炎獅子の心は燃ゆる

前回投稿した妖怪ウォッチ異種姦SS(http://togetter.com/li/768213)の別視点バージョン。こちらも後に改訂したものをピクシブに投下します。異種姦・及びオリジナルキャラと設定にご注意ください。/改訂版→
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みなみ @minarudhia

最初は気づかなかった。オレの存在に気づく人間がいたことに。空きっ腹を紛らわすつもりで腰を据えていたオレの目の前でその人間が自転車を停めた時は気にも留めなかった。「……お腹、空いたの?」紅葉のように赤い綺麗な髪と目を持つ彼女が、オレにそう話しかけるまでは。

2015-01-27 00:14:41
みなみ @minarudhia

妖怪ウォッチ異種姦SS・『炎獅子の心は燃ゆる』

2015-01-27 00:16:49
みなみ @minarudhia

「!?お前、オレが見えるのカ!」オレは驚いて彼女に詰め寄った。オレ達妖怪が見える人間なんてそうそういないのだ。今は妖怪ウォッチを持っている人間くらいしか、オレ達の姿をはっきりと捉えられないんだ。人間の彼女はオレの問いに少し引き気味になりながら頷いた。「え、う、うん…」

2015-01-27 00:20:10
みなみ @minarudhia

オレの腹の虫が鳴るのに彼女が笑った。男として恥ずかしいが、笑顔を見てそれも軽くなった。「…うちに来ない?お肉好きなら、分けてあげる」「肉、食ウ」オレは甘んじることにした。腹が空いただけじゃない、彼女と一緒にいたいとなぜかそう思わせるものがあった。…特に、匂いが、オレをそうさせた。

2015-01-27 00:25:24
みなみ @minarudhia

「あなた、なんていう妖怪なの?」自転車を漕ぎながら彼女が後ろに乗ったオレに聞く。「オレはメラメライオン。イサマシ族のメラメライオン」「イサマシ?」「オレの属してる種族だ。あまり細かい説明できないが、オレみたいな妖怪が多い連中と思ってくれ」ふぅん、と彼女が不思議そうに首を傾げていた

2015-01-27 00:28:13
みなみ @minarudhia

「お前は?」「私は…坂口秋奈」彼女は少し口をつぐんでから、こう付け加えた。「あなた達のこと、生まれた時から見えるの」「生まれた時から、カ」「お坊様からは見鬼の眼だって言われたわ」その名前は聞いたことがある。稀だがオレ達妖怪のみならず人間には見えないもの全てが見える力。

2015-01-27 00:35:43
みなみ @minarudhia

鬼っていうのはオレ達も人間達もよく知る鬼のことじゃなく、オレ達妖怪でさえ掴みにくい見えざるモノのことを指すんだと聞いたことがある。その力を持つ眼を持つ人間は昔から、優れた術師としてオレ達妖怪との接触に携わった。そう聞いている。目の前の彼女はとてもそんな人間には見えなかった。

2015-01-27 00:41:35
みなみ @minarudhia

「アキナと言ったナ、お前、オレの他にも妖怪が見えてるんだロ?」「…ええ」「そいつらにもよく話しかけるのか?」聞いたらかぶりを振られた。「…あなたが、初めて」「話を聞くぜ」話を聞いてみると、彼女…アキナはオレ達妖怪が見えるせいで今まで妖怪から絡まれることも多くよく逃げ回ってるらしい

2015-01-27 00:44:56
みなみ @minarudhia

それもそうだろう、オレも思う。見られてると気づいたら気になるだろう。オレだって気づいてたらそうする。「でも、あなたは今まで見た妖怪となんか違う」「どういうことだ?」「今まで見た妖怪ってなんか根暗だし、地味だし…燃えてないし」……それって……「お前が今まで見た妖怪、どんな奴だ?」

2015-01-27 00:50:52
みなみ @minarudhia

話を聞いて大体理解した。こいつが見たことのある妖怪どもはほとんどがブキミーかウスラカゲだ。大体あいつらは身近な所で潜んでは人間に取りつく機会を狙ってるから、良く狙われるのも納得すぎる。特にオレよりランクを下回る連中は…確かに根暗な奴は多いし、地味だろう。「オレはそいつらと違う」

2015-01-27 00:55:32
みなみ @minarudhia

「え?」「オレはイサマシ族、その辺の陰日向に隠れちゃ人間相手を困らせる連中とは訳が違う。ということダ」「よく、わからない」だよな。そうして話している間に、彼女の自転車はアパートの一角に着いた。「ひとまず入って。外では話せそうにないし」「おう、失礼」

2015-01-27 01:00:30
みなみ @minarudhia

玄関に入ったオレは中を見回してみた。部屋は多くないが綺麗に片づけられていて、窓から吹く風が心地いい。「一人暮らしだからちょっと狭いけど、ゆっくりしていて」言いながらアキナが後から入って来た。テーブルに買い物袋を置くとオレの方を振り向いた。「鳥肉があるんだけど…生?」「生が好き」

