【ミイラレ!第十話:隠し神のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。トラブルはどこからでもやってくる。 こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/854822
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十話:隠し神のこと】 #4215tk

2015-07-31 20:30:34
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

朝。朝食を済ませた怜は早々に家を出る。そのまま学校には向かわず、隣の幼馴染を待つ。数分もしないうちに「行ってきます!」同居人に挨拶する彼の声。元気よく扉を開いた彼と目が合う。「おはよう、四季」「おはよう、怜。……もしかして待たせちゃった?」1 #4215tk

2015-07-31 20:33:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

心配そうに聞いてくる幼馴染に、怜は笑って首を横に振った。「平気。私もついさっき部屋を出たばかりだから」「そっか。ならいいんだけど」そして二人は並んで登校する。道には他にも生徒の姿。今の時間帯ならば、そこまで慌てる必要もない。が、怜は密かに周囲を警戒していた。2 #4215tk

2015-07-31 20:36:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

理由は簡単だ。いつ『学校の魔女』とその仲間が現れるかわからないからである。昨日、買い物から戻ってきた巡の報告は、彼女にそうさせるだけの重大さがあった。「そういえば四季。あの……メリーさんはどうしてるの?」ふと気になった彼女は問いかける。あれも一応は魔女の仲間だ。3 #4215tk

2015-07-31 20:39:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ああ、元気にしてるよ」彼から返ってきたのはどこかピントのずれた答え。「ただ、和食が気に入らないみたいで文句言ってたかな。巡とケンカになりそうだったからヒヤヒヤした」「……四季、あれが魔女の仲間だってことは覚えてるよね?」「もちろん。忘れるわけないよ」4 #4215tk

2015-07-31 20:42:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

のんびりと答える幼馴染に、怜はこっそりと溜息をついた。肝が太いのはよいことだが、どうにも彼には危機感がない。自分がしっかりしなければ!『だからといって気張りすぎると足元を掬われるからの』『わかってるよ』口うるさい蛇神に念話で返す。学校はもうすぐだ。5 #4215tk

2015-07-31 20:45:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

主人の出かけた四季の部屋。そこには何人もの怪異が集まっている。例えば小夜子はメリーが暴れないよう彼女に取り憑いて動きを封じているし、巡はといえば「……成る程のう。それはまた面倒な事態じゃわ」来訪者である天狗のながれに事情を説明し終えたところだ。7 #4215tk

2015-07-31 20:48:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ながれは眉間にしわを寄せている。「今、四季坊についておるのはそのなんとかいう狐霊だけか」「ですねえ」「心許ない。おぬしがついてやればよかろうに」「嫌ですよう。なにが悲しくて退魔師どもの詰めてる場所に赴かにゃあならんのですか」その答えに、天狗がしかめっ面をした。8 #4215tk

2015-07-31 20:51:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ、心配しなくとも若旦那が危なくなったときは馳せ参じますから」「本当じゃろうな?……まあよい。ならば儂の方でもなんとか手を尽くすとするか」ながれが首を捻る。彼女もまた山ン本組の一員であり、その実力は確か。とはいえ、四季につきっきりとはいかぬ事情がある。9 #4215tk

2015-07-31 20:54:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「若旦那のご両親には、このことはお伝えになるので?」「……ことが長引くようならな。あまり心配はかけたくないんじゃが」「ごもっともで。……おや?」巡は不意に目を細める。「僧正坊殿。その肩についている髪の毛はなんです?」「なに?」天狗は狼狽し、己の肩を払った。10 #4215tk

2015-07-31 20:57:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

床に落ちたのは、一本の髪の毛。色こそながれと同じ黒色。しかし長さが明らかに違う。長すぎるのだ。「しまった」ながれが舌打ちする。「儂としたことが気づかなんだ!小雨め……!」そして首を傾げる巡に向き直った。「御伽よ、すまんが頼まれてくれい。厄介者がやってきおる!」11 #4215tk

2015-07-31 21:00:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ははあ、厄介者?」巡が怪訝な顔で首を傾げる。今ひとつ事情を把握していないのだ。「それはその……髪の毛の主という判断でよろしいので?」床に落ちた黒い長髪に目をやる。それにしても恐ろしく長い。下手をしたら、小柄な天狗の身長を超えるのではないだろうか。12 #4215tk

