妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第三話「夜を走る灯火は新たな道を灯す」

前→http://togetter.com/li/869460/次→/確かにこの話の主人公は彼女だが、いつケージバウィストリオが出ないと錯覚していた?はともあれ少しばかり意外なキャラも出ます。
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みなみ @minarudhia

影オロチは双眸を軽く周囲にめぐらせてから続けた。 「お前に私の手伝いをしてもらおうというわけだ」 「概要を」 「要は見回りだ。区域は一日ごとに変える。奴らの主な行動時間は夜だ。最初の夜お前には21時からさくら中央街を廻ってもらう」【21】

2015-10-16 00:32:47
みなみ @minarudhia

影オロチは言い、懐から何かを取り出し放ってきた。 メラメライオンがそれを受けとってみれば、それは巻物だった。 「今回の司令塔を務める黄泉ゲンスイからの指令書だ。今回のお前の働きについてもお言葉をしたためている。忘れるな」 「…ああ」【22】

2015-10-16 00:35:39
みなみ @minarudhia

メラメライオンが顔を上げた時。 影オロチはすでに影も形もなくなっていた。【23】

2015-10-16 00:36:16
みなみ @minarudhia

翌朝。 まさに洗濯日和なこの日に、秋奈は洗濯物を干し終えるやさむガリを連れ小学校のおおもり山まで向かっていた。 「早すぎないか、まだ朝七時だぞ」 「せっかくのいい天気よ、もう…だらしないなあ」 まだ眠気の抜けないメラメライオンをたしなめながら秋奈は歩く。【24】

2015-10-30 21:04:09
みなみ @minarudhia

さむガリは手に貼らないタイプのホッカイロを必死に擦りながら歩いていた。 むろん、秋奈が持たせたものだ。 「僕、この町に降りてきた時必死であっちこち行ってたんですけど…結構広いんですね」 「まだこの辺りは小さい方だ。それよりさむガリ、つられたろう丸のことだが……」【25】

2015-10-30 21:06:17
みなみ @minarudhia

タッタッタッタッ…… 【26】

2015-10-30 21:07:06
みなみ @minarudhia

遠くから足音が聞こえてくる。 その足音はこちらに近づき、一人の小学生が街角から飛び出してきた。 「ひぃぃいいい!!早く行かないと学校遅れるう!!」 「!?」 秋奈のすぐ目の前を飛び出したため、彼女は思わず声を出した。 「あっ…すみません!」 【27】

2015-10-30 21:09:18
みなみ @minarudhia

秋奈に気づき小学生の少年が振り返りざま叫んだ。 今日は平日、通学時間なのだ。 学年は…五年生くらいだろうか。 黒いランドセルが弾み、左腕には時計が光っている。 「危ねえな、あいつ」 メラメライオンが呆れながら呟いた時。 【28】

2015-10-30 21:12:13
みなみ @minarudhia

小学生が出てきた街角から、立て続けに飛び出したものがいた。 「ケータ君待ってくださいー!!」 「!?」 秋奈のすぐ目の前を通り過ぎ、少年の後ろ姿を追っていったのは白い身体のふよふよとした妖怪だった。 【29】

2015-10-30 21:14:07
みなみ @minarudhia

秋奈とメラメライオン、さむガリに気づく余裕もなく飛び出し、その白い妖怪は少年と共に去っていく。 沈黙が三人を包んだ。 「………今の、妖怪………」 「あの子追いかけていきましたね」 「見慣れない妖怪だったな…しかもあの子供を追いかけていった…?」【30】

2015-10-30 21:16:51
みなみ @minarudhia

三人はしばらく少年と妖怪の去った方を見ていたが、やがて秋奈が促す。 「行きましょう…見た感じ害のない妖怪ぽかったし…」 「……そうだな」 ―――― おおもり山は学校の裏手にある階段を上った先にある。 かなり古い時代からあったらしく、小さな神社がひっそりと今も佇んでいる。

