦那様から遠ざけようとなさいます。どうしてそんな事をなさるのかと悲しくなってしまいます。そんな事なさらなくても、私の心は奥様のものだというのに。 #maidnovel #twnovel

2014-06-15 23:59:58
リュカ @ryuka511

深海でモスグリーンの藻に覆われているだろう古城が懐かしくないわけではない。だが人間の娘に恋をし、城とマーマンの誇りを捨てた事を後悔してはいなかった。結ばれた2人の幸福は娘の寿命と共に終わり、海へ帰る事は叶わない。愛した娘を還した海を彼はいつまでも見つめている。 #twnovel

2014-06-16 23:20:52
リュカ @ryuka511

ポットに湯を注ぎ砂時計を返す。フォークの磨き具合を確認しながら、同居人が奏でるバイオリンに耳を傾けた。偏屈な同居人は彼が入れた紅茶しか飲めないと言う。紅茶の入れ方など勉強した覚えは無いのだが。霧雨に煙るロンドンは静かで、今日はアフタヌーンティーを楽しめそうだ。 #twnovel

2014-06-17 22:38:15
リュカ @ryuka511

揺り椅子で微睡んでいると、黒うさぎが慌てた様子である本を咥え跳んで来る。出しっ放しにしてあったようだ。ぷりぷり怒る黒うさぎに謝り本を鍵のかかる抽斗へ仕舞う。これは国内に存在しないはずの本。かつて匿っていたレジスタンスの少年から受け取った物だ。彼は今どうしているだろう。 #図書の国

2014-06-18 22:39:28
リュカ @ryuka511

宮廷お抱えの画家によって描かれた皇帝の肖像画には秘密が隠されているという。財宝の隠し場所、皇帝暗殺計画、様々な憶測が飛び交ったが、秘密は明かされないまま画家は世を去った。数世紀後、発掘された肖像画から考古学者は謎に挑む。画家は皇帝を恋い慕っていたのではないか。 #twnovel

2014-06-19 22:45:55
リュカ @ryuka511

やはり世界を救える人などどこにもいないのね。自室から暗い空を眺め王女は嘆く。魔王が支配を進める世界は、陰鬱な空気に包まれ荒廃していく。人間に復讐し魔族による世界を創ると、魔王は軍を指揮した。美しかった世界は焦土と化す。それは魔王の心象風景。誰か、父上を止めて。 #twnovel

2014-06-21 01:12:22
リュカ @ryuka511

「一曲演奏してくれる?」踊り子の言葉に旅芸人は快く頷いた。異国の楽器の愉快な旋律に合わせひらひらと踊る。まるで古くからのコンビの様な舞と演奏に酒場は沸いた。どこから来てどこへ行くの。訊ねる言葉を舞に乗せれば答えは旋律に返ってくる。同じ様で異なる孤独は重ならない。 #twnovel

2014-06-22 00:19:49
リュカ @ryuka511

正体を隠し勇者一行に加わった悪魔は、任務遂行の機会を伺いながら共に旅をした。長い旅の末に魔王の弱点を発見した勇者達に、悪魔は正体を明かし対峙する。驚愕する勇者達を攻撃しながら、悪魔は泣きそうな自分に気付いた。ずっと傍にいたかった。自分の居場所は魔王の下なのに。 #twnovel

2014-06-22 23:53:19
リュカ @ryuka511

カンテラを提げ金鉱を掘り進む。一攫千金を夢見て寝食も忘れ掘り続けた。毒ガスや魔物が出たと仲間達が手を引いても、男は掘り続ける。これで独り占め出来るとさえ考えた。一山当ててやると一心不乱に掘る内に異臭に気づく。無数の赤い目が男を取り囲む。カンテラの中で夢が笑った。 #twnovel

2014-06-23 22:41:26