2015-08-02 15:06:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そうじゃ」ながれはやきもきした様子で手を組む。「向こうを発つときにつけられていたとなると、間違いなく今の会話も聞かれておる。であれば彼奴のこと、すでにこちらに向かい始めておるに相違なし!」「はあ、相違ありませんか」気のない様子で巡が返事をする。13 #4215tk

2015-08-02 15:09:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

目を怒らせるながれの前で、巡はひらひらと手を動かした。すると宙に浮く小蜘蛛が出現。「その厄介なお方とやらがまっさきに向かうのは?」「学舎じゃろうな。なにより四季坊のおるところに行くはずじゃ」「なるほど」巡は気怠げに手を振る。小蜘蛛がふわりと飛び、消えた。14 #4215tk

2015-08-02 15:12:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ま、ひとまず草江の嬢ちゃんに知らせておくとしましょう。あとは退魔師どもの手腕に任せるということで」「退魔師でどうにかできるやつではないぞ、小雨は」ながれの指摘にも、巡は肩を竦めるばかり。「ながれ様が仰るなら相当の怪異なんでしょうねえ」ぬけぬけと言う。15 #4215tk

2015-08-02 15:15:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あたしはこう見えて荒事が苦手でして。そういう怪異の前に準備もなしに出るのは辞退させていただきます」ながれが眉間にしわを寄せる。自分より格下ではあろうが、この鬼女は相当に古く、強力な怪異だ。それがわざわざ本性を隠し四季に近づいている。目的が読めぬ。16 #4215tk

2015-08-02 15:18:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季はあのとおり、少し怪異を信用しすぎるきらいがある。幼少期に自分たちが構いすぎたのが原因とはいえ……彼に近づいて悪事に利用するものもいないとは限らない。故に、御節介と思われようと側にいてやる必要がある。鋭い視線で巡を射抜きながら、ながれはそう結論づけた。17 #4215tk

2015-08-02 15:21:42
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

授業も終わり、昼休み。「四季、お昼一緒に食べない?」席を立とうとした四季の元にやってきた怜は、開口一番そう言った。「んー、そうしたいけど……まずお昼買ってこないといけないからさ」「買ってくる?お弁当、持ってきてるんじゃないの?」四季は苦笑した。19 #4215tk

2015-08-02 15:24:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「巡さんにそこまで頼むわけにもいかないじゃない……それに、高校生になったら一回くらい購買って利用してみたかったんだ」「そっか」怜は少し首を傾げ、何事か考えていた。ややあってから頷く。「じゃあ行こう。私もついてくから」「え?でも」「いくから」20 #4215tk

2015-08-02 15:27:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

有無を言わせぬ語調に、四季は黙って頷いた。何名かのクラスメイトの好奇の視線を浴びながら教室を出る。購買部があるのは校舎の一階。「混んでるかなあ」「かもね」他愛のない会話をしながら階段へ。と、そこで四季は足を止めた。「どうしたの?」怜が不思議そうに振り返る。21 #4215tk

2015-08-02 15:30:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「いや」四季は曖昧な返事をする。なにか視線を感じた気がしたのだが。「なんでもない。行こっか……あ、待って!」「今度はなに?」歩き始めようとした怜が苛立たしげな声とともに再び振り向く。「ごめん!でもさ、怜。肩に」「肩?」彼女が首を傾げる。22 #4215tk

2015-08-02 15:33:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『お取込み中のところ申し訳ないがねえ』「わっ!?」唐突な念話に、怜が悲鳴を上げた。四季も意外そうに念話の主を見る。怜の肩に張り付いた小蜘蛛。しかし、念話の声はあの巡のものなのだ。『巡さん?』『ええ、そうですよう。若旦那も草江の嬢ちゃんの側に御出でで?』23 #4215tk

2015-08-02 15:36:30
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

小蜘蛛はぴくりとも動かない。が、巡の声は聞こえ続ける。『ちょいと緊急の連絡がございましてね。特にお嬢ちゃんにとっては無視できない類の』『……どういう意味?』難しい顔で返事をした怜が歩き出す。四季もそれに従った。黙って階段に立ち尽くすのはさすがに目立つ。24 #4215tk

2015-08-02 15:39:27
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