妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第二話『小さな来訪者・巨大な襲来者』
- minarudhia
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目を開け、現状を理解する。 瓦礫と化し燃え盛る家……そう、家。 かつての我が家。 そばに倒れ伏す父親のメラメライオンはぴくりとも動かない。 (おや……じ……) 2
2015-07-29 22:14:56彼、メラメライオンは、ハッとする。 これは紛れも無く、過去だ。 自身の過去。 立ち上がろうと自身の身体を鞭打った時、遠目に何かが動く。 それが何か当時の自分にはわからなかった。 (こいつら…) それはメラメライオンとは別の妖怪達だった。 だが、その妖怪達は、いずれも 3
2015-07-29 22:16:58「!」 メラメライオンは飛び起き、辺りを見回す。 そして、傍らで眠る秋奈を認め、息を落ち着けた。 「メラッ、メラ…(……縁起でもない夢だ……くそ…)」 5
2015-07-29 22:19:23夜11時。 会社のオフィス内でパソコンのタイピング音が響いていた。 「………でだ、オレ達妖怪には八つの種族と属性がある」 メラメライオンはコーヒーを片手に、残業している秋奈へ説明していた。 6
2015-07-29 22:25:40「イサマシ族、プリチー族、ゴーケツ族、フシギ族、ポカポカ族、ウスラカゲ族、ブキミー族、ニョロロン族。例外はあるが基本的にオレ達妖怪はこの八つの種族のどれかに必ず属する」 7
2015-07-29 22:29:13メラメライオンにとりついてもらった事で得た力でタイピング速度をブーストさせながら、秋奈はモニターから目を離さず聞いた。 「メラメライオンはイサマシ族…だったよね?」 8
2015-07-29 22:31:48「そうだ、オレ達メラメライオンはイサマシ族。イサマシ族は勇敢で闘志溢れる種族(と言われている)。基本的には接近戦が得意だ。言いかえれば、物理的な攻撃が得意とも言う」 今オフィスにいるのは秋奈とメラメライオンだけだ。 先程会社の裏の元締であるしきるん蛇は眠るため下の階へ降りた。9
2015-07-29 22:35:22「プリチー族は、可愛い妖怪が多い種族だ。…例外もたまにいるが…、すばしっこく先手をとるのが得意。ゴーケツ族はイサマシ族に近い気概があるが、向こうさんのお得意は味方を護ることだ」 「つまり、相手を庇うのが得意…?」 10
2015-07-29 22:36:48「まあ、そうだな。お偉いさんを護るSPのような能力を持つ奴が多い」 秋奈の作業の進捗は順調だ。 もうじき時刻は11時半を回るが、メラメライオンにとりついてもらわなければ続きそうにないだろう。 そうでなくても、今日はいつも残業に残る同僚達がシフトの関係で所定休をとっている。 11
2015-07-29 22:38:42「フシギ族は妖術のエキスパートだ。人間がやるゲームの職業でいうなら、イサマシ族が戦士とか武道家とは対象的にフシギ族は魔法使いに当たる。ポカポカ族は癒し手が多い。ゲームで言う僧侶みたいなものだ」 「…随分わかりやすい例え…」 「このくらいならまだ簡単だ。だが…」 12
2015-07-29 22:41:44メラメライオンはコーヒーを一口啜ってから、気難しい表情をとった。 「だがな、ウスラカゲ族とブキミー族。こいつらは難しい」 「難しいって…」 13
2015-07-29 22:42:58「こいつらには共通点がある。それはな、こいつらは相手にとりつくことによって悪影響をもたらすことを得意とするんだ。言っておけば、妖怪は相手が人間でなくてもとりつけるからな」 「同じ妖怪が相手でも?」 14
2015-07-29 22:43:30「ああ。微妙な違いを言えば、ウスラカゲ族のとりつきは場合によってはとりついた相手にとって良い方向へ傾くこともある。目立ちすぎる奴を一瞬にして目立たない地味な奴にできるくらいにな」 「そういえば忍者っぽい、すごく空気の薄そうな妖怪見たことが…」 15
2015-07-29 22:44:16「そいつがその例だ。ジミーという妖怪。一方のブキミー族だが、とりつくことによる影響力が極めて強い。高位のブキミー族妖怪のとりつきともなると、もはや呪いといえるくらいに重いんだ…。絶望をもたらすなんてとんでもない奴もいる」 そこまで言ってから、メラメライオンはタテガミを掻いた。16
2015-07-29 22:45:53「正直オレもこの二種族について詳しいわけじゃない。ただ、味方につけられたとしてこいつらの特性を上手く活かせれば役に立つかもな」 「でも、メラメライオン。とりつかれて悪い影響が出るのって、他の種族の妖怪もじゃないの?」 秋奈は言いながらモニターのチェックに入る。 17
2015-07-29 22:47:29これが終われば残業分がやっと終わる。 「…オレ達のとりついた人間も、熱くなりすぎが原因で空元気になる不具合があるのは事実だな…。巷じゃこういうのを妖怪不祥事案件とも言う」 メラメライオンは軽く咳ばらいをした。 彼自身、実際身に覚えがあるためこう突かれると痛い。 18
2015-07-29 22:49:16「最後にニョロロン族。こいつらは大体ひょろひょろしてたり自由気ままだったり、ともかく掴み所のない連中ばかりだ。その特性からかわからんが、とりつかれることで受ける悪影響を受けにくい。そして、大妖怪である龍族の系譜の多くもこの種族に入る」 「龍!?本当にいるの?」 19
2015-07-29 22:50:53「いるぞ。オレは妖怪ワールドで一度だけ会ったことがある。人間が会えたらラッキーだと思えばいい…強いぜ、龍神はな」 秋奈がチェックを終え、データの保存とバックアップにとりかかる。 それが終わって、秋奈はようやくメラメライオンと向き直った。 20
2015-07-29 22:52:39「じゃあ……属性は?」 「簡単だ。風、火、水、土、雷、氷、吸収、回復。吸収ってのは相手の生命力を自分のものにするってことだな」 「回復って、さっき言ったポカポカ族がどうのってことよね。属性なの、それ?」 「あまり細かいことにツッコむな。オレが決めたわけじゃないんだゾ」 21
2015-07-29 22:54:20「ちょっと君達、いいかな?」 後ろから声をかけられ、秋奈とメラメライオンが振り向いた。 この時間、会社の人間はごくわずかを残して退社している。 そしてオフィスにいる人間は秋奈だけだ。 つまり………。 「おとりこみ中申し訳ないけど、僕の話を聞いてくれないかな」 22
2015-07-29 22:56:06話しかけてきたのは、桃色の長い髪を持つ美少年?美青年?…どちらともとれる容姿の妖怪だった。 両腕にはハート型の筒のようなものを装着している。 秋奈は、その妖怪に覚えがあった。 「あなた……確か、竹谷さんにとりついてた…」 23
2015-07-29 22:58:22「そう、僕も以前から君が見えてるって思ってたよ。そちらの彼と仲良さげなところ悪いんだけど、相談にのってくれないかな?」 竹谷とは秋奈の同僚で、社内一のイケメンで通っている男だ。 「で、自称・妖魔界のプリンスたるモテマクールがアキナになんの相談だ?」 24
2015-07-29 23:00:32