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妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第三話「夜を走る灯火は新たな道を灯す」

前→http://togetter.com/li/869460/次→/確かにこの話の主人公は彼女だが、いつケージバウィストリオが出ないと錯覚していた?はともあれ少しばかり意外なキャラも出ます。
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みなみ @minarudhia

「申し訳ないつられたろう丸殿、そういう訳で、さむガリを山から出さないでやっていただきたい」 「あいわかった、他の妖怪達にも下山を慎むよう伝えよう」 「頼んだ」 ―― 「………本当に、大丈夫なの?」 「……ああ……」【44】

2015-10-30 22:09:02
みなみ @minarudhia

夕食を食べ終えた直後。 ベランダの窓から外へ出ようとするメラメライオンを、秋奈は心配げに見つめた。 パトロール、と聞いているが、詳しいことはほとんど聞かされないままだ。 「…アキナ。オレにもしものことがあったとしたら…」 メラメライオンは振り向く。 二人の視線がかちあった。

2015-10-30 22:12:06
みなみ @minarudhia

「…お前は、また妖怪が見えない人間として生きろ」 「メラメライオン」 「じゃあ行ってくる」 次の言葉を待たず夜の闇に消えるメラメライオン。 カーテンが風にあおられはためいた。【46】

2015-10-30 22:15:10
みなみ @minarudhia

9時 夜のさくらニュータウン中央街 立ち並ぶビルの間を小さな影が駆け抜ける。 身軽に窓の格子を伝い、パイプに跳び移っては一気に建物の上まで上がっていく。 『我だ』 屋上から下を見下ろすメラメライオンの耳に影オロチの声が響く。 耳に装着したインカムのマイクを寄せ応答する。

2015-12-08 22:30:56
みなみ @minarudhia

「オレだ」 『今のところ奴らの気配はない。そちらはどうなっている』 「…こちらもまだ気配はなし。車もない。今夜の鬼時間はそよ風ヒルズで発生してるんだったな?」 『ああ。黒鬼殿に任せている。だが油断はするな』 「わかった」 【48】

2015-12-08 22:32:35
みなみ @minarudhia

通信を終え、メラメライオンは車の行き交う道路から路地裏へ目をやる。 ガランガラン! 見れば、奥で何やら妖怪達が誰かを取り囲んでいる。 不穏な様子にメラメライオンは素早く路地裏へ降りた。 「オラ!おっさん、さっさと出しやがれ!」 【49】

2015-12-08 22:34:22
みなみ @minarudhia

言いながら妖怪の一人が取り囲んだ相手を蹴り飛ばす。 小柄だが前を大きくはみ出るほどのリーゼントと苛立ちでギラつかせた目をした不良妖怪の一人グレるりん。 「ひ、ひいぃ、だから言ったでしょう。私から取ろうたって何も出やしませんって!」 【50】

2015-12-08 22:36:20
みなみ @minarudhia

「つべこべ言わず跳べ。跳べばちゃりーんて音ぐらいすっだろぅ?」 見るからに囲まれた相手も妖怪のようだ。 「おい」 メラメライオンが声をかける。 グレるりんを始めとした不良妖怪達が一斉に彼の方を向いた。 「アァ?なんだお前」 ガラの悪い目つきで別の妖怪が睨む。 【51】

2015-12-08 22:37:52
みなみ @minarudhia

「親父狩りも程々にしないと、今噂の誘拐犯に連れてかれるぜ」 メラメライオンは言いながら歩み寄る。 「んだとテメェ。オレ達のジャマする奴はただじゃおかねえぞ!?」 「ここでか?」 「あ”ぁ!?」 自身の言葉に同じない相手にグレるりんは次の言葉を返そうとした。 突如。 【52】

2015-12-08 22:40:05
みなみ @minarudhia

メラメライオンが目の前にいた。 「なっ…」 視界が裏返ったと感じた直後、激痛と共にグレるりんは地面に叩きつけられていた。 他の不良妖怪達があわてふためく。 「なっ…なんだよおいテメ…ぐっ…」 「悪いがこっちもパトロールなんでな」 【53】