2015-10-30 21:20:22
みなみ @minarudhia

その神社を左手に曲がった先にどんこ池と呼ばれる深い古池や登山道があった。 「つられたろう丸さーん!!僕です、さむガリです!」 そのどんこ池のほとりに立ち、さむガリが大きな声で呼ぶ。 秋奈とメラメライオンがそれを見守ってまもなく、水面に小さな波とあぶくが起こりはじめた。【32】

2015-10-30 21:23:36
みなみ @minarudhia

それは少しずつ大きくなり、やがて… ザバァーン!! 大きな波の中から、小さな船に下半身を埋めたような外見を持つ妖怪が飛び出した。 「なんだぁああああ!?」 「つられたろう丸さん!僕です」 姿を現したどんこ池の主に再度さむガリが呼びかける。【33】

2015-10-30 21:26:51
みなみ @minarudhia

さむガリを見たつられたろう丸が声をあげた。 「おおっ、ちびすけ!戻ってこないから心配したぞぉ!良かった、良かった。……んん?」 安心してさむガリを腕に抱え込んだつられたろう丸は、秋奈とメラメライオンに気づいた。【34】

2015-10-30 21:31:01
みなみ @minarudhia

「つられたろう丸殿、お初に目にかかる。オレはメラメライオン、こちらはオレの恋人のアキナ。そいつが迷子になっていたのを拾い上げた本人だ」 「おお、そうか。これはすまんな、ちびすけは人間の多い場所は初めてだというに、親切な人間に助けてもらって良かった」 【35】

2015-10-30 21:34:18
みなみ @minarudhia

「その…お父さんとお母さん、見つかりませんでした…」 「…そうか…」 落ち込むさむガリにつられたろう丸は優しい手つきでなでてやる。 それを見たメラメライオンは続けた。【36】

2015-10-30 21:39:51
みなみ @minarudhia

「…そのことだが、つられたろう丸殿。近頃この街を中心に妖怪がさらわれるという事件が頻発しているのだが、噂はご存知ないか?」 「なんじゃと?」 「えっ…?」 さむガリと秋奈までがメラメライオンを見る。 秋奈はしきるん蛇が拉致の件を話した時席を外したためまだ聞いていなかった。【37

2015-10-30 21:42:05
みなみ @minarudhia

「妖怪が…さらわれる…?」 「ああ、アキナはそういえば聞いてなかったか。さむガリ。お前の両親だが、下手をしたら事件に巻き込まれた可能性が高い」 「詳しく聞かせてもらおうか」 つられたろう丸の言葉にメラメライオンはうなずく。【38】

2015-10-30 21:44:22
みなみ @minarudhia

「ううむ…街でそのようなことが起こっているとは…」 メラメライオンから一連の内容を聞き、つられたろう丸は腕を組んだ。 「じゃあこの間真夜中にケガして帰ってきたのは…」【40】

2015-10-30 21:53:57
みなみ @minarudhia

「悪い、アキナ。あれはオレのしくじりだ。ともあれ、今このさくらニュータウンは、人間ならまだしも妖怪にとって大変危険な事情を孕んでいる」 メラメライオンは言いながら、さむガリに目を向けた。【41】

2015-10-30 21:57:17
みなみ @minarudhia

「お前はもう、街に下りるな。つられたろう丸殿の所にいた方が、今のところ安全だろう。さらわれた妖怪の大半は街をぶらついているとこを拉致されている。今夜からその関係でパトロールも行うことになっている」 「パトロールだと」【42】

2015-10-30 22:02:31
みなみ @minarudhia

「拉致の犯人の情報が欲しいのだ。それと共に、妖怪達に注意を呼びかける必要がある。…拉致された妖怪達がどうなっているのかを知る必要も。だから、さむガリ。お前はつられたろう丸殿といろ。親はオレが調査を兼ねて捜すから」 さむガリは沈黙の後ゆっくりとうなずいた。【43】

2015-10-30 22:05:36