妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第三話「夜を走る灯火は新たな道を灯す」

前→http://togetter.com/li/869460/次→/確かにこの話の主人公は彼女だが、いつケージバウィストリオが出ないと錯覚していた?はともあれ少しばかり意外なキャラも出ます。
0
みなみ @minarudhia

妖怪ウォッチ二次創作長編『くれは舞う風』第三話:夜を走る灯火は新たな道を灯す

2015-10-15 23:06:04
みなみ @minarudhia

夜9時。 おつかい横丁にある商店街フラワーロードは、一部の店を除いて全てシャッターが下ろされ静かであった。 夜遅くまで経営する飲食店のうちの一つで、その客は容姿から思いもつかぬ注文をしていた。【1】

2015-10-15 23:07:32
みなみ @minarudhia

「……以上でお願いします」 「はいささ、スペシャルラーメン一つにチャーシュー麺三つね、毎度!」 注文の内容を復唱し、北風らーめんの店主は四玉の麺を茹ではじめた。 呼ばれるまでの間に、その客……紅葉の如く紅い髪と目をしたOLは、席へ座った。 すでに先客はいる。 【2】

2015-10-15 23:09:21
みなみ @minarudhia

「すみません、秋奈さん…僕までご一緒してしまって」 かわいそうなほど身体を震わせた水色の子犬のような妖怪が、申し訳なさそうに詫びる。 「いいのよ、気にしないで。今日はお給料日だし、バクロ婆さんへの御礼ついでにお夕飯はここで食べましょう」 「ババーン」 【3】

2015-10-15 23:10:50
みなみ @minarudhia

子犬のような妖怪・さむガリの隣で、これも腕が異常に長い小さな老婆が跳ねている。 バクロ婆だ。 そして最後の先客は…。 「しかし、良いのかアキナ。確かに会社にあまり置くわけにはいかないとはいえ…少し不安だぞ」 【4】

2015-10-15 23:12:00
みなみ @minarudhia

燃える炎のタテガミと額にバツの字の傷を持つライオンのような容姿をした妖怪が、さむガリに目をやりつつお冷やを口に含む。 紅の髪と目を持つOL・秋奈の恋人であるメラメライオンだ。 「そのことだけど、明日おおもり山へこの子を連れていこうかなって」 「…どんこ池のつられたろう丸か」5

2015-10-15 23:16:48
みなみ @minarudhia

メラメライオンの言葉に秋奈は頷いた。 「話を聞いてみて、そのつられたろう丸って妖怪の所は安全そうだしこの子もあまり長く帰らないと心配でしょ」 「そうだな」 そう話し合う一人と一体。 やがて、ラーメンが出来上がりテーブルに運ばれると、皆一様にラーメンを食べはじめた。【6】

2015-10-15 23:22:31
みなみ @minarudhia

「……すごいな」 美味しそうにバクロ婆が食べるそのラーメンを見てメラメライオンは箸を取る手を思わず止めていた。 ラーメンにはこれでもかとばかりに乗る具材の数々…なかでも特に目立つのは、立派な朱い体をそそり立たせた伊勢海老。 これがこの店のウリである。 【7】

2015-10-15 23:51:28
みなみ @minarudhia

元がとれるかどうかを一切考えさせる暇を与えないそのラーメンに、秋奈も唖然としていた。 「あったかい…!!美味しいです!」 チャーシュー麺を食べながら、さむガリが喜びの声をあげた。 「美味しい?…はい、レンゲあるからスープ飲むのに使って」 「はい!…ちゅるちゅる…」 【8】

2015-10-15 23:53:51
みなみ @minarudhia

「あんまり飲み過ぎるなよ…塩分過多なんだから」 メラメライオンが言いながら、おしぼりでさむガリの首元から胸にかけてに飛び散ったスープを拭いてやった。 「ババアーン(微笑ましいねえ)」 ラーメンをすすりながらバクロ婆はそんな二体のやりとりを微笑ましげに見ていた。【8】

2015-10-15 23:54:39
みなみ @minarudhia

そうして全員が食べ終え、会計を済ませ秋奈が店を出るまでの間、まだ店にいる客達は秋奈と空になった4つのラーメンどんぶりを呆然と見ていたのだった。 ―― 「ババーン(じゃあ、アタシは失礼するよ。御馳走様)」 「どうも、ありがとうございました」 別れ際秋奈が頭を下げる。【9】

2015-10-15 23:57:01
みなみ @minarudhia

「ババー(あんたは良い人じゃ。ともだちを増やすことを勧めるよ)」 そう言い置いて、バクロ婆はどこかへ跳びはねて行った。 「じゃあさむガリ、うちまでついてきて」 「はい」 秋奈とさむガリのやりとりを聞きながら、メラメライオンは周辺に目をやる。 そして。 「!」【10】