2015-12-08 22:42:03
みなみ @minarudhia

その背中を踏み付け、メラメライオンはその後ろの不良妖怪達を見据える。 一瞬、そこにいた妖怪達-被害者も含め-ぎょっとした。 【54】

2015-12-08 22:44:27
みなみ @minarudhia

「オレもお前達に構ってられる時間はないしお前達の身の安全を保証しなきゃならない。そういう訳で今夜くらいはおとなしくしてろ。最悪撃たれて連れていかれてもオレは知らん」 メラメライオンは威圧感を漂わせながら言い放ち、そしてグレるりんの背を蹴りとばした。 「早く行け」【55】

2015-12-08 22:44:55
みなみ @minarudhia

「テメェ、誰の権利で……う…クソッ!」 メラメライオンの眼光に気圧され、グレるりんは仲間を連れ立ち逃げて行った。 「…大丈夫か?」 「どうもすみません、おかげで助かりました…はは…」 メラメライオンに礼を言い立ち上がったのは、一見愛らしいトイプードル…のように見えた。

2015-12-08 22:47:00
みなみ @minarudhia

しかしその頭は、50代近くの冴えない中年親父だ。 じんめん犬は顔じゅうアザだらけにしながら、メラメライオンの前でへこへこと頭を下げた。 ――― 「私ゃねえ……いつかモテてモテまくりたいと思ってるんですが……なかなか、思うように上手くいかないものでして……ひっく…」【57】

2015-12-08 22:48:30
みなみ @minarudhia

酒の入ったその顔を赤らめながら、じんめん犬はメラメライオンに愚痴りだす。 それを流し目で見遣りながら、涼しげな美貌を持つ着物の女性はグラスを拭いていた。 彼女は、さくら中央街の片隅に立つスナック『ゆきおんな』のママにしてオーナーだ。【58】

2015-12-08 22:50:20
みなみ @minarudhia

カウンターの周囲にはマイクを手に熱唱したり、スナック菓子をツマミに一杯くつろぐサラリーマン達がいた。 妖怪おでんじんの屋台でも良かったが、妖怪をターゲットに狙う連中の的になるのを避けるためだ。 じんめん犬は妖怪には珍しく普通の人間でも視認が可能な妖怪だ。 【59】

2015-12-08 22:55:12
みなみ @minarudhia

多数勢の人間の目が入った場所でなら、手荒な真似をされる心配はないだろうとふんだ。 「私これでも昔は人間でしてね…あ、聞きました?それが妖怪になった今こんなに充実した人生を送ることができる!モテるかもしれない!…こう思った時期がありましたよ…」【60】

2015-12-08 22:59:58
みなみ @minarudhia

メラメライオンは長々しい愚痴を適度に聞き流していた。 あまり長居しすぎるとパトロールに支障が起きるが、切り上げるタイミングが掴めない。 そこへグラスを差し出しながら、ママが声をかけてきた。 【61】

2015-12-08 23:04:25
みなみ @minarudhia

「随分と大変な経験をなさってきたようね。でもこれからもきっと大変よ。…あなたも、そう思うでしょう?」 言いながら、彼女はちらりとメラメライオンへアイコンタクトを送る。 「…ああ、お蔭様でな。しかし、噂は本当だったか」 「ええ、同類のお客さんはなかなかこちらへ来ませんもの」

2015-12-08 23:05:14
みなみ @minarudhia

メラメライオンがオレンジジュースの注がれたグラスを受け取るとスナックのママは妖艶に微笑んでみせた。 「あんたも気をつけた方がいい。妖怪が拉致される事件が起こってるのは知ってるな。彼を頼んだ」 「任されたわ。パトロール、お疲れ様」 【63】

2015-12-08 23:08:29
みなみ @minarudhia

『ゆきおんな』のママにじんめん犬を預け、速やかに出たメラメライオンは再び疾走を開始する。 30分以上も時間を使ってしまった。 『一体何をしていた』 「親父狩りの収拾に手間取っていた。そちらはどうだ」 【64】

2015-12-08 23:12:30