2015-01-28 22:40:40
みなみ @minarudhia

やっぱり生か、と声が聞こえたような気がしたが気にしないでおこう。まもなく、切り分けられた鳥肉がオレの前に出された。つまみあげて一口食うオレのそばにアキナが座る。またオレの鼻をあの匂いがくすぐった。「そのタテガミ…触れる?」「ん…危ないからあまり触るな」

2015-01-28 22:48:49
みなみ @minarudhia

アキナの目線がオレのタテガミから逸れた。オレは付け加えておく。「オレの身体なら触って、大丈夫」オレのタテガミは火そのものだから、必要によっては色んなモノを焼ける。アキナを火傷させたくはなかった。怖々とアキナの手がオレの腕に触れた。「…少し、ごわごわしてるのね」

2015-01-28 22:53:49
みなみ @minarudhia

「…?」「もっと柔らかいのかと思ってた」オレの腕を撫でながらアキナは言う。オレはまた一口鳥肉を口に放り込んだ。「実は私…妖怪に一度も触ったことないの」「逃げ回ってたと言ってたナ」「ちょっと恐い」オレは少し考えてから、オレの腕から手へと撫でるその手の上に、オレ自身の手を重ねた。

2015-01-28 23:02:32
みなみ @minarudhia

アキナがハッとしてオレを見た。「オレのことは恐くないか?」「・・・」アキナの手はオレの手の甲に掌を重ねて、震えていた。「よく、わからない」「そうか」最後の鳥肉を一塊口に放り込んで、オレは立ち上がった。「もう行くの?」「食わせてもらったからな。ありがとう」「…」何か言いたげなアキナ

2015-01-28 23:12:37
みなみ @minarudhia

オレは窓まで来て振り返った。「オレはここ最近この街に来たばかりだが、あの工事現場にしばらく居座ってるからな。それだけは言っておく」「あなたを見つけたあそこ?」オレはうなずく。そして、窓から身を乗り出しかけて、もう一度アキナの方を向いた。彼女の表情は、どこか寂しそうだった。

2015-01-28 23:18:43
みなみ @minarudhia

…彼女と別れて数日が経つ。「おーい!そこのパイプをこっちに持ってきてくれ!」「はい!」現場を行き来する人間を見下ろしながら、オレは取りつく相手を見定めていた。隣で、この現場に住む妖怪達がオレ同様取りつく人間を品定めしている。中には、オレと同じメラメライオンも数匹混じっていた。

2015-01-28 23:24:55
みなみ @minarudhia

しばらくして、一匹のジャネガブーンが飛び出していった。現場監督に狙いをつけていたらしく、そいつに取りつくやたちまち現場監督が泣きながら這いつくばっていた。気の毒に…。「兄貴は行かないのかい?」オレの近くにいたダララだんびらが声をかけてきた。オレと同じイサマシ族の妖怪だ。

2015-01-28 23:29:33
みなみ @minarudhia

こいつは刀のような外見だが刃が数本枝分かれしているうえにその刃がだらりと下へ垂れている。…こう言えば物騒な聞こえだが、こいつに取りつかれた人間は…ダレるだけだ。「いや、もう少し狙ってよう。あの人間はどうしようもない」オレはジャネガブーン…アキナが言う所の蚊に似た妖怪を見た。

2015-01-28 23:32:37
みなみ @minarudhia

ジャネガブーンはネガティブーンが進化したものだ。ネガティブーンくらいならオレ達メラメライオンの取りつきで追い払えるくらい朝飯前だが、こいつはそれに輪をかけて厄介な奴だ。簡単に追い払える代物じゃない。「しかし、退屈っすねぇ」ダララだんびらは言いながら鼻をほじっていた。

2015-01-28 23:38:37
みなみ @minarudhia

オレはしばらく視線をさまよわせていたが、現場の近くを通る存在に思わず身を乗り出した。彼女だ。前に会った時と違う格好だが、入口近くに立ち止まるとスマホらしきものを出して耳に当てていた。「兄貴、どうしたんですかい?」ダララだんびらがオレの挙動を鼻をほじりながら聞いてきた。「い、いや」

2015-01-28 23:47:39
みなみ @minarudhia

気づけば、一部の妖怪達の目線がオレに集まっていた。「誰か取りつく人間見つけたんですかい旦那?」「い、いや、気のせいだ」ゴホンと咳払いしてオレはアキナの姿から眼を離した。だが、彼女の頭上に浮かぶものが見えてしまった。「あいつは…」緑色の小さな帽子に似たシルエット。…まずい。

2015-01-28 23:55:27
みなみ @minarudhia

「忘れん帽がいるっすね、あんなところに」ダララだんびらがぼんやりと言った。忘れん帽は取りついた人間の記憶を食う妖怪だ。見た所アキナは仕事の最中、そこを狙われている。「あ、旦那?」オレは一人下へ降りていった。まだ忘れん帽はアキナからだいぶ離れているが、間違いなく彼女に眼をつけている

2015-01-29 00:01:19
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