2015-10-16 00:00:29
みなみ @minarudhia

フラワーロードの横道に、紅く光るものを捉えた。 それは、紛れも無く双眸の輝き。 「……アキナ、先に行っててくれ」 「え?…ちょっと、メラメライオン?」 秋奈の言葉を背にメラメライオンは横道に入っていった。 光は消えたが、追う必要はない。 【11】

2015-10-16 00:02:07
みなみ @minarudhia

メラメライオンは壁に背をつけ、腕を組んで立つ。 「…来たな、馬鹿弟子」 すぐ傍らでその声は聞こえた。 「ああ」 メラメライオンは脇に目をやる。 闇に同化したその妖怪は、血のような紅い双眸をメラメライオンへ向けた。 その双眸の両脇で鎌首をもたげ揺らめく影の龍…【12】

2015-10-16 00:05:18
みなみ @minarudhia

妖怪きってのエリート暗殺者…影オロチである。 「お前を呼び戻すよう上から声がかかってな」 影オロチはメラメライオンから目線を外さず要件を言った。 「オレを?」 「妖怪を対象とした無差別拉致の件についてだ」 メラメライオンは以前にリムジンを破壊した黒鬼の背中を思い出す。12

2015-10-16 00:11:34
みなみ @minarudhia

「…聞こう。以前に黒鬼を見たがそこまで事は重大なんだな?」 「ああ。…そればかりか、この事件は過去にも似たような事が起きていたことも判明した。…我々の世界でだ」 「何!?」 メラメライオンの言葉に影オロチは頷く。 影の龍のマフラーがしゅうううと蛇の吐息を漏らした。【13】

2015-10-16 00:13:48
みなみ @minarudhia

「人間の世界の時間から数えて40年ほど前…。まだお前が着任する以前に、妖魔界各地で突如複数の人間達による集団が現れ、多くの妖怪達がそ奴らに連れ去られた事件が相次いだ。中には、抵抗した妖怪で“魂(こん)”を打ち砕かれた者もいる」 「“魂”を!?」 【14】

2015-10-16 00:16:12
みなみ @minarudhia

魂とは妖怪達にとっての生命と意味を同じくするもの。 何らかの原因で魂が妖怪の身体から抜ければその妖怪の生命活動は停止し“事切れる”。 事切れても魂さえその妖怪の身体に戻れば復活は可能だ。 しかし……。 【15】

2015-10-16 00:17:16
みなみ @minarudhia

。○(この設定こないだのイナウサ探偵事務所見てとっさに入れた設定なのでご注意。

2015-10-16 00:18:21
みなみ @minarudhia

「魂を打ち砕かれるということは事実上死を意味する。そのような末路に至った妖怪があった例などこれまでなかった。魂を砕かれた妖怪のうち数名は、当時エンマ大王に盾突くことさえあった輩…」 影オロチは懐から小さな包みを出し広げる。 【16】

2015-10-16 00:19:26
みなみ @minarudhia

「“酒呑”を名乗ったぬえ、広範囲に渡りゲリラ活動を起こしていた“片耳”のチンギスギスハン、…そうした連中が魂を打ち砕かれた。お前も遭遇した、人間“のようだった”奴らが使っていたものと同じこの銃弾で」 メラメライオンは包みの中身を見た。 【17】

2015-10-16 00:21:36
みなみ @minarudhia

それは以前自身が負傷した時影オロチが見せた銃弾と見比べても全体の錆と劣化が激しい。 しかし銃弾に刻まれたその呪文とおぼしき文様は…紛れも無く同じだ。 「仕組みを調べてわかったことだが、この弾は妖怪の体内に撃ち込まれると銃弾にかけられた退魔の力が働き、妖怪から一時的に活力を奪う」

2015-10-16 00:23:47
みなみ @minarudhia

「だから高位な妖怪であろうと捕獲が可能、と…」 「しかし二発目までが限度のようだな。それ以上撃ち込まれた場合こそ魂を打ち砕かれ復活が不可能だ。赤鬼は4発目ほどまで耐え抜いたが、鬼族由来の耐久力が幸いしたからだろう」 影オロチの言葉にメラメライオンは少し考えた。【19】

2015-10-16 00:27:35
みなみ @minarudhia

「…40年前と今の事件との関係性は濃厚、か。しかしオレがなぜ上部から?」 「お前は奴らと交戦し、二人倒した。それにより犯人は人間ではないと判明した。赤鬼に持ち帰らせた車を調べたところ、MSKDという組織を持っていることも明らかになった。だがまだ情報が少なく下調べが必要だ。そこで」

2015-10-16 00:29:43
1 ・・ 4 次へ