掌小説語り~自作つぃのべる集21~

自作のつぃのべるまとめです。 2014年3月分
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リュカ @ryuka511

葬儀が進む中、棺桶の姫君はまるで眠っているようでした。魔女の呪いにかかり突然死んでしまったのです。王と王妃の嘆きは深く、国中が沈鬱に包まれました。 #twnovel あの方の思惑通りです。我らを疎み追放した王国への復讐を、我らの苦しみを彼らにも味合わせてやりましょう。

2014-03-01 07:46:29
リュカ @ryuka511

屋敷の奥には開かずの間がある。主人から「決して入ってはならない」と言われる部屋は使用人達の恐怖と好奇心をそそる。ある日使用人の一人が鍵を持ち出し部屋を開けた。薄暗い部屋に限りなく黒に近い赤の染み。「あれ程入ってはならんと言ったのに。」赤い染みは更に黒に近づく。 #twnovel

2014-03-01 22:32:56
リュカ @ryuka511

気が付くと俺の隣に彼女が倒れていた。驚いて起き上がり彼女の手を取る。冷たい手、生気の無い顔。彼女は息をしていなかった。見回すと空の瓶が転がっている。 #忘れ薬? 横たわる彼女の顔はどこか幸せそうで。一体彼女は最期に何を忘れたんだ? そもそも俺は何故ここに? #twnovel

2014-03-02 23:23:20
リュカ @ryuka511

危険な森で毒草を調達し、細心の注意払って抽出、適切な量の測定、毒林檎に費やした労力は計り知れない。娘に夫の心を奪われた母は、憎悪を込めて毒林檎を作り上げた。実の娘だからこその憎悪。お前にあの人を渡しはしない。 #twnovel

2014-03-04 00:30:20
リュカ @ryuka511

「ミルクは置いてないぜ、坊や。」青年が店に入るなり店主と他の客がせせら笑う。青年が黙って拳銃を抜くと瞬きする間も無く火を噴いた。店主の背後で置時計が木っ端微塵に砕け散る。「次は当てるぜ?」青ざめる店主や客を尻目に、何事も無かった顔で青年はカウンター席に着いた。 #twnovel

2014-03-04 23:52:28
リュカ @ryuka511

勇者に力を封印され、すっかり落ちぶれた魔王は勇者への復讐を誓う。力を取り戻すべく奔走する魔王の下に散り散りになった部下達が戻ってきた。古びたマントを纏い魔王は笑う。封印を解いたら勇者よ、真っ先にお前の首を取りに行く。残り少ない平穏な時をせいぜい堪能するがいい。 #twnovel

2014-03-05 22:32:26
リュカ @ryuka511

村の子供らと冬中遊んだ雪の子は、行きたくないと泣く。雪が溶けてしまったら、皆は私を忘れるからと泣く。けれど夢の子が北へ行かないと春が訪れない。 子供らは口々に言う。「絶対に忘れないよ。」「次の冬にも来てくれるでしょう?」並みだながらに頷く。そして春が始まる。 #twnovel

2014-03-07 00:10:46
リュカ @ryuka511

茜色した硝子の中で、夢も希望も焼き捨てた。燃え上がるそれらをぼんやり眺める。世界の終わりの様な茜色に包まれて、夢も希望も燃え尽きる。傷つきたくなくて作った硝子の檻は、新たな希望さえも遮断した。もうこの世界には何も無い。自ら招いた世界の終わりに静かに身を委ねる。 #twnovel

2014-03-07 23:58:57
リュカ @ryuka511

私の愛しい椿姫。天衣無縫で気ままな姫君。恩人である私にもつれない態度。そんな所も可愛いのだけど。でもそんなに遠くへ行ってはいけないよ。あぁ、ほら、動けなくなってしまった。君のからくりの心臓を直せるのは私だけなのだから。さぁ帰るよ。美しい君、永久に私の手の中に。 #twnovel

2014-03-09 00:07:13
リュカ @ryuka511

幸せだった、幸せでなければならなかった。物語は、めでたしめでたしで締められたから。名前すら与えられず、見ず知らずの姫を助ける羽目になった王子。微笑み合い踊る王子と姫。ハッピーエンドのお伽話。だが王子の微笑みは偽り。姫だけが幸せで、何がめでたいものか。 #twnovel

2014-03-10 00:06:44
リュカ @ryuka511

その天使は翼を持たず生まれた。魔界の軍勢が攻めてきたある日、彼女は燃え盛る建物から仲間を脱出させた。階下は火の海、地面は遥か下、翼の無い自分に脱出は不可能と諦めたその時。「まだそこにいたのか!」「だって私飛べないもの。」「いいから飛べ!」「受け止めるから!」 #twnovel

2014-03-11 00:07:03
リュカ @ryuka511

私だって愛されていいはずなのに。王に仕える魔女は王妃への嫉妬に蝕まれ月夜に生贄を捧げ王妃を呪う。日に日に衰弱する王妃に尽くしてみせながら魔女は嗤う。王妃さえ居なくなれば。だが王は魔女に王妃を治してくれと縋る。お前の腕なら治せるだろうと。王の信頼に魔女は泣いた。 #twnovel

2014-03-11 23:44:41
リュカ @ryuka511

ご主人様はこの古い遊園地の園長です。レトロと言えば聞こえはいいですが、古い設備に客足は遠のき、園内は閑散としています。それでもご主人様は園内を見回ります。ご主人様の皺々で温かな手と古い遊園地。潰れそうな遊園地だけど、どうかこの時がずっと続きますように。 #twnovel

