妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風・第一話『帰郷』
- minarudhia
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「そこまでにしとけよ」 命海が割って入った。 「秋奈は昔っから何か思いつめたりするとすぐ行動に出るからなあ。…秋奈、俺のこと覚えてる?」 「…」 秋奈は少し思い出しかけるも、首を横に振った。 99
2015-07-18 23:05:58「そうかぁ。まだお前小さかったもんな。今24だっけ、15年前だから9歳か」 「そうだな…もう、そんなに経つ、か」 日廉も懐かしむように秋奈を見た。 「父とあの犬神が戦ったあの妖怪……並みの妖怪ではなかった。いや、ただの妖怪ではないかもしれん」 「えっ…?」 100
2015-07-18 23:09:47秋奈が目を瞬かせる。 メラメライオンが怪訝そうな顔をした。 「ただの妖怪ではない?」 「うむ……だが、話が長くなるから、後でな」 日廉は言い、寺まで歩いていく。 101
2015-07-18 23:13:13命海が何か思いついたように秋奈に聞く。 「そういえば、じいちゃんの形見があるんだ。少し持って行かないか?」 「いいのか?」 「いいよ、じいちゃん、もみじ様のことでなんか色々と調べててさ、それが形見のうちの一つなんだけど…」 命海が意味深な笑みを浮かべた。 102
2015-07-18 23:14:56「まさか、犬神が出てくるなんてな。いつもあいつ、じいちゃんの命日の時にしか人前に出てこないんだ。実はさ、じいちゃんの形見の中に、その犬神に関わるものも入ってるんだ。それも一緒に持ってってくれないかな?」 「…いいの?」 103
2015-07-18 23:18:18「構わないって。じいちゃん、犬神に何か約束事してたみたいなんだが、また秋奈がここに戻ってくることがあったら自分との“絆”の証を渡してほしいとか言ってたんだぜ」 命海と秋奈、メラメライオンは寺の中へ上がった。 「ちょっと、そこで待っててくれ」 104
2015-07-18 23:21:29「なんだ、命海。朝子さんのことはいいのか?」 冷えた麦茶を持ってきた日廉がすれちがう。 「悪い、朝子にはもうちょっと待っててもらう。で、親父、犬神が描いてあるあれ、どこにあったっけ?」 「あれ?…ああ、あれか。本堂の棚にしまってあるはずだが」 105
2015-07-18 23:24:19日廉が答えるとすぐ命海は本堂へ消えた。 「すまんな、秋奈さん。息子のやつはどうもせっかちで」 「いいえ、…でも、構わないんですか?形見なのに」 「父からの頼みだ。どうももみじ様というものに関して謎が多いからなあ」 106
2015-07-18 23:29:33まもなく、命海が古びたノートと小さな巾着袋を持ってきた。 「これ。この中に、じいちゃんが犬神から貰って大事に持ってたやつが入ってる」 命海は言いながら秋奈に手渡した。 開けてもいいか、と秋奈が聞くと二人はうなずく。 巾着袋の中身は、…とても軽いものらしい。 107
2015-07-18 23:33:14「何かしら?」 秋奈が巾着袋を開け、下に向けると一枚のメダルが転がり出てきた。 その表面には犬神の姿が刻まれ、裏面には魂か何かを模したような紋章。 それを見たメラメライオンが声をあげた。 「それは……妖怪メダルじゃないか!」 108
2015-07-18 23:35:16「何、それ?」 「オレ達妖怪が人間との間に友達としての契約をした時渡すのが主だが、それだけ人間に渡すには重要な意味がある代物なんだ」 「へえ、そんなものがあるのか」 109
2015-07-18 23:37:24日廉と命海がメラメライオンの説明に納得のいったような反応を見せた。 「なるほど、それで父が“証”と呼んでいたわけか」 「それは、人間にとっても、ある使い方があるんだガ…アキナにはまだ使えない。使うには、ある物が必要だからな」 110
2015-07-18 23:40:14メラメライオンは言いながら、犬神のメダルを見た。 「しかし、犬神のような妖怪からメダルを貰うなんて…、和尚はタダ者ではなかったんだろうな」 「じいちゃんは妖怪を祓う腕前は天下一品だっていってたし、その関係で貰ったのかもしれない」 111
2015-07-18 23:41:30時間が経ち、駅の前まで秋奈とメラメライオンは来ていた。 すでに、生天目夫妻と伊東、そして日廉と命海夫妻が送り届けに出てきている。 「もみじ様、都会の空気がわずらわしくなったらまたいらっしゃってください」 ウメの言葉に秋奈はうなずいた。 113
2015-07-18 23:45:48朝子が、手作りの糠漬けを手渡してきた。 「これ、私のお寺に小さく設けた畑で採れたものを漬けたものです。どうぞ召し上がってください」 「ありがとうございます」 「そろそろ、電車が来るぞアキナ」 改札口からかろうじて見える時計を見てメラメライオンが言った。 114
2015-07-18 23:48:21「すみません、いつかまた、戻ってきます」 「待ってますよ!」 「どうか、お元気で」 電車に揺られながら、メラメライオンは席に背を持たれた。 「とやかく、なんだかんだと疲れた…」 「寝たら?」 「いや、お前ン家に着いてからだ。帰りも気が抜けない」 115
2015-07-18 23:52:27秋奈の問いにメラメライオンは姿勢を正す。 そして、秋奈が犬神のメダルを掌に乗せ見つめていることに気づいた。 「……あいつのこと、まだ気になるか?」 「うん…悪いこと、したって」 「……後で、メダルの使い方を教えてやる。それで犬神に謝る機会を作ればいい?」 「どうやって?」116
2015-07-18 23:53:42秋奈の問いに、メラメライオンは考え込む。 斜陽が一人と一匹しかいない車内を照らす。 やがて、彼は答えた。 「それは、――まだ、教える時じゃない。今のお前はもっと多くの妖怪を知るべきだからな」 117
2015-07-18 23:55:05「おい、なんでこんな妖怪連れて来たんだヨ?まだ子供じゃないか!」「しょうがないでしょ!まだ暖かいのにこんなブルブル震えて、かわいそうじゃない!」「あの…僕のお父さんとお母さんを知りませんか…?」
2015-07-19 00:03:51同僚に取り付いた妖怪モテマクールから恋の相談をされる秋奈とメラメライオン。帰らぬ親を捜して町に出た妖怪さむガリ。背後に不穏な影が動き出す…
2015-07-19 00:05:49