2014-03-12 22:32:49
リュカ @ryuka511

ぐるぐる廻る回転木馬、くるくる踊るバレリーナ。同じ所を廻り続ける。ゴールはおろかスタートさえ無い。巻いた螺子が止まればそこでお仕舞い。廻り廻るオルゴールが僕らの世界を指し示してる。螺子がいつ止まるかは解らない。限界まで巻いて、いっそ世界ごと壊してしまおうか。 #twnovel

2014-03-13 23:15:25
リュカ @ryuka511

「王よ、どうか旅立ちの許可を。」「今お前に城を離れられるのは辛い。だが仇討ちはお前の悲願、行くがよい。」今、魔王は世界を支配しようとしている。そんな中、仇討ちという私情を許してくれた王に感謝する。勇者を名乗る人間に殺された父の仇を討つ為、魔族の青年は旅立った。 #twnovel

2014-03-15 00:02:47
リュカ @ryuka511

雪に包まれた白い街の跡地を、蒸気機関車が走り抜ける。戦の果てに地図から消えたこの街は、私の故郷だった。折れた柱や崩れた壁が未だに点在する地に、レールが敷かれ機関車が走る。窓からそれらを見つめ、この列車を機に人の息吹がこの地に再び溢れるようにと、静かに願った。 #twnovel

2014-03-16 00:22:28
リュカ @ryuka511

子どもが生る樹の苗を植えた女は、真っ直ぐ育つよう針金できっちり巻いて、悪い虫が付かないよう鉄板でぴっちり覆った。これだけ愛情込めたのだから、ちゃんとイイコが実るはず。だが収穫した子どもは腐って崩れた。女は顔を顰める。「嫌らしい、始めから悪い苗だったんだわ。」 #twnovel

2014-03-16 22:03:42
リュカ @ryuka511

武術大会に優勝すれば、僕らの仲を認めてくれると父上は約束してくれた。だが、出場するのは僕じゃなく君。大丈夫だよと君は笑うけど、僕は心配で堪らない。明日戦う君に、僕はただ祈る事しかできない。祈る僕の手を君が握る。 #twnovel 「俺の腕を信じろ。必ず買って認めさせてみせる。」

2014-03-17 22:36:55
リュカ @ryuka511

真っ黒な海を箱舟は漂っていた。外は恐ろしく静かで、時折静寂を乱す風が吹き荒れる。箱舟を取り巻く現実と、頭をもたげる不安を忘れてしまいたくて、人々は身を寄せ合う。海は暗く、陸はどこまで行っても見えない。舵は無く、帆も無い。この箱舟は、本当に救いなのだろうか。 #twnovel

2014-03-18 22:53:34
リュカ @ryuka511

彼女は港に立ち戦に向かった夫を待つ。戦が終わり帰還した兵士の中に夫の姿は無かった。やがてその流れる黒髪が真っ白に染まっても、彼女は夫を待ち続ける。そして。「おかえりなさい。」「ただいま。遅くなってすまない。」「いいんです。貴方が帰ってきてくれたらそれだけで。」 #twnovel

2014-03-19 23:57:14
リュカ @ryuka511

私は夫が旅立った港で彼の帰りを待っています。「必ず生きて帰る」とあの人は約束してくれました。戦が終わって他の兵士が帰ってきた時、あの人は帰ってきませんでした。多くの人がもう諦めてはどうかと言いましたが、あの人は約束を守る人ですからと首を振り続けました。あぁ、ほら。 #三連ツイノベ

2014-03-19 23:58:23
リュカ @ryuka511

あの人の事は諦めて、僕と。そう言いかけた僕を彼女は微笑んだのです。その強い笑みに、僕はもう何も言えませんでした。そして彼女の黒髪が真っ白に染まる頃、彼女は僕を見ておかえりなさいと微笑んだのです。あぁ、もう彼女は。「ただいま。」僕は涙を堪えて精一杯微笑みました。 #三連ツイノベf

2014-03-19 23:59:21
リュカ @ryuka511

森の動物達は街から来た道化師が大好きです。ある日、動物達は道化師が森に来た理由を聞きました。僕はある人の心を独占しようとして失敗したんだ。」悲しそうな道化師に動物達はもらい泣き。「私達の心は君だけのものだよ!」動物達の言葉に道化師の頬に描かれた涙が光りました。 #twnovel

2014-03-21 09:14:14
リュカ @ryuka511

僕の庭に凛と咲き誇る花。どんなに強い風にも雨にも、飛ばされないように、倒れないように必死で守った。とくに珍しい花じゃない。もっと見た目の美しい花もたくさんある。君だって僕の庭をとくに選んだわけじゃないんだろう。それでも僕は君を守り君は凛と咲く。それでいいんだ。 #twnovel

2014-03-22 00:06:57
リュカ @ryuka511

村を救う生贄として生まれた命。彼女は救世主として崇められながら、その尊厳を誰にも認められなかった。従順に救世主を演じてきた彼女は、儀式の日に、持たされた宝剣で村人全員を斬殺した。神に捧げる魂ならば、死神にだって売り渡す。 いや、むしろ私が死神になってやろう。 #twnovel

2014-03-23 01:01:38